浜辺のスローライフ~カニさんたちとの異世界生活日誌~

かにすごくうまい

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75話:浜辺の徹くん

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異世界生活七十日目



朝ごはんを食べて、ホールを出ると浜辺に銀色の光が反射して見える。



先日、運動会の後、しばらく滞在すると言っていた徹くんだ。



「徹くん、朝ごはんは食べた?」



「メグミか、俺くらいになると、周囲の魔力を吸収するだけで特に食わなくても大丈夫なんだ」



「えー、じゃあ何も食べないの?」



「食べても、もう進化しないからな。必要性を感じない」



「そっか、おにぎり握ってきたけど、余計なお世話だったかな」



「いや、必要性を感じないだけで食べられないわけじゃないぞ!見せてみろ」



「うん、まだお米は栽培中だから自作じゃないけど、味付けのお塩は自家製だよ!」



徹くんは小さい方のハサミで器用に小さいおにぎりを摘まむ。



モシャモシャ。



「どうかな?しょっぱかったりしない?」



「……うまい!!、コメを食べたのは、かれこれ何百年ぶりだぞ!!」



「そんなに!?」



「カニになってから、進化のために倒した獲物しか食べてなかったからな。そもそもハサミで料理とかできないしよ!」



「そうなんだ……わたしだったら耐えられないと思う」



「食事を楽しむなんて感覚自体なくなってたからな。やっぱ日本人には米だよな!」



「ふふふ、そこはみんな同じだよね。勝さんにも食べてもらえばよかったな……いつもすぐ帰っちゃうから」



「あ?勝?ああ、いい、いい、あいつは割と人間と仲良くやってるから、俺ほど感動しないし、メグミの労力の無駄だ」



「ん~そうかなあ。まあお米があって、人がいるなら、おむすびくらい食べれるのかな」



「そんなもんだ、メグミの手料理は俺だけに振舞えばいい」



「料理……そうだ!徹くんの体って鉄でできてるんだよね?お鍋にできない?」



「いきなり何を言い出すんだ!俺の体は鉄ぽいけど、厳密には鉄じゃねえというか、人の体で料理しようとするな!鉄ぐらいその辺に落ちてるだろ!」



「えっとね、わたし達一応ガラスは作れるんだけど、鉄は見当たらないしそもそも鉄って凄く高い温度じゃないと溶かせないから火力が足りなくて……」



「なんだ、そんなことか。鉄だったら海に沢山沈んでるからそれを集めりゃいい。結構深いとこになるからキワミくんたちを使え。火力の問題は俺が解決してやるから心配するな」



「海に鉄が?」



「厳密に言うと沈めた戦艦の装甲に使われてる合金だな。めちゃめちゃがんじょうだから鍋にしたら長持ちするだろ。で、話は聞いてたなキワミくん。海中から残骸を拾ってこい」



「承知しました。ズワイタウン一同で素早くサルベージしてきます」



「キワミくんもいたんだ……」



「徹様は、大体雑用を私にやらせるので、滞在しておりました。ちょうど冷水プールがありましたので助かりました」



「サルベージには、アッシーくんも連れてってあげてくれていいかな?」



「ええ。彼の長いハサミは非常に役立つでしょうし、助かります」



「気を付けていってきてね!」



「がんばる…」



「吉報をお待ちください」



「ちなみに、徹くんが自分で行った方が早かったりしない?」



「早いぞ。だが俺が何でもやってしまってはな、ズワイガニどもは労働させて鍛えないと」



「ス、スパルタなんだね」



しばらくしてキワミくん達が帰ってきた。



ズシン、ズシン。



黒光りする金属板が何枚も砂浜に置かれる。



「ただいま戻りました。これくらいでよろしいでしょうか?」



「お鍋づくりに必要だっただけだから、ばっちりだと思う」



「がんばった…」



「アッシーくんもありがとう。当分鉄には困らないと思う!」



「さて、それじゃあ溶鉱炉はどこだ?」



「……まだ……ない……」



「ガラス用の奴の転用でいいだろ」



「熱に耐えられるかな……」



「物は試しだ!とりあえず装甲板は丸めるか」



頑丈そうな金属板があっという間に丸められて小さくなった。



こんなに簡単に加工できるんじゃ戦艦側はたまったものじゃないだろうなあ。



わたしは徹くんを伴って窯業エリアに向かうのであった。
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