ケン太とチュン太

紫 李鳥

文字の大きさ
2 / 4

 2

しおりを挟む
 


「……出発するって、どうやって?」

「ボクの背中に乗るんです」

「そんなことしたら、キミが潰れちゃうだろ?」

「さあ、どうかな? 試しに乗ってみて」

「ほんとにいいのか?」

「早く早く」

「……じゃ、乗るよ。よっこらしょっと」

 潰れるんじゃないかと、ケン太はハラハラしながら乗ると、雀の首に前足を回しました。

「じゃ、飛びますよ。出発!」

 雀のかけ声と共に、ケン太の体が“魔法のじゅうたん”のように宙に浮きました。

「わ~、浮いてるよぉ。夢か? 夢でもいいや」

 半信半疑のケン太がワクワクドキドキしていると、

「しっかりつかまっててください」

 雀はそう言って、スピードを上げました。

「ヤッホー!」

 空を飛べたケン太は大喜びです。

 でも、その姿は、ケン太が雀に乗っていると言うより、雀を抱っこしたケン太が飛んでるみたいに見えます。

「見ろ見ろ、ヤギがいるぜ。おーい、ヤギ、雑草はうまいかー?」

「ぅめ~」

「うめ~とよ。見ろ見ろ、今度は牛がいるぜ。おーい、牛。おれ、飛んでんだぞー! うらやましいだろ?」

「モ~」

「ゲヘッ。うらやましいとさ」

「飛べない動物はだれだってうらやましがりますよ。ところで、どこに行きたいですか?」

「……どこと言われてもなぁ……世界中を旅したいけど、無理っしょ?」

「無理と言うより、不可能です。ボクのパワーでは、日本縦断が限界ですから」

「……じゃ、キミのおすすめスポットでいいよ」

「そう言われても。目的は犬さんの夢、“空を飛びたい”ですから、観光マップとかも下見してないし……」

「……か。……じゃあさ、キミんちに遊びに行くよ」

「ボクんちはコンビニもゲーセンもない、竹やぶの中ですよ」

「そういうほうが癒し系でいいじゃん」

「……ですか? 犬さんがいいなら、ボクは構いませんけど。ほんと何もないとこですよ」

「いいっていいって。キミんちの親に、礼の一つも言わないとな。空を飛ばせてもらったんだから」

「…………」

「それより、名前を教えてくれよ。おれはケン太だ。キミは?」

「ボクは飼われてないから、名前なんかありませんよ」

「それじゃ話も弾まないじゃないか。うむ……そうだな、鳥だから、チュン太にでもしとくか」

「ケン太さんにお任せします」

「よし来た。チュン太、飛ばそうぜっ!」

「ぁ、ぁ、はいっ!」


 雲一つない真っ青な空を見上げ、次に下界を見下ろすと、雪を被った山並みが見えます。

 それを越えると、今度はピンクのじゅうたんを敷き詰めたようなレンゲ畑が広がっていました。

 雪解け水の小川からせせらぎが聴こえ、水車小屋からは、流水に回る羽根車の音が聴こえてきます。

 その傍らには、畑を耕す農夫が見えます。

 いかにも、のどかな田園風景です。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ナナの初めてのお料理

いぬぬっこ
児童書・童話
ナナは七歳の女の子。 ある日、ナナはお母さんが仕事から帰ってくるのを待っていました。 けれど、お母さんが帰ってくる前に、ナナのお腹はペコペコになってしまいました。 もう我慢できそうにありません。 だというのに、冷蔵庫の中には、すぐ食べれるものがありません。 ーーそうだ、お母さんのマネをして、自分で作ろう! ナナは、初めて自分一人で料理をすることを決めたのでした。 これは、ある日のナナのお留守番の様子です。

雪の降る山荘で

主道 学
児童書・童話
正体は秘密です。 表紙画像はフリー素材をお借りしました。 ぱくたそ様。素敵な表紙をありがとうございました。

ふしぎなリボン

こぐまじゅんこ
児童書・童話
ももちゃんは、クッキーをおばあちゃんにとどけようとおもいます。 はこにつめて、きいろいリボンをむすびました。 すると……。

不幸でしあわせな子どもたち 「しあわせのふうせん」

山口かずなり
絵本
小説 不幸でしあわせな子どもたち スピンオフ作品 ・ ウルが友だちのメロウからもらったのは、 緑色のふうせん だけどウルにとっては、いらないもの いらないものは、誰かにとっては、 ほしいもの。 だけど、気づいて ふうせんの正体に‥。

城下のインフルエンサー永遠姫の日常

ぺきぺき
児童書・童話
永遠(とわ)姫は貴族・九条家に生まれたお姫様。大好きな父上と母上との楽しい日常を守るために小さな体で今日も奮闘中。 全5話。

ふしぎなえんぴつ

八神真哉
児童書・童話
テストが返ってきた。40点だった。 お父さんに見つかったらげんこつだ。 ぼくは、神さまにお願いした。 おさいせんをふんぱつして、「100点取らせてください」と。

野良犬ぽちの冒険

KAORUwithAI
児童書・童話
――ぼくの名前、まだおぼえてる? ぽちは、むかし だれかに かわいがられていた犬。 だけど、ひっこしの日に うっかり わすれられてしまって、 気がついたら、ひとりぼっちの「のらいぬ」に なっていた。 やさしい人もいれば、こわい人もいる。 あめの日も、さむい夜も、ぽちは がんばって生きていく。 それでも、ぽちは 思っている。 ──また だれかが「ぽち」ってよんでくれる日が、くるんじゃないかって。 すこし さみしくて、すこし あたたかい、 のらいぬ・ぽちの ぼうけんが はじまります。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

処理中です...