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第8話
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その後、当然ながら電器屋のバイトはクビになった。
僕らは境界軍から、第一部隊の襲撃に備え、指示があるまで待機するように言われた。
ただ待っているだけでいるのも良くないと思って、僕たちも独自に魔法軍のことを調査をしたり、魔法の練習をしたりすることにした。
僕が新しい魔法の練習でもしようかと、店にある魔法書を読み漁っていたときだった。
トントン。
と、ノックの音がする。
僕は手に取っていた魔法書を本棚に押し込んで玄関に向かい、ドアを開けた。
「本日は休業日ですが……」
そう言いかけて、お客さんの顔を見る。
スタイル抜群のポニーテールの少女だった。
「なんだ、じろじろ見て。私のことをもう忘れてしまったのか?ユートピア魔法軍第三部隊隊長のアレクトだ」
「いえ、もちろん覚えてますけど……突然の訪問だったので驚いてしまって。とりあえず中へどうぞ」
彼女を事務所に案内し、紅茶とクッキーをテーブルにそっと置いた。
「うん。座り心地の良いソファーだな。紅茶も美味い」
「ありがとうございます。あの……隊長さん……」
「アレクトと呼んでくれていいぞ」
「アレクトは……、第二部隊のところにいたんじゃないんですか?」
「外出が許可されたんでな」
「魔法屋に何か用があって来たんですよね?今、ルシフを呼んできますよ。多分、地下室に……」
僕が店主を呼びに行こうとすると、アレクトは僕の腕を掴んで引き留めた。
「いや、構わない。君に話をしに来たんだ」
「僕に……?ルシフじゃなくて……?」
僕は不思議に思いながら、テーブルを挟んでアレクトの正面に座った。
アレクトは僕の手を取ってぎゅっと握った。
「君の強さに惚れた。私のものになってくれないか」
それって……もしや、僕の契約者になりたいってこと……?
戸惑いながらアレクトの手を引き離す。
「お気持ちは嬉しいですけど、ごめんなさい。僕は既に契約済なので……」
「私と結婚してくれ」
……!?
「け、けけ、け、結婚っ!!!?」
僕は動揺しすぎて思わず声が裏返ってしまった。
「どうした、ベル。騒がしいな……」
ルシフが不機嫌そうに地下室から出て来た。
「ルシフ!!」
僕はルシフの肩を掴んで揺さぶった。
「結婚ってあの結婚ですか!!永遠の愛を誓い合うあの結婚ですか!!」
「は?何だ急に……。ケッコン?血痕は、事件の現場とかに残されてるやつだ」
「それは血痕だろ!!その血痕じゃなくて、彼女は結婚の話をしてるんだから、僕が言いたいのは血痕じゃなくて結婚のことで……あれ?どっちのケッコンだっけ!?」
「落ち着け、ベル。深呼吸しろ」
僕はルシフに言われた通りに大きく深呼吸する。
そして、アレクトの方に歩み寄って告げた。
「ま、まずは、お友達からお願いします……」
ルシフがソファーに腰掛けてクッキーを手に取りながら、ボソッと
「無難な返事だな」
と言う。
アレクトは僕の返事に対して、くすっと笑った。
「そりゃあ、いきなり結婚なんて言われても困るよな。無茶言って悪かった」
「僕の方こそ取り乱してすみません……」
とりあえずお友達から、ということで落ち着いたところに、
「お姉ちゃん!」
と店にティシポネとメガイラがやって来た。
「ここにいたのね。捜したわよ……」
その瞬間、ティシポネはルシフと目が合って顔を赤らめた。すごくピュアだな、この娘……。
「ここが魔法屋かぁ……。男二人暮らしの家なんて、腐女子の血が騒ぎますねー。寝室覗いてきていいっすか?」
こいつには今すぐ帰って欲しい。
「ね、ねえ……」
ティシポネがルシフに声をかける。
だけど、ルシフは気づかずぼんやりアレクトの方を見つめながらクッキーを食っている。
「ねえ、ちょっと……。ねえってば!」
「ルシフ、呼ばれてますよ」
僕がルシフの手からクッキーを奪い取ると、ようやくルシフは反応を示した。
「ああ、悪い。気がつかなかった」
「あんた、何、お姉ちゃんの方ばっかり見てんのよ。お姉ちゃんのこと、好きなの?」
「あ?ちげーよ。お前の姉ちゃんを見てた訳じゃない」
ルシフが面倒くさそうに言うのを聞いて、ティシポネは少しほっとしたような表情を浮かべた。
しかし、ルシフは真顔で余計な一言を言い放った。
「俺はただ……お前の姉ちゃんの巨乳を見てただけだ」
……。
「変態!!」
ティシポネがルシフの顔面をぶん殴る。
ルシフは勢いよくソファーごとひっくり返った。
「ん?何事だ?」
アレクトはちょうど紅茶を飲んでいてルシフとティシポネのやり取りを全く聞いていなかったようだ。
「ルシフ、今のはセクハラですよ。謝ってください」
僕がたしなめる。
「そうだな……。すまん、ティシポネ」
「き、気安く呼び捨てにしないでよっ!!」
ティシポネがルシフの顔面をもう一発ぶん殴った。
「鼻血が止まんねぇ……」
うずくまるルシフに僕は
「はい、鼻セレブです」
と箱ティッシュを差し出す。
「ベル君は気が利くなぁ。素敵だ。やはり私と結婚してくれ」
アレクトがまた僕の手を握る。
「えぇ……?さっきお友達からでって言ったばっかりじゃないですか……」
「お姉ちゃんがベル先輩に付け入る隙なんかあるわけないでしょー。ベル先輩には愛しいルシフ先輩がいるんすから!」
メガイラが割り込んでくる。
「いや、ルシフを愛しいと思ったことなんて一度もありませんけど」
「いやいや、ほんとは毎日イチャついてるに決まってるっすよ!」
「イチャついてません!!」
「嘘でしょ……。あんたたちって、そんなふしだらな関係だったの……?」
ティシポネが超ショックを受けた顔で言う。
「嘘ですよ!!信じちゃダメです!!」
「ベル……」
ルシフが僕の服を掴んで呼び止める。
「鼻血が全然止まらん……。俺、このまま失血死するのかもしれない」
「治癒魔法使えよ!!」
ああもう突っ込みが追いつかない!!
僕らは境界軍から、第一部隊の襲撃に備え、指示があるまで待機するように言われた。
ただ待っているだけでいるのも良くないと思って、僕たちも独自に魔法軍のことを調査をしたり、魔法の練習をしたりすることにした。
僕が新しい魔法の練習でもしようかと、店にある魔法書を読み漁っていたときだった。
トントン。
と、ノックの音がする。
僕は手に取っていた魔法書を本棚に押し込んで玄関に向かい、ドアを開けた。
「本日は休業日ですが……」
そう言いかけて、お客さんの顔を見る。
スタイル抜群のポニーテールの少女だった。
「なんだ、じろじろ見て。私のことをもう忘れてしまったのか?ユートピア魔法軍第三部隊隊長のアレクトだ」
「いえ、もちろん覚えてますけど……突然の訪問だったので驚いてしまって。とりあえず中へどうぞ」
彼女を事務所に案内し、紅茶とクッキーをテーブルにそっと置いた。
「うん。座り心地の良いソファーだな。紅茶も美味い」
「ありがとうございます。あの……隊長さん……」
「アレクトと呼んでくれていいぞ」
「アレクトは……、第二部隊のところにいたんじゃないんですか?」
「外出が許可されたんでな」
「魔法屋に何か用があって来たんですよね?今、ルシフを呼んできますよ。多分、地下室に……」
僕が店主を呼びに行こうとすると、アレクトは僕の腕を掴んで引き留めた。
「いや、構わない。君に話をしに来たんだ」
「僕に……?ルシフじゃなくて……?」
僕は不思議に思いながら、テーブルを挟んでアレクトの正面に座った。
アレクトは僕の手を取ってぎゅっと握った。
「君の強さに惚れた。私のものになってくれないか」
それって……もしや、僕の契約者になりたいってこと……?
戸惑いながらアレクトの手を引き離す。
「お気持ちは嬉しいですけど、ごめんなさい。僕は既に契約済なので……」
「私と結婚してくれ」
……!?
「け、けけ、け、結婚っ!!!?」
僕は動揺しすぎて思わず声が裏返ってしまった。
「どうした、ベル。騒がしいな……」
ルシフが不機嫌そうに地下室から出て来た。
「ルシフ!!」
僕はルシフの肩を掴んで揺さぶった。
「結婚ってあの結婚ですか!!永遠の愛を誓い合うあの結婚ですか!!」
「は?何だ急に……。ケッコン?血痕は、事件の現場とかに残されてるやつだ」
「それは血痕だろ!!その血痕じゃなくて、彼女は結婚の話をしてるんだから、僕が言いたいのは血痕じゃなくて結婚のことで……あれ?どっちのケッコンだっけ!?」
「落ち着け、ベル。深呼吸しろ」
僕はルシフに言われた通りに大きく深呼吸する。
そして、アレクトの方に歩み寄って告げた。
「ま、まずは、お友達からお願いします……」
ルシフがソファーに腰掛けてクッキーを手に取りながら、ボソッと
「無難な返事だな」
と言う。
アレクトは僕の返事に対して、くすっと笑った。
「そりゃあ、いきなり結婚なんて言われても困るよな。無茶言って悪かった」
「僕の方こそ取り乱してすみません……」
とりあえずお友達から、ということで落ち着いたところに、
「お姉ちゃん!」
と店にティシポネとメガイラがやって来た。
「ここにいたのね。捜したわよ……」
その瞬間、ティシポネはルシフと目が合って顔を赤らめた。すごくピュアだな、この娘……。
「ここが魔法屋かぁ……。男二人暮らしの家なんて、腐女子の血が騒ぎますねー。寝室覗いてきていいっすか?」
こいつには今すぐ帰って欲しい。
「ね、ねえ……」
ティシポネがルシフに声をかける。
だけど、ルシフは気づかずぼんやりアレクトの方を見つめながらクッキーを食っている。
「ねえ、ちょっと……。ねえってば!」
「ルシフ、呼ばれてますよ」
僕がルシフの手からクッキーを奪い取ると、ようやくルシフは反応を示した。
「ああ、悪い。気がつかなかった」
「あんた、何、お姉ちゃんの方ばっかり見てんのよ。お姉ちゃんのこと、好きなの?」
「あ?ちげーよ。お前の姉ちゃんを見てた訳じゃない」
ルシフが面倒くさそうに言うのを聞いて、ティシポネは少しほっとしたような表情を浮かべた。
しかし、ルシフは真顔で余計な一言を言い放った。
「俺はただ……お前の姉ちゃんの巨乳を見てただけだ」
……。
「変態!!」
ティシポネがルシフの顔面をぶん殴る。
ルシフは勢いよくソファーごとひっくり返った。
「ん?何事だ?」
アレクトはちょうど紅茶を飲んでいてルシフとティシポネのやり取りを全く聞いていなかったようだ。
「ルシフ、今のはセクハラですよ。謝ってください」
僕がたしなめる。
「そうだな……。すまん、ティシポネ」
「き、気安く呼び捨てにしないでよっ!!」
ティシポネがルシフの顔面をもう一発ぶん殴った。
「鼻血が止まんねぇ……」
うずくまるルシフに僕は
「はい、鼻セレブです」
と箱ティッシュを差し出す。
「ベル君は気が利くなぁ。素敵だ。やはり私と結婚してくれ」
アレクトがまた僕の手を握る。
「えぇ……?さっきお友達からでって言ったばっかりじゃないですか……」
「お姉ちゃんがベル先輩に付け入る隙なんかあるわけないでしょー。ベル先輩には愛しいルシフ先輩がいるんすから!」
メガイラが割り込んでくる。
「いや、ルシフを愛しいと思ったことなんて一度もありませんけど」
「いやいや、ほんとは毎日イチャついてるに決まってるっすよ!」
「イチャついてません!!」
「嘘でしょ……。あんたたちって、そんなふしだらな関係だったの……?」
ティシポネが超ショックを受けた顔で言う。
「嘘ですよ!!信じちゃダメです!!」
「ベル……」
ルシフが僕の服を掴んで呼び止める。
「鼻血が全然止まらん……。俺、このまま失血死するのかもしれない」
「治癒魔法使えよ!!」
ああもう突っ込みが追いつかない!!
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