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人類と大雪崩の闘い

全ては君の心次第

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「何万年に一度起こると言われている、文明を全て飲みつくしてしまうほどの未曾有の大災害・・・

【大雪崩】

かつて、人類文明はその【大雪崩】によって、丸ごと飲みつくされ、絶滅の危機に瀕した。」



そんな恐るべき神話が、地上で最も高く寒い山【アイス・ストリート】に住む民の間で語り継がれている・・・


この山国【アイス・ストリート】の民である【サマメル人】は、現代社会から切り離され、旧文明しか使うことのできない少数民族である。


【サマメル人】の移動手段は、一年中凍りつくような寒さの【アイス・ストリート】において【雪板】と呼ばれる特殊な木で作られた坂を滑る道具しかない・・・



従って、【雪板】を使えない者は【サマメル人】の中でも劣等種とされ蔑まれるのである・・・



「やーい!ゼウスの下手くそ!!」

「お前みたいな【雪板】の使えない腰抜けは、こ~んな小さな雪崩でもビックリしてひっくり返るんだろ?ハハハハハ!」



黒髪と大きな目が特徴的な、この物語の主人公【ゼウス】10歳は、近所に住む同年代の子供たちに、いまだに【雪板】で滑れないことをバカにされ続けている。


ゼウス「あん!人間には出来ることと出来ないことがあるんだよ!ちょっと【雪板】ができないからってなんだ!こんな板1枚、操作できたって【大雪崩】が起きれば、どうせみんな死んじまうんだよ!」


ゼウスは、バカにしてくる子供たちに強く言い返す。


「は!何言ってんだ、【大雪崩】なんて神話の話だっつーの!」

「父親が、そんなホラをふいた罪で、異端者として逮捕されたくせに、まだお前も言い続けるのかよ!」

「負け惜しみ言ってんじゃねーよ!!いいか?【アイス・ストリート】に住む人間はお前以外、みんな【雪板】使えるんだぜ、バーカ!」

「お前なんて、【山の幽霊】にさらわれちまえ!」



そう言い残して去っていく、バカガキたち・・・・


ゼウス「ふん、クソガキが・・・・」


ゼウスはそう吐き捨て、【雪板】を抱え、足膝の位置までの高さがある雪をかき分けながら、家に戻ってく・・・


【アイス・ストリート】に住む民の多くは、山の中腹辺りに「かまくら」を作って暮らしている。


ゼウスもそうだ・・・「かまくら」の中で弟の【ギガス】と2人で暮らしている・・・


ギガス「お兄ちゃん、お帰り。【雪板】できるようになった?」

金髪が特徴的な、まだ小さな弟【ギガス】は笑顔で兄をむかえた・・


ゼウス「全然、練習しても上手くならないよ、なんかもう疲れたからご飯にしようか?」

ギガス「そうだね、もう日も暮れてきたしね・・」


母の【レアー】は2人を産んだ後、すぐに亡くなり・・・

学者の父【クロノス】は、「神話上の伝説だった【大雪崩】は、近い未来必ず現実の大災害として起こり、アイス・ストリートに住む人々を飲み込むであろう」という異端説を説き続けたために

王政府に【異端者】として逮捕された・・



ギガス「お兄ちゃん・・・お父さんはいつ帰ってくるの?」


ギガスは、何日経っても帰ってこない父の身が心配になってきたのか、ずっと兄に問いかける。


ゼウス「心配すんな・・父さんはきっと戻ってくるさ。」


そう笑顔で言うゼウスも、内心悪い未来しか予測できなかった・・・

父さんは、きっと王政府で拷問を受けているだろう・・・

【大雪崩】の異端説を説いた者は、無事では帰ってこれない・・・

もしかしたら、父さんはもう・・・・


だが、ゼウスは、死を覚悟して国のみんなに説き続けた父の【大雪崩】発生説が、どうしても噓だとは思えなかった・・・


ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・


突然、「かまくら」内が大きく揺れたかと思うと、床下が大きく亀裂が入った。


ゼウス「な、なんだ?」


2人は、外に出る。


ギガス「兄ちゃん、あれなんだろう?」


ギガスの指差す、はるか遠くには、大きな白い煙を立てて、こちらへ向かってくる超巨大雪崩が
集落を飲み込む光景があった・・・・









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