4 / 22
元夫視点
4
しおりを挟む父の言葉が脳裏にこびりついている。
「自死を考えている時…か」
自室でリネージュのことを考える。
彼女と初めて会った日のこと。
彼女と結婚式を挙げた日のこと。
彼女と最後の挨拶を交わした日のことを。
生きて…生きてさえいれば……!!
帰宅したときに広間にあったはずの肖像画がなかった。
ぽっかりと空いたその空間が怖かった。
彼女は何一つこの家に置いていかなかった。
すべて処分するようマルコに言いつけていたらしい。
僕は彼女に何をしてやれた?
僕は彼女に何をした?
逃げていただけじゃないか。
ダンッ!!!
座っている自分の太ももを拳で殴る。
リネージュが死んでしまったらどうしよう。
その考えがずっとループし続ける。
それでもやらないといけない仕事はあり、もちろんその中には社交もあった。
その社交の場で事件は起こった。
なんだ?視線を感じる…
「おい!アレク!」
友人の一人が声をかけてくれたが、なぜか表情が険しい。
「どうした?なんでそんな難しい顔をしている?」
「それよりも!お前ちょっとこっちに来い!!」
「な!何をするんだ!!」
無理やりな体制で腕をとられ個室に引きずられていく。
個室に入った途端、僕は腕を思いっきり引き友人の腕を振り払った。
「何をするんだ!!」
友人は相変わらず難しい表情をしている。
「なあ…お前の離婚理由って夫人の不妊じゃなくて、お前の不妊て本当か?」
「は?」
友人たちには、まだ…言えてなかった。
「誰が言っていた?」
「モントワールのじじぃだよ。うまく娘が侯爵夫人になれると思ったのに夫に種がなくちゃ畑が良くても実りはないってな」
僕の顔に血液が集まるのが分かった。
恥ずかしい、悔しいその気持ちが沸き上がってきた。
しかし、これ以上事実をねじ曲げるわけにはいかない。
震えている口を開く、
言葉を紡ごうとしても中々でてこない。
しかし友人はどうやらそれでわかってしまったらしい。
「事実なんだな」
僕は「うん」という言葉さえ紡げなかった。
ただ、顔を上下に振るしかできなかった。
屈辱的だった。
いずれは分かることだったとしても、まさかこんなところで暴露されると思ってもみなかった。
「何にしろモントワール家には抗議をしろよ。言ってもいいことと悪いことがあるだろ。それに処女性を求められていなかったとしても娘が愛人をしてたなんて醜聞なんだがな」
レイラのことは思い出したくもなかったが、ここで侯爵家が伯爵家に侮辱されることがあってあならない。
きっちり落とし前はつけさせてもらう。
「有難う…」
そう言葉を紡ぐだけで精一杯だった。
「俺はお前んとこの奥さん…いや元奥さんか…好きだったよ」
「え?」
僕はその友人の言葉にびっくりして顔を上げた
「いや、あくまでもお前の奥さんとしてだよ。恋愛感情は一切ない。お前ちょっと甘っちょろいところがあるからさ、心配だったんだよ。でも奥さんしっかりしてそうだし大丈夫だなっておもってさ」
「…うん、本当に…僕は甘っちょろい…そして僕にはもったいない人だったよ」
そういうと友人は一つ息をはいた。
後日、モントワール家には正式に抗議をした。
そしてレイラは修道院へいくことになった。
噂をしていたのは父親である伯爵だが、娘は愛人という立場であったことが露見し、結局は社交界から追放される形となったからだ。
モントワール家を紹介してくれた友人とは縁を切った。
あいつは、そうやって伯爵家からお金を融通してもらってたらしい。
婿養子で自由にできるお金が欲しかったと。
それでも人のせいにはできない。
僕の種無しの噂は瞬く間に広がった。
この先僕は結婚を望めないだろう…
1,789
あなたにおすすめの小説
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
婚約者を想うのをやめました
かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。
「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」
最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。
*書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
2番目の1番【完】
綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。
騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。
それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。
王女様には私は勝てない。
結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。
※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです
自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。
批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…
「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。
パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、
クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。
「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。
完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、
“何も持たずに”去ったその先にあったものとは。
これは誰かのために生きることをやめ、
「私自身の幸せ」を選びなおした、
ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。
【完結】今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう
音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。
幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。
事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。
しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。
己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。
修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる