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3章
16. 魅惑?のガチムチオネエ精霊
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「あら、やだぁ~ん、イイ男が三人も!! すごいわぁあああ!!」
オネエ精霊はクネクネと体を揺らしながら、ハスキーボイスでそう叫んだ。
精霊の纏っている紫と赤と黄色の配色に目がチカチカする。まるでどこかの演歌歌手のステージ衣装だ。しかもオネエはガチムチ系。身長は2メートルくらいありそうだし、あまりの迫力に圧倒されてしまう。ローズがもしあの場にいたら、気絶寸前かもしれない。距離をおいて遠目に眺めているのが丁度いい。
しかしフィリップはそんな妖怪寸前の精霊にもひるまず、得意の社交術を披露している。
「おお、泉の聖霊よ、あなたのキラキラした存在感に僕は目がくらみそうだ。僕は聖樹王国の王子、フィリップと申します。お会いできて、光栄に思います、類稀なるお方」
フィリップの優雅なお辞儀と賛辞の言葉に、精霊は嬉しそうに目をぱちぱちさせて言った。
「あら、うふふ……こちらこそ、王子様。ようこそ、我が泉へ。あなたの望みを、おっしゃいな」
「では、どうか僕に教えてください、どうすればあなたの泉の貴重な水を分けていただけますか?」
「んふふ……そうねぇ……」
精霊は三人に粘着質な視線を送りながら答えた。
「アタシを楽しませてくれない? あんたたち、その腰に提げてる剣で、戦ってみてよ。いい男が本気で戦って、血しぶきなんか上げちゃったら……キャッーーーーッッッ!! んもう、鼻血ものよねぇええええっ!」
……マジか……。
ローズはそんな淑女にあるまじき呟きが頭に浮かぶのを振り払い、シャーロットに向かって「大丈夫かしら……あの三人」と不安を口にした。
シャーロットはにっこり笑うと、「大丈夫ですよ、ローズ様! シュリさんが秘密兵器持ってきてますもん! 絶対うまくやってくれます!」と拳を握りしめた。
そうこうするうちに、ギルバートとシュリの戦いが始まった。
「ちょうどいいぜ、シュリ。あんたと剣を交えてみたいと思っていたんだ。手加減なしだ、いいな?」
「望むところだ」
二人は剣を構え、ぶつかり合った。金属の触れ合う音が辺りに鳴り響く。
「ああ~いいわぁ、いいわぁ! いい男が戦ってる姿って、最高にそそられるわねぇ!」
オネエ精霊は頬に手を当ててクネクネしながらはしゃいでいる。
確かに二人の戦う姿には、思わず見惚れてしまうほどの吸引力があった。二人とも外見が良い上に、卓越した剣技を有している。互いの攻撃を交わし、飛び跳ね、絶妙なタイミングで剣を交わす、それらは剣の舞を見ているかのような優雅さがあった。
しかし、はじめは満足して見ていたオネエ精霊は、すぐに飽きてしまったようだ。
「ちょっとぉ、いつになったら血しぶき上げてくれるの? あんた達、本気じゃないでしょ。もっと激しく、相手を殺す勢いでやりなさいよぉ。勝った人にはご褒美として泉の水を分けてあげるわよ」
「それは……つまり、三人のうち二人に死ねと?」
フィリップが珍しく目力を込めて精霊を睨み付けながら言った。その視線を受けて、オネエ精霊は舌なめずりし、言った。
「うふふ……死ねとまで言わないけど、半殺しくらいにはなって欲しいわぁ……うふふふふ……」
このド変態精霊がっ!
