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外へ出たフィオナは、はぁっとため息をもらす。
旦那様に握られた手の温もりがまだ残っている。
このままではいけない。
自身の荒れた手を見て、先程のメアリー達のことが頭をよぎる。
彼女達の肌や手や髪質、そのどれもが自分なんかよりもはるかに綺麗だった。
仕方のないことですね。
ライアンが無事に一人立ちしたら、貴族籍から離れて、庶民として働いて生きて行くしかないかもしれません。
ライアンが結婚して家庭を持ったら、私の存在は邪魔になる。
ライアンにはルブラン家を建て直してもらいたい。
その頃の自分の年齢を考えると、結婚相手を探すのも、持参金のことも、ライアンの負担にしかならない。
それに、こんな荒れた手や、少し筋肉のついた腕……
「はぁ……」
今までおしゃれなどに興味を持たないように、抑制していたけれど、やっぱり綺麗に着飾って舞踏会にも参加してみたかった。
旦那様と一緒に参加できたなら、きっと一生の思い出になるでしょう。
自分の中に、まだそんな乙女心が残っていたことに戸惑うフィオナ。
ほんのりと芽生えてきたこの淡い恋心も、これ以上大きくなる前に忘れないといけません。
肩を落とし歩いていると、囁くような声が聞こえる。
「ティナ、ティナ、クリスティナ!」
フィオナはキョロキョロと辺りを見回すと、木の陰に隠れるように佇む人物を見つける。
庶民の男性がよく着ているシャツにパンツというスタイルで、帽子を深く被っており、手まねきしている。
「どなたですか?」
フィオナは警戒しつつ、その人物に声をかける。
その人物は顔全体がフィオナに見えるように、帽子を少し持ちあげた。
「っ! フィオ姉様!」
その人物は、「しー!」っと口の前に人差し指を立てて、声を抑えるように合図をする。
フィオナは周囲に誰もいないことを確認すると、急いでフィオーリの側に駆け寄った。
「クリスティナ‼︎ 」
フィオーリはガバリとクリスティナを抱きしめる。
「フィオ姉様、説明してください! というか、大変ですっ、人違いかもしれません」
「どういうこと?」
きょとんと首をかしげるフィオーリに、フィオナは今までの経緯を説明した。
「なるほどねー。どうりで、お会いした記憶がないはずだわ。じゃあ、ティナはどこで見初められたの?ねぇねぇ、詳しくおしえて。 というか、ティナ、あなた、ケチったのね?
髪色が……ふふふ、なんだか、昔を思い出すわね。よくこんな風に入れ替わって遊んでいたわね。
いけないっ、あなたに依頼料を渡すのを忘れていたわ。うっかりしていて、ごめんなさい。
これを、受け取って。
でも、間違いだったのなら、あなたがカミングアウトしたら、全て解決ね。
嬉しい!」
フィオーリは満面の笑みを浮かべて、ポケットから小袋を取り出すと、クリスティナの手に持たせる。
ずしりとした重みにフィオナは動揺する。
「これは?」
そっと中を覗くと金貨が詰まっていた。
「姉様? ど、ど、どうしたのですこんな大金?受け取れませんっ」
フィオナはフィオーリに慌てて押し返した。
「いいのよ、これは依頼料含めて、迷惑料、受け取って」
「意味がわかりません!」
返そうとするフィオナと、渡そうとするフィオーリ。 何度も繰り返すうちに手が滑り地面に小袋が落ちてしまう。
ジャランと金貨が小袋から溢れる。
二人で慌てて拾い集めると、フィオーリはフィオナに押しつけた。
パキッと枝を踏む音が聞こえてくる。
「誰か来るわ。もう帰るわね、ティナごめんね!でも、ロシュフォール伯爵様のお相手が私ではなくて本当に良かった‼︎手紙が入っているから読んでね」
「ちょっと、待って」
フィオーリは素早く立ち去って行く。
帽子からはわずかに金髪が垣間見える。
姉様、髪色は染めていないのですね。
フィオナは無理矢理渡された小袋を手に持ったまま、その姿を見送っていた。
