私を忘れないで〜アンソロジー〜

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この国では女性は20歳までに結婚を義務づけられている。魔力の暴走を防ぐ為に子供を産み、魔力を分散させて安定させる為だそうだ。

学園を16歳で卒業してから結婚適齢期となる。卒業してすぐに結婚する女性も珍しくない。私は明日で17歳になる。まだ20歳まで3年もある。できればもう少しこのまま…

でもそれは私のわがままだとは分かってる。
きっとジャンもいつかは誰かと結婚をする。
でも、他の誰かと一緒の所なんて見たくないわ。

「お嬢様、旦那様がお呼びです。」


「えぇ。分かったわ。」

侍女に案内されて、私はお父様の待つ書斎へと足を運ぶ。

「お父様、お呼びでしょうか。」

「あぁ、フローラか。入りなさい」

「失礼致します。」

私は書斎へ入ると、父に勧められソファーへと腰を下ろした。

「フローラ、お前も明日で17歳だ。
分かっているとは思うが、そろそろ結婚せねばならない。それで明日は正式に婚約を発表する。相手は…」

「お父様!お待ち下さい。明日なのですか?20歳までまだ3年もあるではないですか」

私を戒めるように見つめる父に、それ以上の言葉は言えなかった。ただ黙って言葉を待つ。

「フローラ、お前の気持ちも分からないでもない。だから花屋に勤めたいという事も多目にはみた。
だがもうお遊びは終わりだ。いい加減大人になりなさい。

タラントン家の後継者としての自覚を持ちなさい。この家を私の代で終わらせるつもりか?
縁戚から跡継ぎを養子に迎えることも考えたが、私は出来れば自分の子供に任せたい。

フローラ、お相手はレイモンド・エルモア殿だ。エルモア伯爵家の次男だ。爵位も同等であり、何より婿養子の話を快諾してすれた。2人でタラントン家を守っていくのだ。いいな」

私は唇を噛み締めて、立ち上がると、挨拶もそこそこに部屋へと戻った。


明日、明日、?貴族として結婚は決められた方とするものだとは分かっていたわ。分かっていたけれど…


ジャン…

私は無造作にベッドに突っ伏した。
ついにその時がきたのね。

視界が歪み始める
分かっていたこととは言え、気持ちの整理がつかずに、涙が止まらなかった

シーツに小さな染みが出来ていく


タラントン家は男児に恵まれなかった。
その為私は婿養子を迎える必要がある。

ジャンは平民だ。伯爵家の婿になどあの父は認めないでしょう。

明日、夜には私の誕生日の夜会が開かれる。その時に婚約を発表するのでしょう。

夕方までに戻れば大丈夫ね。

最後にあなたにきちんとお別れを伝えさせて。


いつも、からかってごめんなさい











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