お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀

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2話 追放

「一般的に5歳になれば、魔術を使えるようになる。だが人によっては、特殊な条件が加わることで初めて魔術が使えるようになるそうだ。珍しい例では恋をすることがトリガーとなり、魔術が使えるようになる者や15時間以上の睡眠を取ることで魔術の才能が目覚める者など様々な前例がある」

 だが、と父は続ける。

「どんな特殊な例であっても、それは“15歳”までだ。15歳を越えてから魔術を使えるようになった例など、そんなものは存在しない」

 父は呆れるように、言葉を続ける。

「貴様の為に最高のベッドを用意した。男爵家の令嬢と婚約させた。最高峰の教育を施した。そんなワシの努力が……無駄になったのだ。貴様の為に行った全ての施しが、今日で無駄になったのだ!!」

 本日は俺の誕生日だ。
 俺は今日で……15歳になってしまった。

「アルカ、1つ聞くが……何故生まれてきた?」

 そんなことを俺に聞かれても……困る。
 ……俺自身が、一番思っていることだから。

 何故、俺は公爵家に生まれてしまったのだろう。
 何故、俺は魔術が使えないのだろう。
 何故、俺は……生きているのだろう。

 考えても、答えは出ない。
 何度も、死のうと思った。

 だが……自死を選択すれば、ファレト公爵家の評判が下がる。
 処刑をしたとしても、同じく評判が下がる。
 俺がいくら落ちこぼれだとしても、自死をした者がいると知られてしまえば……それだけで世間体が悪くなってしまう。
 罪のない者を処刑すれば、同じく世間体が悪くなる。

「…………才能が無いことは……そんなに重罪か……」

「何だ痴れ者。言いたいことがあるなら、もっとハッキリと言ったらどうだ」

「そうよ!! アソコも小さければ、声も小さいのね!!」

「やめてやれ2人とも。それ以上攻めてしまえば、”アレ”が泣いてしまう」

「おお、父上! 何と寛大なのでしょう! 身体が弱くて、魔術もゴミ同然の正真正銘のグズである“アレ”に対し、慈悲の心を持ってあげるとは!!」

「さすがですわお義父様!! あんなゴミクズに優しくしてあげるなんて!!」

「ホッホホ。何、ワシらが苛立ちを覚えるのも、今日で最後じゃからな」

 父さんは、ニタニタと嗤いながら────

「アルカよ。お前には家を出て行ってもらう」

 と、告げた。

「……父さん、今何と……?」

「聞こえなかったか? お前には、家を出て行ってもらうと言ったのだ」

「……そんな。どうして────」

「お前のことは、5歳の魔力測定の時から既に捨てようと考えていた。じゃが、まだ幼いお前を才がないから捨てたと知られれば、我がフォレト家の風評に支障を来たす。じゃから、ワシは考えたのじゃ」

 父さんはここ10年で、一番の笑顔で俺を見つめた。

「お前が義務教育を終えた日に、捨てようと」

 義務教育は中等部までだ。
 そして、義務教育が終了すれば……親は子どもの面倒を見る必要性がなくなる。

「残り約ひと月。楽しく暮らすんじゃよ。ワシらも貴様が消えた後、これまで以上に楽しく過ごすからの」

 動悸が激しい。
 いくら冷酷無慈悲な父さんでも、実の息子を追い出すなんてしないと、無根拠に信じていた。
 
 ……なのに、現実はどうだ。
 生を受けて15年。勝手に思い、無根拠に信じていたことを頼りに生きていたというのに……。

 待ち受けていたのは、この仕打ちだ。

「ワシらはお前のことを、綺麗に忘れる・・・ことにした」

 父さんは枯れ枝のような手で、俺の肩を撫でる。

「だから、お前もこれまでの人生を、忘れなさい・・・・・

 ニタニタとした、嫌らしいみを浮かべて。

「だが、ワシも決して冷酷無慈悲では無い。中等部を卒業するまでは、めんどうを見てやる」

「父上の慈悲に感謝しろ! 痴れ者!!」

「そうよ!! このゴミ!!」

「落ち着きなさいイリカ。……そうじゃ、我が息子だったもの・・・・・の門出を祝ってやるとするか」

「おお! さすが父上! 懐の深さがブラックホール級ですな!」

「……イリカの言語センスには、たまに理解できないの……」

「ふふ、まったくね」

 3人は、両手を広げる。

「心配するなアルカ! ユウカはオレが貰ってやるからよ!!」

「そうよ!! 追放されたんだから、今日でようやく婚約破棄できるわね!! アタシはアンタみたいな根暗で奥出なヤツじゃなくて、イリカみたいな勇ましい男に幸せにしてもらうわ!!」

「アルカよ! 頑張って生きるのじゃぞ!!」

 心が欠けた、酷い声援だ。
 深い絶望の淵に立たされた俺に対し、わざと応援することで逆説的に俺を傷つけてくる。

 まるで持久走でビリの男が女子から声援されるかの如く、俺の心を深く抉る。

「……」 

 罵られ、追放され、応援され。
 頬を熱い雫が、流れ落ちる。

 だが、それは罵られたことが原因では無く、追放されたことが原因では無く。
 心無い応援をされたことが原因でもなく。
 
「……才能が無いことは……そんなに重罪か……」

 非情な現実に対しての、深い絶望から来る涙だった。
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