最初に抱いた愛をわすれないで

悠木矢彩

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侍女マリアの日記

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私はマリアと申します。
誰に見られるでもない日記ではありますが、担当のお医者様よりリネージュ様のご様子を見逃さないようにと仰せつかっております。
今日はリネージュ様との出会いを書こうと思います。


侯爵夫人であったリネージュ様の病気療養に付き添うため隣国に来ています。


先日侯爵である旦那様と離婚されたリネージュ様。
私はリネージュ様に拾われたも同然の身ですのでご恩を返したいと思い、無理を言ってついてきてしまいました。


私はしがない田舎貴族の娘でした。
男爵という爵位を頂きながらも、領民と同じような生活をしておりました。
行儀見習いのため、とある伯爵家で働いておりましたが、その家での仕事は劣悪な環境でした。

伯爵家のお嬢様の使いで街に出ていた私はならず者に絡まれ困っていたところを、偶然街に来られていたリネージュ様とその護衛の騎士に助けていただきました。
リネージュ様からも気遣うお言葉を頂き、こんな貴族もいるのだと心の中で思ったものです。

無事にお務めを果たすことができたと思っていたその日に、私は伯爵様に部屋に呼ばれ体の関係を迫られました。
恐ろしくなって部屋を飛び出したところを、奥様に見つかってしまい奥様は怒りのまま私を追い出したのです。

夜に追い出されたものですから、とても怖く、伯爵家の家の外壁部分で夜を明かしたあと、仕事の斡旋所に行きました。
伯爵家からすでに手を回されていた私は、紹介状をもらうことも仕事の紹介をもらうこともできずにいました。

斡旋所を出ましたらそこにリネージュ様が、馬車から降りてきたところでした。
本来でしたら、こんな場所でお会いするような方ではございませんでしたが、リネージュ様は使用人を自分で見て選ぶという変わった…失礼とても革新的な考え方を持つ方でした。


「あなたも仕事を?」

私は自分の現状を伝えていいものかどうか正直に迷いました。

私が迷った表情をしていると、リネージュ様は優しい笑顔を浮かべて

「あなた、私のところで働いてみない?」

「え?」

私は正直働きたいけれど、紹介状がもらえない私は働けないだろうと考えておりました。

「しかし…」

「待っててね、紹介状書いてもらうわ」

「ど、どうして私を?」

「目を見ていればある程度分かるものよ。ねえ、私の話し相手になってくれる?」


私はこの奇跡のような出来事を前に体が震えてしまいました。

なんと慈悲深い方もいるのだと感じたのです。

「あ、有難うございます!誠心誠意お仕えさせてください!!」


斡旋所は侯爵家に言われればかなわないとおもったのか紹介状を認めてくれました。


職業上、身辺調査はされるが私には疚しいことは何もないと考えておりました。
伯爵に迫っていた事実はないとのことも、伯爵家の使用人がこっそり証言してくれたとリネージュ様に教えていただきました。


リネージュ様の印象はとても優しいです。
でもその優しさの裏でリネージュ様が涙しているの私が知るのはもう少し後のことでございました。


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