追放賢者のやり直し ~『お前は弱い』と言われてパーティから追放された賢者は過去に戻り、これまでに培った知識を活かして世界最強になる~

志鷹 志紀

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2話 あの頃

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 目が覚めると、そこは──

「……トイレ?」

 鼻をつんざく下水の臭い。
 照明は消えかかっており、薄暗い。
 足元にはカマドウマ便所コオロギが数匹いる。
 そう、俺は何故かトイレにいた。

「なんで俺はトイレにいるんだ……? いや、それよりも”回帰”は成功したのか!?」

 急いでトイレの洗面台に向かい、鏡を確認する。
 そこに映っていたのは──

「よかった……成功だ……!!」
 
 シミ1つ無い、ピチピチの肌。
 健康的な漆黒の髪。
 深い隈を形成し、若干充血した青い瞳。 

 服装は白を基準とした、制服だ。
 胸ポケットには、何故かピンク色の花が添えられている。
 そして片手には、謎の黒い筒。
 中を見てみると、卒業証書が入っていた。
 
「よし、俺は……過去に戻ってきたんだな。魔法学院の卒業式の、あの日に!!」

 年甲斐もなく、ガッツポーズをしてしまう。
 いや、今の俺は18歳だから……年相応の反応か?
 
「おいおいアルガ、いつまで用を足しているんだい?」

 トイレの扉が開かれ、そこにいたのは──

「……テノール!!」

 そこに立っていたのは、金髪の耳の尖った美男子。
 身長は俺よりも若干高い175センチほど。
 格好は俺と同じく、白を基調とした制服。
 彼こそは俺と同じく魔法学院を首席で卒業した、俺にとっての永遠の宿敵……テノール・ヴァルガスだ。

「おいおいどうしたんだよ。卒業式くらい、仲良くしようじゃないか」

「……あぁ」

「どうしたんだよ。寝不足すぎて、情緒が不安定なのか?」

「……そういうことにしてくれ」

 本当は今すぐにでも、ここで八つ裂きにしてやりたい。
 俺の全てを奪い、のうのうと生きたテノール。
 もはや彼のことはライバルなどではなく……憎々しい宿敵と俺は認識している。

 だが、今彼を八つ裂きにしてはマズい。
 憲兵がすぐやってきて、俺は牢屋にブチ込まれるだろう。
 殺すのは法の通用しない……迷宮の中だ。

「おい、テノール。今は女神歴何年だ?」

「変なことを聞くなぁ。もう痴呆が始まったのか?」

「黙れ、聞かれたことにだけ答えろ」

「なんだか今日はいつにも増して、イライラしているね。今年は女神歴2022年だよ」

「そうか……」

 やはり、俺は過去に戻ってこれたようだ。
 他人から改めて聞いて、実感が湧く。

「さぁ、それよりもだ。早くパーティーに行こうじゃないか」

「……パーティー?」

「そうとも! 主席の僕たち2人が参加しなきゃ、盛り上がらないだろう?」

「……あぁ、卒業式後の2次会か」

 そうだ、思い出した。
 俺は魔法学院卒業後、2次会のパーティーに参加したんだった。
 そこで酒や飯をたらふく食って、気が付くと寝ていたんだった。

 後から聞いた話によると、俺が酔っている間にテノールは俺を全裸にし、女子の周りで裸踊りをさせたらしい。
 ただでさえ異性との繋がりの少ない青春を送った俺だが、その日を境に完全に異性との関係が絶たれた。

 当時、まだ18歳の俺は完全に異性との繋がりが絶たれたことに対して、形容しがたい悲しみを抱いていた。
 今となってはどうでもいいことだが、やはり青春真っ盛りの18歳にとっては……何よりもツラいことだったのだ。

「……いや、行かない」

「は!? どうしてだよ!!」

「行くなら1人で行ってくれ。俺は他の用事があるんだ」

 テノールを押しのけ、俺はトイレを出る。
 確かめなければならないことが、まだ残っているんだ。
 行わなければならないことが、まだ残っているんだ。
 青春を謳歌するよりも、大事なことがまだ残っているんだ。
 パーティーなんぞに、うつつを抜かしている暇なんてない。

「お、おい!! 本当にいいのかよ!! アルガ!!」

 テノールの声を無視し、俺は家に帰った。


  ◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 帰宅した俺は、さっそく自身の強さを測った。

「残念なことに、全盛期の力は引き継がれていないようだな」

 全盛期……つまり回帰前の、数百歳の頃の力は何一つ引き継がれていない。
 身体能力は貧弱と言うほかなく、魔力量も全盛期の100分の1程度。
 学生にしては上出来だが、全く満足はできない。

「まぁいい。俺には絶対的な”知識”があるんだからな」
 
 俺には最強の武器、”知識”がある。
 数百年という月日でつちかい、研磨されていった最強の武器だ。
 現代過去の時間において、誰も有していない究極の武器だ。

「俺の計算が正しければ……5年もあれば、カイトパーティを追い抜けるだろう」

 つまりそれは……世界最難関の迷宮を5年で踏破するということになる。
 全盛期の力を継承していれば、半年もあれば踏破できたのだが……。
 いや、無いものねだりをしても、仕方がないか。

「とりあえず、今の俺に必要なことは3つだな。最強の仲間、最強の装備、自身強化道具ドーピングアイテム、そして修練だ」

 今すぐ行えるものは……修練のみか。
 その他3つは、今は揃えることが難しい。

「とりあえず、冒険者登録をしよう。迷宮に潜るためには、冒険者になる必要があるからな」

 俺が強くなるために必要な装備や道具は、ほとんどが迷宮に潜んでいる。
 それにいずれ勧誘する最強の仲間たちも、今は冒険者として活躍しているハズだ。
 つまり、一刻も早く冒険者登録をしなければならないのだ。
 
「さぁ、さっさとギルドへ向かおう」

 せっかく過去に戻ってきたんだ。
 試したいこと、やりたいこと、そんな物は星の数ほど存在する。
 すでに精神的には数百歳だが、年甲斐もなくワクワクしている。
 いくつになっても、男の子は子どもということだろうか。

 服を着替え、俺はギルドへと向かった。
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