異世界召喚されたので、仕立屋しながら魔王城を目指すことになりました。

ことのはおり

文字の大きさ
2 / 7
Kindle版 出版のお知らせと試し読み

1-01 そんな悪口、気にしてなんて、いないんだから……

しおりを挟む
★ ★ 冒頭 試し読み ★ ★
こちらの試し読み分についてですが、word文書のコピペのため、(かっこ)内にルビが入っています。こちらのシステムに合わせてルビを振り直す時間が無いため、ご容赦ください。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★



「消え失せろ、このブス」

 イケメン勇者が投げつけてきたその一言に、私は凍り付いた。

 ――今、なんて言った?

 ブ ス って言わなかった?

 「ブス」……それは、「デブ」と並んで、女子が言われることを最も恐れる、究極の悪意に満ちた、恐ろしい呪いの言葉。

 実際本当にブスかどうかは関係ない。どちらであってもダメージを受けるのだから。
 デリケートな女子のガラスのような心は、その一言で深く傷つき、抉(えぐ)り取られるのだ。

 心ある男なら、女に向けて絶対に使わない言葉。
 並外れた破壊力を持つ、使ってはならない禁断の言葉。

 ――それが、「ブス」という言葉なのだ。

 目の前のイケメン勇者、ファウルは端整(たんせい)な顔を歪(ゆが)ませ、フリーズしている私を蹴(け)らんばかりの勢いで追い打ちをかけた。

「そうそう、ひとつ忠告しておいてやる。ギルドには近づくなよ。おまえがこの世界の人間じゃないって知られたら、ソッコー投獄されるから、覚えとけ、このホクロブス!」

 ホ……ホ……ホ……、
 ホクロブスですって?!

 確かに私の顔にはホクロが多いけど、それは色白だからよ! そして「色の白いは七難隠(しちなんかく)す」……って言われるくらい、色白は女子の美点のはず!
 ……まあ、正直言って、肌の白さが欠点を隠してくれるとは全然思わないけど、だからって、ホクロブスって何よ、それは言い過ぎでしょ!

 ……ホ、ホクロが多いからって、き……気にしてなんて、いないんだから……。

 そうよ、このホクロだって、結構味わいあるもの! こうホクロとホクロをつなぐと、ほら、夜空に浮かぶ星座みたいに見えて、ロマンチックでしょ! ほっぺのホクロはオリオン座に見えなくもないし、おでこには、カシオペア座だってある! そうよ、私は星空乙女! 自分の顔で星座観賞できちゃうんだから!!

 ――こんな風に、私の心の中はささやかな反撃の言葉で溢(あふ)れていたんだけど、それとはうらはらに、唇はわなわなと震えるばかりで、何一つ言葉を発してはくれなかった。
 そうしている間にも、ファウルは苛立(いらだ)ちをあらわに舌打ちし詰め寄ってくる。そして、ショックを受けて茫然(ぼうぜん)としている私に向かって言った。

「聞こえなかったのか、ミト? もうおまえに用はない。イゾルデにブスが移ったら大変だ、早く出てけよ」

 他のパーティメンバーがくすくすと嘲笑(ちょうしょう)を漏らす中、ファウルは傍(かたわ)らのイゾルデを抱き寄せる。イゾルデは私のあとにメンバーに入った<魔法使い>で、スーパーモデル並みの超絶美女だ。
 彼女は鼻をフッと鳴らし、蔑(さげす)んだ視線を私に投げかけ、言った。

「あんた、使えないのよね。<お針子(はりこ)>とかいう、新しく冒険者に加わることが許された、今をときめく花形職業だって? ハッ、笑かしてくれる。ファウル、せっかく貴重な召喚石を使ったのに、とんだ不良品を召喚(しょうかん)したものよね。まったくレベルアップしないし、ドンくさいし、お荷物なのよ。サッサと他に行った方が、あんたのためよ。精鋭(せいえい)ぞろいのファウルのパーティにはまったく相応(ふさわ)しくないわね!」

 イゾルデは、部屋の片隅に置かれた私の数少ない所持品を手に取ると、袋にまとめて入れ、投げるように私の胸元に押し付けた。そして私を扉の方へと引きずってゆく。

「じゃあね、ミト。誰かいい人に拾われて、せいぜい幸せな人生を送りなよ」

 イゾルデの甲高(かんだか)い笑い声と扉の閉まる音が、背後に響く。

 かくして私は、彼らに何一つ反撃できないまま、見知らぬ町へと放り出された。

 私は茫然としながらも、その場にいるのも辛くて、急ぎ足で歩き始める。
 私の胸中に吹き荒れている嵐の正体は、パーティを追い出された悲しみではなく、煮えたぎるような怒りと悔しさだった。
 あの心無い罵倒(ばとう)に言い返せなかった悔しさが、窒息しそうな勢いで私の喉を詰まらせ、彼らに一切反撃できずに敗者のように町に放り出された屈辱(くつじょく)に、どこか体の奥の方から怒りのマグマが沸(わ)きあがってくる。

 しかしその一方で、パーティから追い出されたのはむしろ都合がよく、私は自由になってせいせいしていた。

 ――行くあてなど、どこにもなかったのだけれど。

 そもそも、何で私は、この異世界にいるのか?

 地球という惑星の、日本という国の片隅で、ちまちまと洋服を縫(ぬ)って地味に暮らしていた私。

 それが突然、このRPGのような異世界に『召喚』されたのは、2か月ほど前のことだった――。
しおりを挟む
感想 236

あなたにおすすめの小説

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

処理中です...