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12話 オーディン現る。
しおりを挟むはぁはぁ・・ちょ・・ちょっとなんなのよ
この殺人的な忙しさわ・・
酒場でバイトをすることになった私は、
大きな後悔をしていた。
酒場だからお酒だけ運べばいい
思っていたのが甘かった。
ここは食事も出しているらしく、
昼夜問わず、ひっきりなしに客が来る。
店は広く、詰め込めば100人は入りそうな広さだ。
テーブルの数が30ある。
その店の中を、私も含めて4人で廻る。
そりゃ、働き手少ないわ・・
この広さなら倍の8人いてもいいぐらいだわ。
調理場も、カウンターも大忙し。
ひっきりなしに入る注文をやっと
捌いている状態が、延々と続く。
確かに葡萄酒もよく出る。
しかしねぇ、こんなお酒でよく酔えるわ。
酒が入ると、どこの酒場でも見られるような
光景になる。
暴れる客もいれば、ウダウダと
何時間も粘る客もいる。
ここの酒場をチョイスしたのを
後悔したものの・・
あの3人ではなぁ・・
あの酔っ払った3人の醜態を思い出すと、
やはりここは私じゃないとダメよねぇ・・
「おーーい!!オネェさん!!」
「はーーい!ただいま!」
またオーダーか・・もうクタクタだぁ・・
同じく働いている他の3人も、走り回っている。
呼ばれたテーブルに行った。
人間の4人組の男だった。
結構、酔っ払っている。
もう、2時間ぐらいいるわ。この人ら。
「へっへー、オネーチャン美人だねぇ~
どこの人?人間だよなぁ?」
色の浅黒い、いかにもハンターって感じの
男が話しかけてきた。
「はぁい。ご注文は?」
あーー・・酔っ払い絡まれパターン・・
しっかし、人間のくせに、
よくもまぁ、こんな酒で酔えるわね。
「おいおい、つれないねー。
ちょっと座って一緒に飲もうぜ」
別の男が話かけてきた。
あーーマジ、ウザいんですけどぉ。
「忙しいんで、注文ないなら行きますよー」
「へっ、まぁまぁそうとんがるなって。
一角山羊の煮込みと葡萄酒をお代わりで
持ってきてくれよ」
「はぁい。他には?」
「ちょっと酌でもしてくれたらなぁ・・へへへ」
同じハンターなのか小柄な男が言ってきた。
「そんな暇ないんで。じゃ、注文は以上ですね?」
その言葉が気に入らなかったのか
小柄な男が、ふんっ!と言い、続けた。
「ちっ!ちょっと美人だからって
ハナにかけてんのかぁ?」
あ~なんで、こんな時にフラグ立ててんのよ。
別の男が小柄な男に言った。
「ほっとけ、美人かもしれねーが、
ふんっ!貧乳のガキじゃねーか、
テメーこんなペチャパイが好みなのかよ?
ハッハハ」
な・・・ぬあんだとぉーーっ!!!
ひ・・貧乳だとっ!くっ!こいつ!
「へっへへ・・貧乳でもペチャパイでもよぉ、
顔がよけりゃいいってことよ!
貧乳もそれなりに、味があるぜぇ?
ハッハッハハ!!」
貧乳!貧乳と!!何回もこいつら!
クッ!人間ってやつわぁーー!!
人間って、や・つ・わぁっ!!!
我慢して、そのまま振り向き
カウンターへ行こうとすると
ガッシャーーーンッ!!
「おぉ?なんだ?ケンカか??」
店の中は、一瞬の静けさと騒がしさが交錯した。
小柄な男がテーブルの上の食器などを床に落とした。
「愛想がねぇな。食器おとしちまった、拾いな」
小柄な男は私を睨みつけ言った。
「はぁ?ワザと落としたんでしょ?
自分で拾いなさいよ!」
いい加減、頭に来た!
「な・・なんだと??」
男達はいきり立った。
「はい、そこまででーす」
私の後ろから声がした。
店主だった。
「あんたらねぇ、いつもそうやって女の子を
からかうからねぇ、働き手が辞めちゃうんだよ。
この娘も人手が少ないなか、来てくれてるんだ。
文句あるなら、この店にはもう来ないでくれ」
店主は、体の大きいオークだ。
人間の客の2倍ぐらいある。
その店主はギロリと4人の顔を見た。
「て・・てめぇ・・オレたちゃ客だぜ?」
精一杯の虚勢はっちゃって・・
ビビってんのバレバレよ?