旦那様に握られた手の温もりがまだ残っている。
このままではいけない。
自身の荒れた手を見て、先程のメアリー達のことが頭をよぎる。
彼女達の肌や手や髪質、そのどれもが自分なんかよりもはるかに綺麗だった。
仕方のないことですね。
ライアンが無事に一人立ちしたら、貴族籍から離れて、庶民として働いて生きて行くしかないかもしれません。
ライアンが結婚して家庭を持ったら、私の存在は邪魔になる。
ライアンにはルブラン家を建て直してもらいたい。
その頃の自分の年齢を考えると、結婚相手を探すのも、持参金のことも、ライアンの負担にしかならない。
それに、こんな荒れた手や、少し筋肉のついた腕……
「はぁ……」
今までおしゃれなどに興味を持たないように、抑制していたけれど、やっぱり綺麗に着飾って舞踏会にも参加してみたかった。
旦那様と一緒に参加できたなら、きっと一生の思い出になるでしょう。
自分の中に、まだそんな乙女心が残っていたことに戸惑うフィオナ。
ほんのりと芽生えてきたこの淡い恋心も、これ以上大きくなる前に忘れないといけません。
肩を落とし歩いていると、囁くような声が聞こえる。
「ティナ、ティナ、クリスティナ!」
フィオナはキョロキョロと辺りを見回すと、木の陰に隠れるように佇む人物を見つける。
庶民の男性がよく着ているシャツにパンツというスタイルで、帽子を深く被っており、手まねきしている。
「どなたですか?」
フィオナは警戒しつつ、その人物に声をかける。
その人物は顔全体がフィオナに見えるように、帽子を少し持ちあげた。
「っ! フィオ姉様!」
その人物は、「しー!」っと口の前に人差し指を立てて、声を抑えるように合図をする。
フィオナは周囲に誰もいないことを確認すると、急いでフィオーリの側に駆け寄った。
「クリスティナ‼︎ 」
フィオーリはガバリとクリスティナを抱きしめる。
「フィオ姉様、説明してください! というか、大変ですっ、人違いかもしれません」
「どういうこと?」
きょとんと首をかしげるフィオーリに、フィオナは今までの経緯を説明した。
「なるほどねー。どうりで、お会いした記憶がないはずだわ。じゃあ、ティナはどこで見初められたの?ねぇねぇ、詳しくおしえて。 というか、ティナ、あなた、ケチったのね?
髪色が……ふふふ、なんだか、昔を思い出すわね。よくこんな風に入れ替わって遊んでいたわね。
いけないっ、あなたに依頼料を渡すのを忘れていたわ。うっかりしていて、ごめんなさい。
これを、受け取って。
でも、間違いだったのなら、あなたがカミングアウトしたら、全て解決ね。
嬉しい!」
フィオーリは満面の笑みを浮かべて、ポケットから小袋を取り出すと、クリスティナの手に持たせる。
ずしりとした重みにフィオナは動揺する。
「これは?」
そっと中を覗くと金貨が詰まっていた。
「姉様? ど、ど、どうしたのですこんな大金?受け取れませんっ」
フィオナはフィオーリに慌てて押し返した。
「いいのよ、これは依頼料含めて、迷惑料、受け取って」
「意味がわかりません!」
返そうとするフィオナと、渡そうとするフィオーリ。 何度も繰り返すうちに手が滑り地面に小袋が落ちてしまう。
ジャランと金貨が小袋から溢れる。
二人で慌てて拾い集めると、フィオーリはフィオナに押しつけた。
パキッと枝を踏む音が聞こえてくる。
「誰か来るわ。もう帰るわね、ティナごめんね!でも、ロシュフォール伯爵様のお相手が私ではなくて本当に良かった‼︎手紙が入っているから読んでね」
「ちょっと、待って」
フィオーリは素早く立ち去って行く。
帽子からはわずかに金髪が垣間見える。
姉様、髪色は染めていないのですね。
フィオナは無理矢理渡された小袋を手に持ったまま、その姿を見送っていた。
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