お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀

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39話 父兄

 剣魔武闘大会が閉会し、数日後。
 俺はいつも通り、病院の一室にやってきた。

「やぁ、イリカとスルマ」

 扉を開けると、そこにはイリカとスルマの姿があった。

「ヒィッッ!! あ、アルカ!!」

 イリカは点滴を複数打ち、ベッドで横になっている。
 ベッドの横には、たくさんの錠剤が転がっており、イリカの症状の深刻さが伺える。

「アルカ……また才能を奪いに来たのか?」

 スルマも同じく、ベッドに横になっている。
 イリカのように点滴や薬はないが、妙に身体がやつれている。精神的に、相当参っているようだ。

「よくわかっているな。その通りだ」

「お、お願いだ! わ、ワタシの才能を、返してくれ! 貴様に才能を全て奪われてから、ワタシは……一切の魔術を使えなくなった!!」

「イリカの才能スキルは、全て奪い尽くしたからな。お前はもう、用済みだ」

「……で、残ったのはワシということか」

「何か言い残すことはあるか?」

「……すまなかった」

 スルマは頭を下げ、謝罪をしてきた。

「貴様にどれほどの苦しみを与えたか、その罪の重さを……ようやく、理解した」

「ほぉ?」

「ワシ等が愚かじゃった。こうして、貴様に傷つけられてから、初めて貴様に寄り添うことができたのじゃから。貴様に才能を奪われて、初めて貴様の気持ちを理解できたのじゃから」

「なるほど」

「今さら、どこだけ謝罪をしても、貴様に許して貰うことはできないじゃろう。じゃが……これがワシの気持ちじゃ」

「ふむ」

「ワシ等が貴様に謝りたいと思っていることは……覚えていてくれ……!」

 スルマは涙を流しながら、ベッドの上で土下座をしている。

「……はぁ、しょうが無いな。そこまで謝られたら、許しちゃうだろ」

「そ、それじゃあ……!」

「これ以上才能スキルを奪うのは、もうやめるよ。いくら憎くても、お前は俺の肉親だからな」

「あ、ありがたい……。アルカよ、ありがとう……」

「──なんて言うわけ、ないだろう」

 スルマの頬に触れ、奪盗術クリアネスを唱える。

【汎用スキル:剣術を取得しました】
【魔術スキル:最上級の津波ダイタル・ウェーブを習得しました】

【レベル上限を超過したため、スキルが進化します】

【剣術は”剣聖術”に進化しました】

 俺の剣術スキルは、前世から引き継いだこともあり、レベルがマックスだった。
 そんな状態で、他人の剣術を入手したからだろう。
 俺の剣術スキルは他人の剣術スキルと統合され、スキルが進化したのだ。

「なッ! あ、アルカ……!?」

「今さら謝られても、もう遅い」

「そ、そんな……ワシはこんなにも謝罪をしたのじゃぞ! 心の底から、貴様に申し訳ないと思って──」

「本当に謝りたいのなら、相手を『貴様』なんて呼ばないよな?」

「そ、それは……」

「自分の才能スキルを奪われたくなくて、仕方なく謝罪をしているんだろ?」

 心の底から俺に謝りたいなど、これっぽっちも思っていない癖に。

「自身の保身のために謝罪をして、魂胆を見破られて才能スキルを奪われるなんて、どんな気持ちだ?」

「……ワシは四肢を失い、仙骨を砕かれたことで一生魔術を使えなくなった」

「今度は同情を誘うか? どれだけ俺の感情を揺さぶろうとも、俺の憎しみは消えはしないさ」

「……こんなワシから、才能まで徴収するというのか?」

「安心しろ、お前から才能スキルを徴収することはもう無い」

「……まさか──」

「お前の才能スキルを、全て奪盗うばったからな」

「なんと非道な……。親の顔が見てみたい!」

「随分と醜い顔をしているだろうな。誰かさんとよく似ていて」

 窓からの景色に視線を映す。

「景色はいいな」

 窓からの景色は、実に優雅だ。
 南向きの部屋なので、日当たりも良い。

「だが、毎日の中傷は……こたえるだろう」

 視線を落とすと、そこには抗議に必死な平民の姿が。
 彼らが持つ紙や木の看板に、『無能なファレト家に鉄槌を』と書かれている。
 
次男アルカがいなければ、ロクに経済を回せないスルマ領主を焼き殺せ!!」

「中等部で横暴の限りを尽くした長男イリカを、くびり殺せ!!」

「剣魔武闘大会で、観客に危害を加えようとしたスルマ領主を、早く出せ!!」

「我等の税金を私用に使い、傲慢に育った長男イリカを、早く出せ!!」

「無能なファレト家に鉄槌を!!」

 平民達は、軽く数百人はいるだろう。
 そんな彼らが病院の前で、スルマとイリカに抗議をしてくる。

「毎日じゃ。毎日、ヤツらが……我等に誹謗中傷を浴びせてくる」

「他の入院患者からも、最近はクレームを浴びせられる。ワタシたちは、公爵家なんだぞ?」

 ……救い難い。
 こいつら、まだ自分たちが被害者だと思っているのか?

「……救えないな」

 呆れるが、みが零れる。
 その理由は、実に単純。

 俺の復讐劇の終焉が、近づいているからだ。
 だからこそ、嬉しくて仕方が無い。
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