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第五章──忠(まごころ)の誓い、戦に生きた侍
66話
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「これなるは、静殿が申されし舞の始まりにて候か……ならば見届け申さん……その舞とやら、そして花天照殿、そなたの『忠』、拙者に示してみせよ」
それでも死に座のまま現路は形を崩さず。左手の甲の花紋様が終演の幕を開始するかの如く光だす。
清と静がそれぞれ線香花火を取り出す。
「いざ、花霊々の舞にて候。花護人筆頭、花天照此れに」
「いざ、仇花霊々の舞にて候。花傀儡筆頭、花化従、此れに」
互いの筆頭である花天照が天に舞い、花化従が下駄を鳴らす。互いの主の線香花火に息を吹き掛け火を灯す。ふわりと灯った線香花火を清と静が番人である花灯ノ籠ノ番人右手、仇花灯ノ籠ノ番人左手に線香花火を預ける。清は番人に告げる。
「よいか、右手よ……現路殿の覚悟に一片の瑕も許すな。即ち、この灯火、命に代えても護り抜け」
右手は何も言わぬが左手で灯火を護るように添えた。
「でき損ないの妹よ……未だ喘ぐか? 左手……申さずとも、わかるな」
静の言葉に左手は首を縦に振り、右手を傘のように添え灯火を護る。ぽつりぽつりと雨が降りだす。雨の雫が弾けるように舞う。花化従が花絶の面をつけた。花天照は頭上に舞い翼を広げる。互いの舞いが迷いのすべてを昇華させられていく現路。
厳かな舞いが繰り広げられる中、花天照と花化従の身体から枝が分かれ、白砂に突き刺さる。そして地中からは、それぞれ五つずつ、真白と漆黒の蕾が現れた。荘厳に並ぶ拾の蕾がその刻を待つ。
──この舞ひ、すべてを照らさば、あの御方も、さだめて御覧じ下さるならん。義を預かりし御魂、今もなお、我らが背を護り、この場に在しますべし──
清が心で呟く。そして……
──忠は道標、たとえ闇に堕ちようとも、誓いは散らぬ──
清が花告の言葉を告げると、静は花現身の言葉を詠む。
──妄を以て、願いを縛りし。我はそれを知りながら、ただひたすらに縋りし──
お互いの花告、花現身を唱え終わるとそれぞれの一つ目の蕾が開く。鏡面のような世界が広がると、方や雨粒がさらに勢いを増し一面に湖面を描く。水鏡の衣を纏う花護人、花水鏡と真青の涙雫の衣の花傀儡の花雫。花水鏡の舞いが現路の内面を映し出せば、花雫の舞が現路の感情をあぶり出し感情を解放する。
「これぞ花雫殿の舞……我が意に介さず、ただ心を抉る……さもあらん、そなた、それほどまでに静殿を慕うか……」
現路は息を呑む。──互いの次の蕾が開き始める。
花護人は翅衣揚羽の花翅、花傀儡は蒼鱗の衣の花徒影。花翅は蝶のような翅を羽ばたかせ、花徒影は光の反射で煌びやかに衣を光らせ、袖を振る。花翅が舞うごとに風がそよぎ、花徒影は現路の影をなぞるように舞う。幻想的な舞が心を洗い浄めていく。
それでも死に座のまま現路は形を崩さず。左手の甲の花紋様が終演の幕を開始するかの如く光だす。
清と静がそれぞれ線香花火を取り出す。
「いざ、花霊々の舞にて候。花護人筆頭、花天照此れに」
「いざ、仇花霊々の舞にて候。花傀儡筆頭、花化従、此れに」
互いの筆頭である花天照が天に舞い、花化従が下駄を鳴らす。互いの主の線香花火に息を吹き掛け火を灯す。ふわりと灯った線香花火を清と静が番人である花灯ノ籠ノ番人右手、仇花灯ノ籠ノ番人左手に線香花火を預ける。清は番人に告げる。
「よいか、右手よ……現路殿の覚悟に一片の瑕も許すな。即ち、この灯火、命に代えても護り抜け」
右手は何も言わぬが左手で灯火を護るように添えた。
「でき損ないの妹よ……未だ喘ぐか? 左手……申さずとも、わかるな」
静の言葉に左手は首を縦に振り、右手を傘のように添え灯火を護る。ぽつりぽつりと雨が降りだす。雨の雫が弾けるように舞う。花化従が花絶の面をつけた。花天照は頭上に舞い翼を広げる。互いの舞いが迷いのすべてを昇華させられていく現路。
厳かな舞いが繰り広げられる中、花天照と花化従の身体から枝が分かれ、白砂に突き刺さる。そして地中からは、それぞれ五つずつ、真白と漆黒の蕾が現れた。荘厳に並ぶ拾の蕾がその刻を待つ。
──この舞ひ、すべてを照らさば、あの御方も、さだめて御覧じ下さるならん。義を預かりし御魂、今もなお、我らが背を護り、この場に在しますべし──
清が心で呟く。そして……
──忠は道標、たとえ闇に堕ちようとも、誓いは散らぬ──
清が花告の言葉を告げると、静は花現身の言葉を詠む。
──妄を以て、願いを縛りし。我はそれを知りながら、ただひたすらに縋りし──
お互いの花告、花現身を唱え終わるとそれぞれの一つ目の蕾が開く。鏡面のような世界が広がると、方や雨粒がさらに勢いを増し一面に湖面を描く。水鏡の衣を纏う花護人、花水鏡と真青の涙雫の衣の花傀儡の花雫。花水鏡の舞いが現路の内面を映し出せば、花雫の舞が現路の感情をあぶり出し感情を解放する。
「これぞ花雫殿の舞……我が意に介さず、ただ心を抉る……さもあらん、そなた、それほどまでに静殿を慕うか……」
現路は息を呑む。──互いの次の蕾が開き始める。
花護人は翅衣揚羽の花翅、花傀儡は蒼鱗の衣の花徒影。花翅は蝶のような翅を羽ばたかせ、花徒影は光の反射で煌びやかに衣を光らせ、袖を振る。花翅が舞うごとに風がそよぎ、花徒影は現路の影をなぞるように舞う。幻想的な舞が心を洗い浄めていく。
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