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サムライ校での学園生活

迷宮の図書室

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友愛「お、黄金の図書室・・・?」

岩一「すっげー!」


7人の目の前に現れたのは、派手な装飾で飾られた【黄金の図書室】だった・・・・


麗太「黄金の図書室なんて、都市伝説でしか聞いたことがないぞ・・・・」

二志「ホントだよ。にしても、なんで黄金なんだ?」




「この侍島が、まだ天使島という名前だった頃に、島の独裁者だった富裕層の【天使】たちが残した遺産・・・それが、この【黄金の図書室】なんですよ。だから建築物としては、70年以上の歴史はあるはずですよ。」


ぬわ!っと誰かが7人の会話に入ってきた・・・・



声の主は、凄い瘦せ細った、暗~い雰囲気の男の子だ。

手に分厚い本を抱え、垂れ下がった目で7人を見ている。


麗太「うわ!君、誰?」


「これは失礼。しかし君たちが、いつまでもドアの前で立ちふさがってるから、図書室に入れないんですよ。」


京子「あ、ごめんね・・・」


男の子は、7人より先に図書室へさっさと入っていく・・・・

そして、彼の姿が見えなくなったところで友愛は岩一に質問した。


友愛「あの子はなんていう子?」

岩一「俺らと同じ【個】の安倍晴明(あべの せいめい)って奴だよ。 いつも本ばっか読んで、誰とも話さない変な奴さ。」

友愛「へ~」



なんだか、凄い不思議な雰囲気をまとってる子だな・・・





図書室の外観は、金ぴかの黄金だが・・・


中は、全て黄金ではない・・・・


正確には、入り口の通路や大量の書籍が収蔵されてる巨大な本棚は金箔張りであり、他は普通の洋式木造建築だ。




岩一「うわ~すげえ~、目が回るほどたくさんの本があるぜ・・・」

友愛「ほんとだね・・・」


目の前に広がる光景に、7人は圧倒された。


果てしない地平線のように、どこまでも無数に続く黄金の本棚の数・・・

そこに隙間なくギッシリと詰められた大量の書籍・・・・

まるで、この図書室は【本の要塞】のようだ。



一志「こりゃあ、下手したら、例えばだけど目当ての本を探しているうちに、この迷路のような図書室に迷いこんでしまうな。」



「全く、その通りじゃよ・・・」


突然、7人の後ろで、優しそうな老人の声が聞こえた。

今度は誰だ?


「実際、この【黄金の図書室】を創造した【天使】たちでさえ、何人かが永久に迷い込んでしまい2度と戻ってくることはできなかったのだからな・・・」


京子「ふ、副校長!!」

声の主は、御年82歳となる副校長の【徳川孔子】先生だった。
長身で、長い白髪と、長い白髭が特徴的な仙人のような格好をした老人だ。


副校長「だから、この図書室で本を選ぶときは、必ずわしに声をかけることじゃ。この迷宮のような空間に1人で迷い込めば、永遠に戻ってくることはできなくなりますぞ。」

7人は、その話を聞くと、途端に血の気が引くようなゾーッとした感覚に襲われた・・・


副校長「この学校は、旧天使村の跡地の上に作られておるから、学校創設の段階で、天使村時代の様々な遺跡が発見されたんじゃが、その中でも謎だったのが、村の地下深くに埋まっていたこの【黄金の図書室】だったんじゃよ。

我々、教員も発見段階で、この図書室を何度も調査したのだが・・外だけ見れば、それほど大きくはない部屋なのに、中は永遠の広さを持ち、果てしなく本が並んでいる迷路のような空間なんじゃよ。

恐らく【天使】たちが作った特殊な仕掛けなんじゃろうが・・」


7人は、副校長の説明を聞きながら、大海のように続く、大量の本棚の数を見る・・・・


二志「それは不思議な現象ですね・・・・」



友愛「あれ?そう言えば、岩一は?」


友愛は、仲間が1人いなくなっていることに気づく・・・


麗太「いつの間にかいなくなってる・・・・」


一志「ちょ・・ちょっと待って・・・もしかして・・・」


いつの間にか、どこに行ったのだろうか? 岩一・・・

7人は、もう一度、無数の本棚がある深い迷路のような迷宮を見る・・・・


岩一は、1人で【永遠に戻ってこれないかもしれない空間】に足を踏み入れてしまったのだ。












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