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序章》恩人さんと私

プロローグ

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突然のことだった。

直前まで考えていたことすら頭から抜けるほど、呆気ない最期だったのだと思う。

鼓膜を揺るがすほどの衝撃を食らったと思ったら、身体から解けるように力が抜けていく。

訳のわからないまま、そのままの勢いに吹き飛ばされて、抱えていた本がコンクリートに激突し、挿絵の着いたページが乱暴に捲り上がるのが見えた。

視界に自身の両腕が宙をかくように伸ばされて、湿った髪の毛から小さな血の飛沫が空中へと舞い散る。

ワンテンポ早く地面に激突したトランクが、勢いよく弾んで、昨日頑張って詰めた荷物を道路中にぶちまける。

やがて水色の空から、荒いコンクリートへと視界が落ちていきーー

おそらく、私は生涯を終えたのだと思う。
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