「そうだな。でも金を貰わなければ客じゃない。
代金はいいから帰ってくれ!」
4人の男達は悪態をつきながら店を出ていった。
「あ・・あの・・ごめんなさい」
私は素直に謝った。
「なぁに、いいって。アイツらいつもさ。
新し娘が来ると、手を出したりするから、
働き手が続かないんだ。
いつか言ってやろうと思ってたとこさ。
いい機会だったよ」
あぁ~~いい人だぁ~~。
そんなだったら、一発殴ってやれば良かった。
「さぁ、気を取り直して頑張ってくれるかな?」
店主は二コリと笑って言った。
「はい」
「あ・・・あの・・リベラさん?この薬は?」
メガネをかけた店主のエルフが、リベラに聞いた。
「あぁ~それは、解毒と、体力回復が
一気に接種できる薬よぉ~」
リベラは薬を色々と調合していた。
この店にある材料は、多種にわたり、
リベラの創作意欲を掻き立てていた。
「へぇ~スゴイですねぇ。同時に回復も!
リベラさん、どこでこんな調薬技術を?」
店主は見たこともない薬がドンドン
出来ていくのを見て唖然としていた。
うーーん・・どこで?って言われてもぉ・・
困ったわねぇ・・
「オホホホ!まぁ色々とね・・」
「は・・はぁ、でもこんなスゴイのはヤリクでも
見たことありません。
石化を回復する薬などは、
どこにも無いと思います」
店主は次々と出てくる『新薬』に
驚きを隠せないでいた。
「まぁ、そうなの?
こんなに色んな薬草が豊富なのに?
もったいないわねぇ~」
確かに、あまり手に入らないような薬草が
多種多様にある。
「はい。これはオーディンさんが持ち込んできた
モノばかりですが・・
私では調合の仕方がわからなくて・・」
あらぁ、オーディンって薬草の知識も
なかなかなのねぇ・・。
一つ、新しい情報ね。ウフ。
「えっと、店主さん、この布は使っても
いいんですか?」
ミリアは、ドワーフの店主に聞いた。
「あ?あぁ、いいけど?
そんなものどうするんじゃ?」
小柄でズングリムックリのドワーフ店主は、
手先の器用なミリアを重宝していた。
「ウフフ。この村の女性を喜ばせる服を作りますわ」
ミリアは、セリーヌから教えてもらった
『ミニスタイル』の服を作ろうと考えた。
「まぁ、女性だけでなく男性もきっと
喜ばれますけどね?ウフフ」
「ふーむ。ま、あまり服は売れんと思うがのぉ・・」
ドワーフ店主は、興味が無さげだった。
店が受けている道具の修理は、ミリアが全て
片づけてしまっていた。
することが無いので、キレイな布を見つけた
ミリアは、服を作ろうと思いついたのだ。
「まぁ、見てのお楽しみです。ウフフ」
「いらっしゃい・・ま・・ませーー」
アヤメは路上で声を上げていた。
「アヤメちゃん、もっとさー腹から声を出さねーと
お客さん、立ち止まってくれねーよ?」
串焼き屋のオーク店主は、笑いながら
アヤメに言った。
「は・・はぃいい」
アヤメは一生懸命だった。
店の呼び込みなど、やったことがない。
「アッハハ、まぁいいや。
呼び込みはオレがするから
串焼きを焼いてくんな」
「は・・はいっ!」
グゥウウ・・ギュルルルルル
アヤメのハラの虫が鳴く。
「ん?どうした?ハラへったか?ハハハ」
「い・・いえ・・あの・・すみません」
アヤメは赤くなった。
「アッハハ、いいさ。自分で焼いて食べてみな。
焼き方の勉強がてらだ!」
店主は、昨日、アヤメが口に串焼きを
突っ込んだまま寝てしまっていたのを覚えてた。
「はいっ!!ありがとうございますっ!!」
アヤメの目が輝いた。
ジャンはネコ型のままで、街を徘徊していた。
留守番も飽きたのだ。
主は・・おぉ!早速、客とケンカか!
なんという・・ここは、我が行くべきか!
おっ?店主が出てきたな。。
うむ。。丸く収まりそうだ。。
さて、アヤメ殿は?
クッククク、なんだ?あの呼び込みは・・。
あぁ~~あぁ~~早速、自分で焼いて食っておるわ。
良く食べる御仁だわ。
さてさて、リベラ殿は?
ほう??熱心に薬を作っている。な・・なんだ?
