「この結婚はなかったことにしてほしい、お互いのためだ」と言われましたが……ごめんなさい!私は代役です

涙乃(るの)

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アランとルークは庶民の服装を身に纏い食堂へとやってきた。

「アラン様、どうやらいらっしゃらないようですね」

「ルーク、とりあえず中に入ろう」


「いらっしゃいませ、2名様ですね、空いている席へどうぞ」

厨房の奥から元気な女将の声が響く。

ルークは手を上げて、女性の店員を呼ぶ

「ご注文はお決まりですか?」

スラリとした背の高い女性だった。
「少し尋ねたいことがあるのだが、ここにクリスティナという女性が働いていないだろうか? ダークブラウンの髪をした綺麗な女性で、双子の姉妹がいる」

「あぁ、ティナのこと? もしかしてあなた達もティナ狙い? ほんっと困るんだよね、うちの大事なティナにちょっかいださないでくれる? 客じゃないならほらさっさと帰った帰った! 女将さーん、ちょっときてくださーい」

「いや、私たちは怪しい者ではない」

女性は奥から女将と主人を連れて来る。

「お客さん、確かにティナは可愛いし、声をかけたくなるのも分かるよ。だけど、あの子はうちの大事な看板娘なんだ、帰っておくれ、あんた、後は頼んだよ」

「お二人共、出口までご案内します!」

「失礼ですよ、あなた方、」

「ルーク、待て。 驚かせてすまない、実は、私も彼女のことが心配で、様子を見にきたのです。今日はいらっしゃらないのでしょうか?」

「あんたに答える義理はないよ、さっさと帰った。」

アランは、おもむろに白紙小切手を取り出し提示する。

「彼女のことを大切に想ってくれる方達がいて、安心しました。どうか彼女のことをこれからも見守ってください。この店の安全面も考慮して、私に出資させてください。」

「あんた、馬鹿にしてるのかい? お金をちらつかせてあの子に手を出すなんて許さないよ!」

「そんなつもりは毛頭ありません。どうか検討をお願いします。騎士の巡回を増やし護衛を派遣しましょう。酔っ払いの諍いに手を焼く心配もなくなりますよ、また来ます。」


アランは真摯な姿勢で皆に向き合い頭を下げた。

ルークと共に食堂をでた足で、フィオーリの勤める花屋に向かう。

交渉の結果、食堂、花屋とその付近一帯はロシュフォール伯爵がオーナーとなった。



「給料含めて、治安も良好になることが予想されますね。アラン様、少しやり過ぎではありませんか?」

「何を言う!彼女達の為ならば、街ごと国ごと買い取る覚悟もある」


「そうですか、しかし、クリスティナ様とはお会いできませんでしたね、アラン様⁉︎ はぁ、また、その時なのですね」

今までそこにいたはずのアランが、忽然と姿を消していた。
しかし、ルークは動揺することはなかった。

今度は、いつ戻ってくるのでしょうね?

と、慣れた様子で、ただ深くため息を漏らすのだった。
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