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家族

家族3

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「ごめんね、一人にして。
寂しかった?」

この家には俺と暮らしているのが一匹いる。
それがこの愛猫である。
可愛くてたまらない。
一匹の猫に一部屋分けているぐらいである。
今日はいつもより多めにご飯をあげようと、保管している棚に手を伸ばすと、

「あぁ!猫さんだ!!」

凛よ、いきなり大声はびっくりするからやめておくれ、
俺もこの子も。

聞くと早々にリタイアしたらしい。
理由は台座が無かった為。
まぁ俺基準だからな、この家は。
次の家に必要であったら買ってあげよう。


「猫さん、お名前は?」

「ココだよ。
あまり大きな声を出さずに優しくしてあげて?」


凛に目線を合わせて答えてあげると
先程の自分のやったことが悪い事だと思ったのかシュンとしてしまった。
その様子に多大なる罪悪感を抱いた俺は凛を慰めると、ココと妹と一緒にリビングに向かった。
ご飯あげるの忘れた、すまん。

ココは凄かった。
特に女子への影響力は凄まじい。
愛理は長女の威厳からかなんとか我慢しているように見えるが
里奈と凛と母さんは3人でココを愛でていた。
ん?母さん?あなたまで?


愛理が不憫に思えたので手伝ってあげた。
人と何かを行う事は俺には辛い。
愛理は普通に料理が出来る俺に驚いていたが、
まぁ一人暮らしみたいなものだし、
なにより外出が好きじゃないから自然となっただけである。
ちらちらと横目で見ている母さん、
気づいてるからな!


卒なくこなした料理であるが、
次の問題がある、そう食事である。
母さんと一緒に暮らしていたときでさえ、
億劫であったのだ。
一旦部屋に引っ込もうと考えたのだが、
母さんに止められてしまった。
・・・あきらめよう。

凛と母さんが元気であったこと以外には
厳かに進んでいた食事であった。
俺も含めて距離感に困っているのだ。
早く終わってほしいと願いながら、黙々と食事をしていたが
唐突に母さんが言い放った。


「しかし倫も大人になったのね。
一緒に住んでた頃なんてほとんど一緒に食べた事なんてなかったし
料理してるところなんて見たこともなかったのに。
いつの間にか成長して、母さん嬉しい。」


そういう事を言われると恥ずかしい。
ただその発言に愛理と里奈がこれから一緒に住む住民に興味を持って
母さんに俺の昔話を聞いてきたのだが


「今は知らないけど一緒に住んでた頃の倫は
男としての魅力は皆無ね。
ただのひきこもりだったし。」


母さん、俺も男だ。多少なりともかっこつけたいんだ。
少しは我が子の昔話に色をつけてもいいんじゃないか?
ただただ恥ずかしい思いをした食事であった。


「じゃあ母さん達帰るわね。
また明日来るわ。
といっても明日は平日だから、
来るのは母さんだけだけど。」


残念?とか聞くんじゃないよ母さん。
俺は無言で帰りと明日の分の交通費を乱暴に渡した。
母さんは語尾に音符でもつけているかのようなテンションで
お礼を言うと子供らを連れて去っていった。


「やっと終わった。」


ため息とともに気力が抜け落ちた。
明日は今日より現実的な話が色々あるがもう寝よう。
疲れた。


翌日


「いらっしゃい、母さん。」


昼前に来るのは早すぎないか、母よ。
俺は辛いよ。


「今日は昨日出来なかったお話も色々とね。」


相槌とともに家の中へ導いた。


「しっかしホントに立派になったものね。」


改めて感慨深げに少しのため息とともに吐き出した。


「たまたま書いてた小説が当たって運が良かっただけだよ。」


「本当に小説家になったんだ。」


「まぁなんとかね。
今はこれだけで食えるようにはなったよ。」


「でも稼げたなら、都心とかに引っ越せば良かったのに。
それこそ、私たちの近くとか。」


「人が多い所は好きじゃないから。
ここも担当の人が来られやすいように選んだだけで、
本当はもっと田舎が良かったんだよ。
別に不便に感じないし。
俺の事よりもあの子達の方が心配だよ。
一応妹だし・・・実感ないけど。」


「まぁねぇ。そういえば昨日言ってたけど、本当にお金は大丈夫?」


「贅沢しなかったら大丈夫だよ。
あの子達の学校教えて貰っていい?
住む場所考えないと。」


という事で親子の束の間の歓談は程々に、現実的なお話が始まった。
家もそうだし、あの子達の進路もそうだし、色々と準備することが多そうだ。
・・・俺ももうちょっと働くか。
そんなことを考えながら、主に決定事項であった凛の事について話合った。
年頃の妹ら二人は進学先によってどう転ぶか分からないから現状なんとも言えない。
それでも今考えていることを教えて貰わないとなぁ・・・
季節は秋、少し中途半端であった。


「それじゃあ次は、愛理を連れてくるわね?」


途中で昼食を挟んだが、そろそろ学校組が帰ってくることもあり
お開きの時間となった。
前回と同じく交通費を支給する。


「いちいち来るのもしんどいでしょ?
電話で済むなら電話でいいよ。
それか俺がそっち行くよ。」


「そんな気遣いいつから出来るようになったの?
お母さん嬉しいわ。」


反応が大げさなんだよなぁ。


「まぁこっちはあなた来づらいだろうし電話にするわ。」


嬉しい言葉に感謝の意を述べるのを最後に母さんは帰っていった。
正直、行きたくなかったから助かった。
・・・金も入用だし、あんまり話したくないけど電話するか。


「あ、もしもし倫ですけど。
お久しぶりです。
前回頂いたお話でご相談したい事がありまして・・・」


会話の相手のテンションの高さに
これからの生活が少し憂鬱となった倫であった。




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