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懺悔室行き

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視察団の方々は無事いらして、食事も喜んでくださった。
何日か滞在することになり、それ自体は良かったのだけれど、つまりそれは私がなにもかもうまく出来ないところを見られてしまうかもしれない危険もあるわけで……。
視察団の方々が滞在される間、私はできるだけ会わないように仕事をすることを神殿長に命じられた。

「はぁ、やっとできた」
疲れた。
今日も魔晶石に半日かけて注入をして、神殿長の部屋に向かう。
どうか誰にも会いませんように。

「あれ、君、どうしたの?」
「は、はいぃぃ」
通路の死角から声をかけられてつい変な声が出てしまった。
「あ、すみません、魔晶石を神殿長に届けに。し、失礼します!」
つい振り切ってしまったけれど失礼じゃなかったかな。



ああ、またやってしまった。
魔晶石を渡すときは神殿長の機嫌のいい時、と決めているけれど時々いきなり機嫌が悪くなる時がある。
「いつも通りしばらく懺悔室に籠ってこい。夕食は抜きだ。出ていけ偽聖女め」
「はい、申し訳ありません」
ここで言い募ると明日の朝まで抜かれて、ひどい時には罰として次の日は先輩方の分の仕事も全部こなすように言われたりする。
だから何を言われても懺悔室まではこらえていなければいけない。
ああ、今日の夕食、貴重なお菓子が食べられたのにな。

「おやおや、また会ったね。これからどこへ行くんだい?」
とぼとぼと歩いていると、先ほどの方がにこやかに立っていました。
「さ、先ほどは失礼しました!え、えっと、粗相をしてしまいましたので懺悔室へと」
はずかしい、こんなところをお見せしてしまうなんて‼
「ああ、懺悔室か。いいね、僕もつれていってよ。ああ、僕は王都研究所職員のスピカ。ちょっと僕も行きたくてね」
「それでは、こちらです」
自分から懺悔室に行きたいだなんて不思議な人だ。
でも、少しの間でも一人じゃないなら、少しは気が楽かもしれない。
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