と、ローズはまたもや淑女にあるまじき言葉を心の中で叫んだ。シャーロットもローズの隣で、「悪趣味な精霊ですねぇ……私が半殺しにしてやりたいですよ」と呟いて歯ぎしりをしている。
フィリップの合図を受け、シュリとギルバートは剣を交えるのをやめた。そして先程傍らに置いた荷物――布で覆われた四角い大きな箱状のものを、精霊の前に差し出した。
「泉の精霊よ、これは贈り物だ」
シュリはそう言って、覆いを取り外した。
それはある生き物の入った檻だった。幅80cm奥行50cm高さ60cmほどの檻の中に、小動物が二匹捕らわれている。ふわふわモフモフの薄茶色の毛で覆われていて、体長40cmくらい、齧歯類らしく丈夫な歯を持ち、リスのような顔と仕草がとても愛くるしい。手には水かきがあり、尾っぽは舵の役目を果たせるように丸く平たい。水の傍で暮らす生き物であることはすぐ見て取れる。
「なっ、なっ、なっ、なあに、それ!?」
「チキュル、という生き物だ。あなたはこんな辺境で一人きり、さぞかし寂しいだろうと思い、贈り物として持ってきた」
精霊の質問に、シュリがそう答えた。
チキュルは可愛らしく「キュルキュル、チチチ」と鳴きながら、互いの毛づくろいをしている。姿も仕草も声も、何とも愛らしい。
精霊がチキュルに見とれている間に、ギルバートは説明をした。
「チキュルは、淡水の湖などで子育てする生き物なんですよ。魚が大好物でね、おや~、あなたの泉には、美しい魚がたくさんいますねぇ。きっとチキュルも気に入るでしょう。そして付近の木々を切り倒して、この泉に巣を作り、あっという間に増えるでしょう。子どもはもっと可愛いんですよ、小さく無邪気で、見ていて飽きません。あ、これ、つがいなので、大丈夫、すぐ増えます。それで縄張りを主張するために、フンやら尿やら周囲にまき散らすでしょうが、そこは我慢です。あ、魚は食べつくされて全滅するかもしれません。でもとても可愛いでしょう? さあ、これを差し上げましょう!」
それを聞いて、精霊は慌てふためいた。
「や、や、やめて!! 冗談じゃないわ!! そんなものいらない!! あなたたち、このアタシを脅迫してるのね! なんてこと!」
「脅迫? まさか。贈り物です。受け取ってください」
ギルバートはそう言いつつ、にっこり笑って檻の出入り口を開けようとした。
「やめてーーーーつ! こここここ、殺してやるんだから、そんな生き物! そんな、そんな、そんな…………っ!!」
精霊はパニックをきたしながらチキュルたちを見据えて手を振り上げた。魔法攻撃か何かが来るかと思いきや、精霊は手を振り上げたまま固まって、ブルブル震えている。チキュルたちは怯えて、寄り添いながら目に涙を溜めて精霊を見上げている。その様子がまた、哀れで可愛い。
「くぅっ……っ! な、なによ……」
オネエ精霊はクネクネと体を揺らしながら、ハスキーボイスでそう叫んだ。
精霊の纏っている紫と赤と黄色の配色に目がチカチカする。まるでどこかの演歌歌手のステージ衣装だ。しかもオネエはガチムチ系。身長は2メートルくらいありそうだし、あまりの迫力に圧倒されてしまう。ローズがもしあの場にいたら、気絶寸前かもしれない。距離をおいて遠目に眺めているのが丁度いい。
しかしフィリップはそんな妖怪寸前の精霊にもひるまず、得意の社交術を披露している。
「おお、泉の聖霊よ、あなたのキラキラした存在感に僕は目がくらみそうだ。僕は聖樹王国の王子、フィリップと申します。お会いできて、光栄に思います、類稀なるお方」
フィリップの優雅なお辞儀と賛辞の言葉に、精霊は嬉しそうに目をぱちぱちさせて言った。
「あら、うふふ……こちらこそ、王子様。ようこそ、我が泉へ。あなたの望みを、おっしゃいな」
「では、どうか僕に教えてください、どうすればあなたの泉の貴重な水を分けていただけますか?」
「んふふ……そうねぇ……」
精霊は三人に粘着質な視線を送りながら答えた。
「アタシを楽しませてくれない? あんたたち、その腰に提げてる剣で、戦ってみてよ。いい男が本気で戦って、血しぶきなんか上げちゃったら……キャッーーーーッッッ!! んもう、鼻血ものよねぇええええっ!」
……マジか……。
ローズはそんな淑女にあるまじき呟きが頭に浮かぶのを振り払い、シャーロットに向かって「大丈夫かしら……あの三人」と不安を口にした。
