1 / 1
その後の桃太郎
しおりを挟む悪い鬼を退治して凱旋した桃太郎は、
【桃太郎さ~ん、お帰り~♪】
の横断幕で、大勢の村人から迎えられた。
「桃太郎さん、どんな鬼を倒したの?」
幼なじみの女の子が尋ねた。
「身体中真っ赤っかでさ、富士の山ぐれぇでっけぇの」
「わぁー、スゴ~。一人で倒したの?」
「んにゃあ。犬と猿と雉が手伝ってくれてさ。日本一の吉備団子食ってっから千人力よ。鬼を目掛けて上から下から攻撃してくれた」
「じゃ、桃太郎さんはどこから攻撃したの?」
「えっ?……決まってるじゃねぇか、腿からさ」
「うまいっ!座布団一枚」
そんな光景を見ながら、おじいさんとおばあさんは顔をほころばせました。
「立派な息子を持って、わしらも鼻が高いわい。なあ、ばあさん」
「ほんとですね、じいさん。こんなに立派に育ってくれて、親孝行な息子です」
「じいちゃんもばあちゃんも、あんまりポメラニアン。照れるジャンヌダルク」
「……ちと、駄洒落が過ぎるが。トホホ」
おじいさんは、桃太郎の駄洒落を嘆きながらも、その勇姿に破顔一笑したのであった。
一躍時の人となった桃太郎は、近所の人気者だけに留まらず、日本全国にその名を馳せた。
間もなく、津々浦々から山のようなファンレターが届いた。
《桃太郎さま、お帰りあそばせ。鬼を退治されたご褒美に、わたくしの白い羽根で綺麗な布を織って差し上げたいわ。
お鶴(仮名)/18歳》
《桃さん、やるじゃん。どんな鬼だった?おいらも、酒呑童子って鬼を倒したよ~
坂田金時(幼名:金太郎/21歳)》
《桃太郎殿、無事にご帰還されたとの事、何よりでござる。拙者も鬼を成敗し、その鬼が落としていった打出の小槌により、お陰様で背が伸びて候。
一寸法師/20歳》
《桃太郎さ~ん、素敵っ♪モモッチって呼んでいい?モモッチは桃から生まれたんでしょ?あたいは竹から生まれたのよ。よろしく~
かぐや姫/17歳》
それから10年の月日が流れた。
何度か恋愛を経験した桃太郎は、ついに伴侶を得た。
「じいちゃん、ばあちゃん。嫁さんゲットしちゃった」
「おこわと申します。よろしゅうお頼み申しまする」
おこわは沈魚落雁のごとく淑やかで、それはそれは美しい女性であった。
それからまた10年の月日が流れた。
「ちょっと、あんた!何よ、このかぐや姫ってふざけた名前のガキ?モモッチって呼んでいい?だって。なんでこんな古い手紙、いつまでも持ってんのよっ!」
「……昔の栄光よ、永久にみたいな?」
「何が昔の栄光よ永久だよ!十和田湖みたいな顔して」
あのお淑やかだったおこわは、この10年で変貌を遂げ、桃太郎に感化されたのか、駄洒落を言うまでになっていた。
「と、十和田湖って、どんな顔だよ?」
「あんたみたいな二重カルデラ顔よっ!」
「…………?」
鬼のような形相で捲し立てるおこわに、桃太郎は閉口した。
「おー!こわ~」
おこわは、その名のとおり怖かった。
栄耀栄華を極めた桃太郎ではあったが、20年を経た今日、持ち帰った金銀財宝はすでに使い果たし、今はしがない平民。
鬼を退治した当時の勇ましさは微塵もなかったが、時々頭にツノが生える嫁という名の鬼と、今もなお闘っていたのであった。
完
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
緑色の友達
石河 翠
児童書・童話
むかしむかしあるところに、大きな森に囲まれた小さな村がありました。そこに住む女の子ララは、祭りの前日に不思議な男の子に出会います。ところが男の子にはある秘密があったのです……。
こちらは小説家になろうにも投稿しております。
表紙は、貴様 二太郎様に描いて頂きました。
野良犬ぽちの冒険
KAORUwithAI
児童書・童話
――ぼくの名前、まだおぼえてる?
ぽちは、むかし だれかに かわいがられていた犬。
だけど、ひっこしの日に うっかり わすれられてしまって、
気がついたら、ひとりぼっちの「のらいぬ」に なっていた。
やさしい人もいれば、こわい人もいる。
あめの日も、さむい夜も、ぽちは がんばって生きていく。
それでも、ぽちは 思っている。
──また だれかが「ぽち」ってよんでくれる日が、くるんじゃないかって。
すこし さみしくて、すこし あたたかい、
のらいぬ・ぽちの ぼうけんが はじまります。
少年イシュタと夜空の少女 ~死なずの村 エリュシラーナ~
朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
イシュタは病の妹のため、誰も死なない村・エリュシラーナへと旅立つ。そして、夜空のような美しい少女・フェルルと出会い……
「昔話をしてあげるわ――」
フェルルの口から語られる、村に隠された秘密とは……?
☆…☆…☆
※ 大人でも楽しめる児童文学として書きました。明確な記述は避けておりますので、大人になって読み返してみると、また違った風に感じられる……そんな物語かもしれません……♪
※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。
笑いの授業
ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。
文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。
それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。
伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。
追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。
魔女は小鳥を慈しむ
石河 翠
児童書・童話
母親に「あなたのことが大好きだよ」と言ってもらいたい少女は、森の魔女を訪ねます。
本当の気持ちを知るために、魔法をかけて欲しいと願ったからです。
当たり前の普通の幸せが欲しかったのなら、魔法なんて使うべきではなかったのに。
こちらの作品は、小説家になろうとエブリスタにも投稿しております。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる