悪役令嬢の最強コーデ

ことのはおり

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1章

18. 彼シャツならぬ彼コート

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 心臓が、あり得ない速さで鼓動を打つ。
 つないだシュリの手は大きく温かく、自分に触れているのがまぎれもなく彼の体の一部なのだと思うと、ローズは幸福のあまり卒倒しそうだった。
 やがて庭の奥に建てられた物置小屋に着くと、シュリはローズと共に中に入り扉を閉めた。

「ローズ様、強引に連れて来てしまって申し訳ありません。どうしても、あなたに訊きたいことがあるのです」

 そう言いながら、シュリは小屋の中にいくつかある椅子の一つにローズを座らせ、自分が着ていたコートを脱ぐと、ローズの肩にかけた。

 「寒くないように」というシュリの気遣いを嬉しく思うと同時に、彼の着ていたコートを羽織っている事実に、ローズの胸は否応なしに高鳴った。その大きなコートには、彼の体温が残っていて温かい。目の前のシュリも、彼の体温の名残も、彼のコートの重みも、何もかもが、愛おしかった。
 ローズの心臓は落ち着くどころか、相変わらず暴走列車のごとき爆走している。
 その心臓の音がシュリに聞こえてしまうのではないかとうろたえ、ローズは上擦った声で返事をした。

「よ……よくてよ。何を訊きたいの?」

「社交界デビューされたあの日から、あなたはずっと何かを悩んでいる。教えてください、何を悩んでいるのですか? あなたの力になりたいのです。あなたの涙を見るのは俺には耐えられない」

 小屋の中は暗くシュリの表情は読み取れなかったが、その真剣な声は例えようもなく甘美な響きを伴ってローズの心に沁みた。
 想い人にこれほど気遣われ、物置小屋の中とはいえロマンチックな月夜に二人きり。その感動でローズの頭はいっぱいいっぱいで、言葉の一つも出なかった。その沈黙をどう捉えたのか、ローズの返答を待たずにシュリが再び口を開いた。

「あなたを苦しめている事柄は、前世の記憶に関係しているのではないですか?」

「!!」

 核心を突いたシュリの言葉に、ローズは息を詰めた。
 そう、シュリはローズが前世の記憶を持つことを知っている。この世界でそれを知っているのは、ローズ自身と魔女ヴァネッサ、そしてシュリの三人だけ。
 なぜシュリが知っているかといえば、かつてローズ自身が彼に話したからである。
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