最初に抱いた愛をわすれないで

悠木矢彩

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元夫視点

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父の言葉が脳裏にこびりついている。


「自死を考えている時…か」



自室でリネージュのことを考える。

彼女と初めて会った日のこと。
彼女と結婚式を挙げた日のこと。
彼女と最後の挨拶を交わした日のことを。



生きて…生きてさえいれば……!!








帰宅したときに広間にあったはずの肖像画がなかった。
ぽっかりと空いたその空間が怖かった。
彼女は何一つこの家に置いていかなかった。
すべて処分するようマルコに言いつけていたらしい。

僕は彼女に何をしてやれた?
僕は彼女に何をした?


逃げていただけじゃないか。

ダンッ!!!

座っている自分の太ももを拳で殴る。


リネージュが死んでしまったらどうしよう。

その考えがずっとループし続ける。
それでもやらないといけない仕事はあり、もちろんその中には社交もあった。


その社交の場で事件は起こった。












なんだ?視線を感じる…



「おい!アレク!」


友人の一人が声をかけてくれたが、なぜか表情が険しい。

「どうした?なんでそんな難しい顔をしている?」


「それよりも!お前ちょっとこっちに来い!!」


「な!何をするんだ!!」


無理やりな体制で腕をとられ個室に引きずられていく。

個室に入った途端、僕は腕を思いっきり引き友人の腕を振り払った。


「何をするんだ!!」

友人は相変わらず難しい表情をしている。


「なあ…お前の離婚理由って夫人の不妊じゃなくて、お前の不妊て本当か?」

「は?」


友人たちには、まだ…言えてなかった。


「誰が言っていた?」


「モントワールのじじぃだよ。うまく娘が侯爵夫人になれると思ったのに夫に種がなくちゃ畑が良くても実りはないってな」



僕の顔に血液が集まるのが分かった。
恥ずかしい、悔しいその気持ちが沸き上がってきた。


しかし、これ以上事実をねじ曲げるわけにはいかない。

震えている口を開く、
言葉を紡ごうとしても中々でてこない。
しかし友人はどうやらそれでわかってしまったらしい。

「事実なんだな」


僕は「うん」という言葉さえ紡げなかった。

ただ、顔を上下に振るしかできなかった。

屈辱的だった。
いずれは分かることだったとしても、まさかこんなところで暴露されると思ってもみなかった。



「何にしろモントワール家には抗議をしろよ。言ってもいいことと悪いことがあるだろ。それに処女性を求められていなかったとしても娘が愛人をしてたなんて醜聞なんだがな」

レイラのことは思い出したくもなかったが、ここで侯爵家が伯爵家に侮辱されることがあってあならない。

きっちり落とし前はつけさせてもらう。


「有難う…」


そう言葉を紡ぐだけで精一杯だった。


「俺はお前んとこの奥さん…いや元奥さんか…好きだったよ」

「え?」

僕はその友人の言葉にびっくりして顔を上げた


「いや、あくまでもお前の奥さんとしてだよ。恋愛感情は一切ない。お前ちょっと甘っちょろいところがあるからさ、心配だったんだよ。でも奥さんしっかりしてそうだし大丈夫だなっておもってさ」


「…うん、本当に…僕は甘っちょろい…そして僕にはもったいない人だったよ」

そういうと友人は一つ息をはいた。
















後日、モントワール家には正式に抗議をした。
そしてレイラは修道院へいくことになった。
噂をしていたのは父親である伯爵だが、娘は愛人という立場であったことが露見し、結局は社交界から追放される形となったからだ。





モントワール家を紹介してくれた友人とは縁を切った。
あいつは、そうやって伯爵家からお金を融通してもらってたらしい。
婿養子で自由にできるお金が欲しかったと。
それでも人のせいにはできない。


僕の種無しの噂は瞬く間に広がった。
この先僕は結婚を望めないだろう…


























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