お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀

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41話 終焉

「ぐ、がぁあああ!!」

「イリカ!! アルカ貴様!! かわいいイリカに一体、何をした!!」

「安心しろ、生死に関わるクスリではない」

「ぐぎゃぁあああ!!」

 イリカの肉体は、ベキベキと音を立てて変形していく。
 関節が不条理に曲がり、血の汗が吹き飛ぶ。
 そして────

「……」

 イリカは肌色の球体ボールになった。
 60センチ程度の、柔らかな球体ボール
 触ってみると生暖かく、少し手を押し込むと血液の巡る感触が伝わってくる。

「実験は成功だ!!」

「ほぉ! このような結果になるのですね!!」

 変貌したイリカを見て、喜ぶ白衣の男性達。
 無邪気に喜ぶ姿は、まるで子どものようだ。
 彼らの姿を見ていると、医学に貢献できて良いことをしたと思える。

「なんじゃ……イリカに何をした!!」

「見てわかるだろ、実験を行ったんだ」

「さっぱりわからん!! 具体的に話せ!!」

「仕方ないな、これは機密事項だから内密にしろよ?」

 バランスボールのようにイリカの上に座り、語ってやる。

「スルマも知ってのとおり、『人体研究機関』は人体実験を生業としている。薬物を打ち込んだり、電撃を浴びせたり……そのほとんどの活動が人道に反する」

「……宮廷勤めの時に、よく聞いたの。その悪行を」

「だが、人道に反する活動をしていても、実験者も所詮は人間。人体実験の内容によっては、罪悪感や嫌悪感を感じることもある」

「機関の連中に、そのような感情があったとはな」

「そこで開発されたのが、この新薬だ。罪悪感を感じるのは、対象が人間の形をしているから。それならば、人間から遠ざけた形にすれば罪悪感を感じることはないのではないだろうか、という考えから生み出されたんだ」

「なんと……ということは、我がイリカは……形が変わっただけなのか……?」

「正解、イリカは生きている。脳が生きているから意識はあり、痛覚があるから痛みも感じる」

 懐からナイフを取り出し、イリカに突き刺す。
 生暖かい血が流れるが、少しだけビクッと震えた。
 だが、既に人間の姿ではないため、罪悪感や嫌悪感は一切感じない。

 というわけで、何度もナイフを刺す。
 血だけではなく、脂汗まで漏れてきた。
 ……汚いな。

「なッ、やめるのじゃ!! 愛しいイリカに……なんてことを!!」

球体ボールになったことで、視力聴力も失い、言葉さえも失った。今イリカは漆黒の暗闇の中、身動きもできずに何十年も意識だけを加速し続けるんだよ!!」

「なんと……、悪魔か貴様等は……!?」

「そんな地獄を、お前も味わえ」

 白衣の男からもう1本注射を授かり、スルマへと迫る。

「や、やめろ……! どうせ永き時を生きなければならんのじゃ!! ワシを人間のまま、生かせてくれ!!」

「十分生きただろ。これからは被験者モルモットとして罪を償え!!」

 注射器を突き刺す。
 刹那、スルマの姿も変わる。

「ぐ、ぐぁあああ!! 嫌じゃ!! ワシは人間として────」

 無事、スルマの球体ボールが完成した。

「よし、それじゃあこれをよろしくお願いしますね」

「ええ。人類の医学進歩のために、利用させていただきます」

「この度は貴重な”資源モルモット”の提供、感謝します」

「これからも捨て駒モルモットが必要なら、いつでも声を掛けてください。汚職に塗れた貴族やいじめを行う学生を捕まえてきますので」

「その時はまた、報酬を弾みますね」

「ええ。期待してますよ」

 そうして、白衣の男性達は去った。

「……ふぅ、いいことをしたな」

 穢れたイリカとスルマ。
 彼らの血潮で医学が発展するなら、これ以上の名誉はないだろう。

「……俺の受けた苦痛を、少しは味わえ」

 喧噪の止まないデモを聞きながら、俺は少しだけ……気持ちが楽になった。
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