貧乏辺境伯令嬢が拾った子犬は王子様でした。

ゆうひ

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 かつて辺境伯は平等にそれなりの力を有していた。それもそうだ、国を守ってもらう為に存在している辺境伯たちだが、そこに優劣をつけて謀反を起こされる、なんてことがあってはならない。
 しかし、いつしか任された領土の大きさや、土壌による側面などから徐々に権力に格差が生まれて来ていた。

「よし……」

 泥だらけの手で拳を拭って、腕で額を拭うのはルーナだ。辺境伯のナイト・エルヴァンスの一人娘である。
 彼女が作業していた机の上には、顔、頭部、腕、胴体……などと言った、球体関節ドールのパーツが散らばっている。彼女は辺境伯の娘であると同時に人形師見習いである。

『貴方は跡継ぎにはなれないのだから、せめて手に職は付けなさい』
『令嬢だからと甘えずに、家事は一通りできるようになりなさい』

 そう言われて育ってきた彼女はメイドに混じって家事を行ったり、人形を作ることに注力してきた。
 何故人形かといえば、貴族の女性たちの中でドールが流行しているからだ。彼女たちの目に留まれば高く売れる。上手くいけば、『ルーナが作ったドール』というだけでプレミアがついて高く売れるようになれる可能性だってゼロではないのだ。まだ遠い夢物語だが。
 そうでなくとも、女児が生まれてくる以上は一定の需要がある、というのも理由の一つだ。

「天候、悪くなりそうかな……」

 今は各パーツが作り終わって、粘土を乾燥させるというところ。本当であればもう少し拘りたいところもあるが、雨のせいで上手く乾燥させられないとひび割れやカビに繋がることもある。ひび割れならまだしも、カビだと作り直しだ。

(あんまり粘土も買い足せないし……)

 エヴァンス家が収めているのはソレーユ王国の中でもかなりの僻地。少し行った先には樹海が隣国と隔てているような場所で、地面のぬかるみや猛獣たちが住んでいるという話からまず攻められない。
 また、収めている領地がが一つの街程度の規模感である為、他の領地の辺境伯たちに予算が分配されてしまうのだ。
 窓を開け少し身を乗り出してみれば、雨が降る前特有の湿った、むしむしとした空気。これは駄目だなと早々に悟ったルーナは一旦作業をやめ、早めに乾かす作業に入ることにした。最悪、後から修正もできなくはない。

「ご飯も作んなきゃだしね」

 そう声に出して自分を納得させながら作業、片づけを進めていく。
 作業に使う道具たちはヘラやカッター、絵具などだが、これもまあ親にとやかく言われながら買ったものだ。

(他の令嬢たちはもっとキラキラしていたのに……)

 ルーナ自身も立ち位置が分かっていないわけではない。13歳の彼女にとっても格差は辛いものであった。
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