お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀

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15話 翌日

 次の日、俺はいつも通り教室に向かった。
 自分の席に座り、いつものように居眠りを始める。
 そんな時、周りがコソコソと話しているのが聴こえた。

「おい、マジでアイツがイリカ様を倒したのかよ」

「ええ、この目でしっかりと見たわ。あのイリカが手も足も出ずに、圧倒される様をね」

「あの劣等生が……マジかよ。信じられねェな」

「なら、試してみたら? アンタもイリカの取り巻きだったんだから、ボスがやられて悔しいでしょ?」

「いや……イリカ様の側にいたらヒエラルキー的に有利だったからつるんでいただけで、別にイリカ様に対する忠誠心は皆無だからな……」

「……アンタ、本当にクズね」

 ……さっきから鬱陶しい。
 周りがコソコソと話している内容は、昨日のイリカとの勝負に関するモノばかり。
 俺が急に強くなり、絶対強者のイリカを圧倒するという話は、予想以上に思春期真っ盛りの彼らに刺激を与えたらしいな。

 だが、あまりにも耳障りだ。
 人が短い睡眠時間を補おうとしているというのに、彼らは俺の話で持ちきり。
 中には俺に聴こえるように、ワザと大きな声で話しているヤツもいる。
 ……俺は意外と神経質だから、この状況下では眠れない。

「アイツがイリカを倒したんなら……次は俺たちの番なんじゃねェか……?」 

「俺たち、イリカと一緒にアイツを虐めていたもんな……」

「どうする、謝るか?」

「でも……今更、アイツに謝れるか?

「……確かに。プライドが許さねェな」

「だろ? いくらアイツが強くても、元劣等生に謝れるほど俺たちは腐っちゃいないからな」

「それに……俺たち全員で奇襲をかければ、案外勝てるかもな」

「確かに。よし、それじゃあ……早速作戦を練るか!!」

 バカな連中だ。
 イリカの金魚の糞が何人集まろうと、俺に勝てるハズがないのに。
 
 だが、、渡りに船とはこのこと。
 彼らはいずれ処刑する予定だった。
 彼らの方からケンカを打ってくれれば、わざわざ俺が出向く必要がなくなる。

「アイツがイリカを倒したんなら……アイツを倒せば俺が最強だってことになるよな!!」

「いやいや、やめておけよ……。アイツどういうわけかわかんねぇけど、イリカと同じ魔術を使っていたぞ?」

「そうよ、命が惜しかったらやめておいた方がいいわよ!!」

「黙れ!! 俺は……頂点に君臨してェんだ!!」

 ズンズンと足音が近づいてくる。
 その足音はピタッと、俺の席の横で止まった。

「おい!! 根暗!!」

 ドンッという強い衝撃で、机が揺れる。
 こいつ……俺の机を蹴りやがったな。

「……はぁ」

 ため息を吐きながら、顔を上げる。
 クソッ、寝ようとしていたのに……面倒なヤツだな。

「……なんだよ、金魚の糞1号」

 そこにいたのは……イリカの取り巻きだった男。
 イリカの機嫌が悪くならないように、常に危険で過激なことに手を染めていた情けない男だ。
 
 教室で全裸になってみたり、飲食店の料理を食べずに捨ててみたり……本人はおもしろいと思っているかもしれないが、側から見ると寒い男だった。
 しかし、イリカを含めた取り巻き連中は、イリカ同様にバカでつまらない人ばかりなため、彼の行為は大爆笑とともに受け入れられた。

「なッ!! テメェ!!」

 沸点の低い彼は、拳を突き出してくる。
 しかし……あまりにもレベルの低い拳だ。

「……はぁ、ハエでも止まりそうなパンチだな」

 パシッと軽く、拳を受け止める。
 衝撃も皆無で……情けない拳だ。

「なッ!!」

「いいのか? 俺を倒して、最強になるんだろ?」

「だ、黙れ!! 拳を放しやがれ!!」

「最強になって、もっと目立ちたいよな? イリカを囲っていた女どもを、全員自分のモノにしたいよな?」

「黙れ!! それ以上、その汚い口を開くな!!」

「図星か、情けないな」

 左手で拳を握る。
 力強く、何でも砕けるように。

「て、テメェ!! なんだその拳は!!」

「承認欲求の塊に、お灸を添える拳だ」

 そして──
 ──拳を振るう。

「おらッッッ!!」

「ぐァアアアアッッッ!!」

 メキリと彼の胸に食い込む拳。
 教室の壁をブチ破り、隣の教室まで吹き飛んでいく彼。
 その2つが、ほぼ同時に起きた。

「あッ……ぐふッ……」

 最終的に彼は隣の隣の隣の教室まで吹き飛ばされたようで、目を凝らすと血を吐きながら血ベタに這いつくばっている様子が確認できた。
 
【汎用スキル:身体能力強化を習得しました】
【汎用スキル:剣術を習得しました】
【汎用スキル:体術を習得しました】
【汎用スキル:槍術を習得しました】

「……つまらない才能スキルだな」

 殴ると同時に奪盗うばったスキルは、すべて汎用スキルだった。
 その上、新規で得たものはたったの1つだけ。
 なんというか……あまりにもつまらなくて、面白みに欠ける。

「す、スゲェエエエエ!!」

「自称イリカの右腕のアイツを、一撃で倒しやがったぞ!!」

「俺、信じるわ。アイツがイリカに勝ったってことを……」

「アルカの野郎……マジで劣等生から脱却したんだな」

 驚嘆と賛美の嵐。
 気分は悪くはないが、うるさくて目障りだ。
 俺はただ……惰眠を貪りたいのに。
 
「……ふんッ」

 彼らもつい先日までは、俺のことをバカにしていたのに。
 それが今では、驚きの声をあげるようになるとは。
 なんというか……複雑な気分だな。

「……まぁ、許したりはしないんだがな」

 俺へのいじめを傍観していた彼らも、共犯なのだ。
 彼らからも、必ずスキルを奪盗うばってやる。
 ……1人残らず、傍観者だったものは例外なく。
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