お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀

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40話 機関

「お前等、入院費が底を尽きそうなんだろ?」

 現在、ファレト家は財政難だ。
 理由はいくつかあるが、一番大きな理由は俺を追放したことだろう。
 経理を担っていた俺を追放したことで、一気にファレト家の財政が傾いたのだ。

「……ちッ、貴様なんぞに、心配される必要は無い!」

「……その通りじゃ、ワシ等に残ったカネは、残り僅かなのじゃ」

「ち、父上! こんな痴れ者に、弱音を吐くのですか!?」

「……イリカよ、現状を鑑みてみろ。それができなから、アルカに敗北したのだろう」

「ち、父上……ひどいです……」

 スルマとイリカの醜い喧嘩。
 見るに堪えない。

「そこで、2人にチャンスを与えてやろうと思ってな」

「ちゃ、チャンスだと?」

「ああ。カネが無い2人に、今すぐ大金を稼ぐチャンスを与えてやろうと思っているんだ」

「……それは、本当か?」

「お前等のように、俺はウソを吐かない」

 2枚の契約書を、懐から取り出す。
 名前記載の欄以外、全てが漆黒に塗られた特殊な契約書を。

「ここにサインをしてくれれば良い。それだけで、2人はカネを手に入れることができる」

「……名前記載の欄以外が、全て黒塗りになっているぞ。これでは契約内容が、わからないではないか」

「特殊な明かりを浴びせた時のみ、文章が現れる様になっている。それに、契約内容に関わらず、カネが欲しいのだろ?」

「貴様ァ! ワタシ達を騙そうとしているな!!」

「……わかった、サインをしよう」

「ち、父上!!」

 スルマは羽ペンを動かし、サインをする。

「……イリカよ、まだ現状がわかっておらんようじゃな」

「ち、父上……」

「ワシ等には、既に選択肢は存在しない。サインを書き、契約するしかないのじゃ。どんな悪行に手を染めようが、このままカネが底を尽き、路上を彷徨さまようよりは……ずっとマシじゃろ」

「し、しかし……」

「……少々、甘く育てすぎたようじゃ。現状を把握する能力が、極端に足りておらん」

「父上……」

「貴様は魔術や剣術の才能はあるが……それ以外は、全てお粗末じゃな」

「うぅ……か、書きます……。サインをしますよ!!」

 ストレス耐性が皆無で、同調圧力に弱いイリカも、サインを行った。

「よし、確かに預かったぞ」

「アルカよ、ワシ等は……どうなるのじゃ?」

「今にわかる」

 指を鳴らす。

「いいぞ、入ってこい」

「はい」

「ええ」

 病室に入ってきたのは、2人の男。
  2名とも華奢な肉体で、白衣を身に纏っている

「だ、誰だ……こいつらは!?」

「まさか……『研究機関』の連中か?」

「スルマは察しが良いな」

 白衣の男性達は先ほどスルマとイリカが書いた契約書を眺め、ニンマリと満足げな笑みを浮かべた。

「な、何ですか父上……研究機関って……?」

「我が兄イリカよ、こんな都市伝説を聞いたことはないか?」

「と、都市伝説?」

「『我が国には極秘の組織がいくつかある。その内の1つに囚人を用いて、人体実験を行っている組織がある』という噂を」

「しょ、初等部の頃に流行った都市伝説だな。しかし、何故その話を……?」

「彼らがその組織、通称『人体研究機関』だ」

 我が兄ながら、理解力の乏しさに呆れてしまうな。

「な、何を言っているんだ? と、都市伝説だろ……?」

「彼らは囚人を利用して、人体の研究に明け暮れている。どれほどのクスリを打ち込めば、人は死ぬのか。人が耐えられる痛みの限界は、一体どれほどのモノなのか。様々な研究成果を残してくれているんだ」

「なんだよそれ……! 倫理的にアウトだろ!!」

「倫理か……。それは”人権”を持つモノにのみ与えられる、特権だな」

「な、何を言っている……?」

「契約書にも記されているだろ?」

 契約書を拾い上げ、イリカに見えやすい位置に持って行く。

『スルマとイリカ(以下、両者)は、
 人体実験の被験者になることを誓う。
 両者は人権を喪失し、
 被験者として従順になることを誓う。
 尚、この契約は、
 両者が死ぬときまで続くものとする』

 と、契約書には記載されていた。

「……何ということじゃ」

「じゃあワタシ達は……被験者モルモットになったのか……?」

「ちゃんと契約書を読まないかった、自分たちを呪え」

 白衣の男性から、1本の注射を渡される。

「それでは、さっそだが最初の実験を始めよう。対象は……イリカがいいか」

「な、なんだそのヤバそうな注射は!! 中身が緑だなんて、絶対にヤバイだろ!!」

「安心しろ、お前の大好きな”倫理”にかなった薬物だ」

「え、そうなのか……? それなら、まぁ────」

 イリカに注射を打ち込む。
 緑色の液体が、管を渡っていくのを確認できた。

「被験者ではなく、実験者の倫理にかなった薬物だがな」

「え────!?」

 刹那、イリカの身体に変化が起きた。
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