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「それで?

具体的にどのように改めるのか

聞かせてもらおうか」


アーサー様は紅茶を一口飲むと私に向かって質問を始めた。


『え?具体的にとおっしゃられますと?』

「はぁ…

まさか、何も考えずにここへ来たのか?」


アーサー様の眉間には皺が寄っていた。

『そう言われましても…
私は呼び出されたので、来たまでですし。』

「お前はこの3日間、何をしていたの

だ?3日もあれば、今後の行動リストを作

成して私に持ってくるのが普通であろ

う。城の者であれば次の日に持ってくる

ぞ」


『そ、そうですか…とても優秀な方達です

のね。私にはとても出来かねます。』

ードンッー

『ヒィッ。アーサー様、テーブルを叩くの

はおやめください』

「私に指図するのか?

いいだろう。お前は何も出来ない事は承

知している。時間がないのは分かる

な?」


私は怯えながら頷く。

「それでだ。最低限、婚約者としてお前

に必要な事を考えてきた。」

『そ、そうですか。必要な事?』


「よいか。

まずは、

感謝の気持ちだ。そして思いやり

だ。まぁ優しさだな。そして最後は愛情

だ。愛のない生活は耐えられないからな。

復唱してみろ」

『へ?』

「はぁ。記憶力も悪いのか。感謝、思いや

り、愛情だ。繰り返せ」


『えっと、感謝、それと、お、思いやり、

愛情…      』


 ん、愛情…?


「とりあえず感謝の気持ちを表現すること

から初めてみろ。」


『え?その、どのように…したらよいので

しょう?』

アーサー様の眉間の皺が深まる。

「まずは、私への感謝から。」

『えっと。 アーサー様への感謝…

その…本日は、本日も?

貴重なお時間を頂きありがとうございまし

た』

ーピキッー

空気が氷のように張り詰めた気がする。

「そうじゃない。

私がお前の婚約者であることへの感謝

だ」

『えっ?
あの、感謝できません』

しまった。つい本音が。

「嘘でもいいから言え。言い終わるまで帰

れないものと思え」

『えっ、そんな。嘘でも?』

アーサー様はじっと見つめてくる。
視線が怖い…
もう帰りたい…仕方ないので、心にも思ってないことを言うことにした。

『アーサー様が婚約者で嬉しいです。

アーサー様には感謝しています』

棒読みになっているのが自分でも分かったけど、なんとか言い切った。するとアーサー様は、急に笑顔になった。

『!』

「そうか。そんなに嬉しいか。

では、帰ってもいいぞ。周囲の者達へも

感謝の気持ちをわすれないように。」


そう言って、部屋を出て行かれた。

どういうこと?
呆然とする中、私は室内へと入って来た侍女によって現実へと引き戻された。


一体アーサー様は何を考えているのだろう。











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