シャーロットはにっこり笑うと、「大丈夫ですよ、ローズ様! シュリさんが秘密兵器持ってきてますもん! 絶対うまくやってくれます!」と拳を握りしめた。
そうこうするうちに、ギルバートとシュリの戦いが始まった。
「ちょうどいいぜ、シュリ。あんたと剣を交えてみたいと思っていたんだ。手加減なしだ、いいな?」
「望むところだ」
二人は剣を構え、ぶつかり合った。金属の触れ合う音が辺りに鳴り響く。
「ああ~いいわぁ、いいわぁ! いい男が戦ってる姿って、最高にそそられるわねぇ!」
オネエ精霊は頬に手を当ててクネクネしながらはしゃいでいる。
確かに二人の戦う姿には、思わず見惚れてしまうほどの吸引力があった。二人とも外見が良い上に、卓越した剣技を有している。互いの攻撃を交わし、飛び跳ね、絶妙なタイミングで剣を交わす、それらは剣の舞を見ているかのような優雅さがあった。
しかし、はじめは満足して見ていたオネエ精霊は、すぐに飽きてしまったようだ。
「ちょっとぉ、いつになったら血しぶき上げてくれるの? あんた達、本気じゃないでしょ。もっと激しく、相手を殺す勢いでやりなさいよぉ。勝った人にはご褒美として泉の水を分けてあげるわよ」
「それは……つまり、三人のうち二人に死ねと?」
フィリップが珍しく目力を込めて精霊を睨み付けながら言った。その視線を受けて、オネエ精霊は舌なめずりし、言った。
「うふふ……死ねとまで言わないけど、半殺しくらいにはなって欲しいわぁ……うふふふふ……」
このド変態精霊がっ!
と、ローズはまたもや淑女にあるまじき言葉を心の中で叫んだ。シャーロットもローズの隣で、「悪趣味な精霊ですねぇ……私が半殺しにしてやりたいですよ」と呟いて歯ぎしりをしている。
フィリップの合図を受け、シュリとギルバートは剣を交えるのをやめた。そして先程傍らに置いた荷物――布で覆われた四角い大きな箱状のものを、精霊の前に差し出した。
「泉の精霊よ、これは贈り物だ」
シュリはそう言って、覆いを取り外した。
それはある生き物の入った檻だった。幅80cm奥行50cm高さ60cmほどの檻の中に、小動物が二匹捕らわれている。ふわふわモフモフの薄茶色の毛で覆われていて、体長40cmくらい、齧歯類らしく丈夫な歯を持ち、リスのような顔と仕草がとても愛くるしい。手には水かきがあり、尾っぽは舵の役目を果たせるように丸く平たい。水の傍で暮らす生き物であることはすぐ見て取れる。
「なっ、なっ、なっ、なあに、それ!?」
「チキュル、という生き物だ。あなたはこんな辺境で一人きり、さぞかし寂しいだろうと思い、贈り物として持ってきた」
精霊の質問に、シュリがそう答えた。
チキュルは可愛らしく「キュルキュル、チチチ」と鳴きながら、互いの毛づくろいをしている。姿も仕草も声も、何とも愛らしい。
精霊がチキュルに見とれている間に、ギルバートは説明をした。
「チキュルは、淡水の湖などで子育てする生き物なんですよ。魚が大好物でね、おや~、あなたの泉には、美しい魚がたくさんいますねぇ。きっとチキュルも気に入るでしょう。そして付近の木々を切り倒して、この泉に巣を作り、あっという間に増えるでしょう。子どもはもっと可愛いんですよ、小さく無邪気で、見ていて飽きません。あ、これ、つがいなので、大丈夫、すぐ増えます。それで縄張りを主張するために、フンやら尿やら周囲にまき散らすでしょうが、そこは我慢です。あ、魚は食べつくされて全滅するかもしれません。でもとても可愛いでしょう? さあ、これを差し上げましょう!」
それを聞いて、精霊は慌てふためいた。
「や、や、やめて!! 冗談じゃないわ!! そんなものいらない!! あなたたち、このアタシを脅迫してるのね! なんてこと!」
「脅迫? まさか。贈り物です。受け取ってください」
ギルバートはそう言いつつ、にっこり笑って檻の出入り口を開けようとした。
「やめてーーーーつ! こここここ、殺してやるんだから、そんな生き物! そんな、そんな、そんな…………っ!!」
精霊はパニックをきたしながらチキュルたちを見据えて手を振り上げた。魔法攻撃か何かが来るかと思いきや、精霊は手を振り上げたまま固まって、ブルブル震えている。チキュルたちは怯えて、寄り添いながら目に涙を溜めて精霊を見上げている。その様子がまた、哀れで可愛い。
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