浜辺のスローライフ~カニさんたちとの異世界生活日誌~

かにすごくうまい

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39話:カニコレ

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異世界生活三十日目



あれから数日、派手ガニさんたちとモクさんたちは、さまざまな染料や染め方を研究していた。



「メグミ~! 我々はついに、素晴らしき美しさに到達したぞ!」



ハロさんが嬉しそうにやってきた。



「えっ、どういうこと?」



「染色をさらに極めて、メグミ用の服をいろいろ作ったのだ」



モクさんが胸を張る。



「えー!? そうなんだ! 見せて見せて!」



「メグミ、今すぐ見せるわけにはいきません! 我々が報告に来たのは、それらの服の美しさを競う場を設けてほしいからデス!」



「え、比べなくても……みんなが作ったものなら、きっと全部素敵だと思うけど……」



「それでも、競いたいときがあるのです。答えがないことは承知の上で、美を競いたいのです!」



ハロさんは真剣だった。



「わかった! じゃあ、やろう! 『カニコレ』!」



「カニコレ?」



「カニ・コレクションの略だよ。みんなの作った服を披露するファッションショー!」



「なるほど、カニコレ。これはハサミが鳴りますネ」



「我の実用的美の前に、カムリよ、敗れ去るがよい」



「ふふ、メグミに似合うのは煌びやかな服デスヨ、モクさん」



「おっと、美の祭典をリードするのは我々だと思うがな」



「ハロさん、我々はそれぞれ個別で出すと決めたではありませんか」



「当然だ、スラさん。あの日の決着を、ここでつけよう」



「ふん、ハロさんやスラさんの服では皆に伝わらないだろうね」



「自信たっぷりだねバンさん。でもこのデビこそが、至高の美を示してみせるさ」



「はいはい、言い争ってないで。まずはみんなの前で披露しようね」



「ミコちゃん、みんなを集めてきてくれる?」



「はーい!」



しばらくして、浜辺にはものすごい数のカニさんたちが集まっていた。



普段は交代制のワタルくんたちや、コメちゃんズ全員に、オカちゃん、ヤマトくん、ホリくんの仲間たち……さらに、なぜか大量のシオマネキさんたちまで!



「メグミを一番輝かせる服を選ぶのは俺だー!」



「いや、俺のほうがメグミの魅力を引き出せるぞー!」



大合唱のような声が響く。……なんだこの光景。異様すぎる。



「それでは、今から『カニコレ』を始めます!」



司会はミコちゃんが担当してくれるようだ。



ワーワー! オーオー!



「エントリーNo.1、モクさん! 作品名は『苔の安らぎ』です!」



その名の通り、モクさんの服は苔色のグラデーションが美しいワンピースだった。



「これなら、メグミもきれいに擬態できるはずだ」



モクさんは誇らしげに言った。



「エントリーNo.2、カムリさん! 作品名は『浜辺の煌めき』!」



砂浜色の布に、煌びやかな貝殻のかけらを散りばめたワンピース。力作感がすごい。



「メグミには、煌めきこそがふさわしいと思いマス」



うっとりと語るカムリさん。



「エントリーNo.3、デビさん! 作品名は『レッドデビル』!」



赤と黒を基調にした挑戦的なデザイン。デビさんの色に似てるけど、赤はカニさんたちにあまり見えないのが不利かも?



「これこそが、至高の美」



迷いのないデビさんである。



「エントリーNo.4、スラさん! 作品名は『海の彩』!」



白と青を使った、まるで海そのもののようなワンピース。すごく好みかも!



「メグミさんは、海とともにある存在だと感じて、作りました」



たしかに、私が一番いる場所は海辺だもんね。



「エントリーNo.5、ハロさん! 作品名は『夕暮れと海』!」



夕日のような橙色と、海の暗い青が溶け合うワンピース。これも素敵。



「夕暮れ時のメグミさんの美しさを知る者なら、この服を選ぶはずです」



さらっと照れることを言うハロさん、反則だよ……!



「ラスト、エントリーNo.6、バンさん! 作品名は『高貴なる女王』!」



一目でわかる豪華さ。ワンピースにはフリルがあしらわれ、何より美しいのは濃淡の紫で染め分けられた生地。まさに高貴って感じ。でも私が着るにはちょっと大げさかも……?



「この色こそがメグミにふさわしい。美の天啓が私にあったのだ!」



バンさんの自信、すごい。



「それではカニの皆さん、自分が一番良いと思った作品に小石を置いてくださ~い!」



ドドドドド……! 投票が始まった。



「集計が終わりましたので、結果発表です! 優勝は……バンさんの『高貴なる女王』!」



「やったーーーーー!! やっぱり私が一番美しさをわかっていたのだーーーー!!」



バンさん、大興奮。



「では総評を、ガザ爺お願いします」



「ふむ、どの作品もメグミが着れば最高の服じゃった。中でもバンさんの作品が選ばれた理由は、名は体を表すという点じゃ。『女王』という名にふさわしい優美さ、そして皆が無意識にメグミをこの集団の“女王”と見ておる証拠でもあるのじゃよ」



「ガザ爺、ありがとうございました!」



「それではメグミからも、一言!」



「えっと……みんなが作ってくれた服は、ちゃんと全部着ます。大切にします。本当にありがとう……。うれしくて……胸がいっぱいです」



「メグミ! 泣いてるの?」



「ミコちゃん、これは嬉し涙ってやつだよ。みんな、本当に大好き!」



ウオオオオオオ!!!



歓声とともに、たくさんのカニさんたちが私に突撃してくる――



こうして、大盛況の中「カニコレ」は幕を閉じたのだった。
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