なぜか軟禁されてました〜脇役はどうしたらいいですか〜

涙乃(るの)

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第一部

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また一日が始まる。

ただ過ごすだけの日々。

私の存在になんの意味があるのだろうか。


物心ついた頃から、私はずっと一人で暮らしている。

 

幼い頃誰かにそう呼ばれていた気がする。
今は、誰からも呼ばれることはないけれど。

多分それが私の名前だと思う。

あの頃は、誰かが側にいたような気がする。いつ頃一人になってしまったのか、どうしてその誰かがいなくなってしまったのか、その辺りの記憶は曖昧だった。思い出そうとしても、頭の中にモヤがかかった感じがして、どうしても分からなかった。
まるで無理矢理忘れようとしたみたいに…
 
悲しい記憶の予感がするので、過去を振り返ることは放棄している。


 

家の周囲を見渡しても、目に入るのは木ばかり。

いったいここがどこなのかも、今日がいつなのかも分からない。

この状態で育っていたら、普通なら平静ではいられないと思う。

でも、私は、何となく自分の状況を把握している。

多分、ここは、前世で流行った乙女ゲームの世界だと思うから。

先日、どこから飛ばされてきたのか、偶然ビラのようなものを見つけた。
こんな所に珍しいこともあるなと、ふと手に取ると、文字が書かれていた。


そのビラの内容は、この国の第一王子の婚約発表だった。

『!』

その瞬間、頭に衝撃を受けた感じがした。

色々な情報が、走馬灯のように駆け巡り、

前世の記憶を思い出した。

そうか、ここは…

の世界。

乙女ゲームキミのために

題名の通り、ヒロインの為にとにかく周囲が尽くすというゲームだ。

ヒロインは、少し傾きかけた貴族の娘マリア。
庇護欲をかきたてるヒロインで、とにかくいい娘。

対する悪役令嬢ポジションは王子の婚約者エリザベス。
父親の権力を駆使して婚約者の座に収まっていた。 
エリザベスは、甘やかされて育ったせいか、とてもわがままな令嬢だった。ヒロインを陰でいじめまくっていた。
事あるごとに、マリア嬢を罵倒し、取り巻きと思われる令嬢達と嫌がらせを繰り返していた。

ところが、偶然その現場を王子に目撃されて、今までの悪事が露見することとなり、あっさりと婚約破棄される。そして、めでたくヒロインと王子は結婚する、というストーリーだ。

そのゲームの中で、マリア嬢は、婚約中に王子とお忍びでデートをしていた。
途中、王子とはぐれてしまい、マリア嬢
は森に迷い込むことになる。


その森の中で、マリア嬢は、ひっそりと佇む古びた家を発見する。

そこには、理由も分からず、ずっと軟禁されている娘がいた。優しいマリア嬢はその娘の境遇を嘆き、彼女を何とか助けたいと思っていた。

ちょうどそこへマリア嬢を必死に捜す王子が辿り着く。
マリア嬢の無事な姿に安心した王子は、マリア嬢の願いを聞き入れて、軟禁された娘を解放することに尽力した。

王子はマリア嬢の優しさにますます惹かれた。マリア嬢も、軟禁された娘を解放すべく力を尽くす王子に、ますます惹かれた。

二人の距離が近づくエピソードだった。

ただ、軟禁の理由が分からないとか雑な設定…

と思わず笑った事を覚えている。

特に気にも留めていなかったけれど。

この軟禁されている娘というのが、今の私だと思う。

よりによって、詳しい説明のない脇役に転生してしまうなんて…。


でも、きっと、もうすぐヒロインがやってくるはず。

自由までもう少し。






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