あの量は?あんなに作ってこの店で捌けるのか??
ミリア殿は??ふむぅ。なんか縫物を
しておるみたいだな。フッフフ・・
ドワーフが不思議そうな顔をしておるわ。
さてさて・・もう一回りしたら宿に帰るとするか・・
ん?・・・なんだ?この感じ。
何かが村に来る。魔力が強い。
こ・・これは・・オーディンか?
ジャンは村の入り口へと急いだ。
うむぅ。。姿が見えない。
遠く離れていても魔力を感じるとわ。
これは・・主は苦労するかもな。
その夜
「あぁ~~疲れた~~・・もういや・・」
宿に戻ると疲れが一気にきた。
結局、最後までフル稼働。
マジ、忙しいわ。あの店。
「お帰りなさぁい」
リベラは居間でゆっくりとくつろいでいた。
「どうされました?忙しかったんですか?」
ミリアもニコニコしている。
「あーーもう、酒場って最悪。
店主はいい人だけど、もう忙しすぎて・・」
「わ・・私は、今日、楽しかったですぅ」
アヤちゃんもニコニコねぇ。
「どう?アヤちゃん?ちゃんとできた?」
「はぃい!いっぱい食べました!」
アヤちゃんが笑顔満開で言う。
「ん?食べた??なにそれ?」
串焼きを売ってたんじゃないの?
「はぃい!えーと、串焼きを焼く
練習をしてました」
あーー失敗作をいっぱい出したのねぇ~・・
大丈夫かしら。。あの屋台。
「主、今日、オーディンらしき気配を
察知しました」
ジャンが言い出した。
「え?来たの?」
そんな雰囲気は無かったような・・
「いえ、まだここまで辿り着いていないと
思われます。
遠方よりの気配でした。
オーディンは、なかなかですね」
ジャンが言ったあと、リベラが言う。
「オーディンって・・薬草の知識も
なかなかでしてよぉ。
薬屋にある珍しい薬草は、
オーディンが持ち込んだらしいですわぁ」
「へぇ・・一筋縄ではいかないって感じね」
なんか手強そうねぇ。
私の申し出、受けてくれるかしら・・
「我の感覚では、明日ぐらいには
この村に辿り着きそうですが・・どうします?」
ジャンが聞いてきた。
「そうねぇ、ジャンは村の入口を張ってて。
問題は私だわぁ・・あの殺人的な忙しさの中で
抜けれるかなぁ・・」
私は今日一日を思い出した。
目先の事でイッパイだった。
でも、抜けなくちゃ。
「でもぉ、道具屋とか薬屋とかぁ、
それにセリーヌ様の酒場にも寄るんで
ございますでしょう?
滞在時間はそこそこあるんじゃ
ございませんこと?」
確かにリベラの言う通りだ。
「あ・・私の屋台にも寄るんですよねぇ?
村を出る前に。足止めできるかもですぅ」
そうだ。最後はアヤちゃんとこで、
一杯飲んでから帰るんだった。
よし、なんとか捕まえれるかも。
私の酒場で酒を買うから、顔も確認できるし。
酒場を出たら、すぐに追いかければいいわ。
勇者が召還されたのなら、私もサッサとスキルを
伝授してもらって、魔界に帰らないと。
あ、その前にルスハンの港だ。
スキルは使わないと上達しないって事だし
どこかで熟練度を上げないとだわねぇ。
Xデーは明日だ。チャンスを逃さずモノにしよう。
翌日、またあの酒場に出向いた。
今日も、忙しいんだろうなぁ。
途中で抜けるって店主さんに言っておかないと。
昨日、迷惑かけてるし。
気が退けるけど、仕方ないわ。
予想通り、朝から殺人的な忙しさだった。
一波忙しさが越えたところで、ジャンから
念話が入った。
「主、もうすぐ到着みたいです。
準備しておいてください」
それからしばらく時間が経った。
突然、私の背筋に電流が走ったみたいに
ゾクッとした。
来たわっ!
同時にジャンから念話が来た。
「来ました。道具屋に向かっているみたいです」
村の入り口に、一人の老人がヌーッと現れた。
ゆっくりとした足取りで村の中へと入っていった。
背は中ぐらい、長い髭を蓄え、マントを頭から
スッポリと被っている。
禍々しい魔力を湛え、
同時に、村に溶け込むよう気配を殺していた。
オーディンが現れたっ!!
瞬間、リベラもミリアもアヤメもピクッと反応した。
「こ・・これは・・只者ではないっ!」
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