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しおりを挟むケン太を乗せたチュン太は、竹やぶに降りると、一軒のわらぶき屋根の古民家に入りました。
「ここがボクんち」
「なかなかいいじゃないか、趣があってよ」
ケン太は、古い家が気に入ったようです。
「……で、父さんとか母さんは?」
「…………」
「……どうしたんだい、悲しい顔して」
「……死にました」
「エッ?」
「……父さんも母さんも、……兄さんも姉さんも」
「なんでだ?」
「大きな鳥におそわれて……」
「……じゃ、ひとりぼっちか?」
「……うん」
「そうだったのか……そりゃあ、寂しいな」
「…………」
「どうだい、おれでいいなら、友だちになるぜ」
「えっ、ほんとに?」
チュン太が嬉しそうに目を輝かせました。
「ああ。ひとりぼっち同士じゃないか、仲良くしようぜ」
「うん」
チュン太は弾むようにうなずくと、ニコッとしました。
チュン太と友だちになったケン太は、この家で一緒に暮らすことにしました。
雨風をしのげる家は天国です。
家のど真ん中には、板張りの床を突き抜けた竹の子が顔を出していました。
お腹が空いたら、人んちのゴミ箱をあさり、捨てたばかりの食べ残しを口いっぱいにくわえて急いで家に戻ると、チュン太と一緒に食べました。
チュン太と食べるご飯は、ひとりで食べるときよりもおいしく感じられ、楽しいものでした。
黙って逃げてしまって、育ててくれた飼い主には申し訳ないと思いつつも、ケン太には、チュン太との友情のほうが大切だったのです。
夜。チュン太は、ケン太のポカポカの胸に抱かれて寝ます。
「ピンクの首輪をした散歩中の女の子がウインクなんかしちゃってよ。おれに近寄るたんび、飼い主にリードを引っ張られてさ。愛を語らうこともできなかった。
可哀想だったぜ。名残惜しそうに何度もおれに振り返ってさ、悲しい顔をしてたっけ。
デートしたくったって、こっちも首輪にリードつながれてっから、どうすることもできない。……何匹の女の子を泣かせたことか」
毎晩のように、ケン太の武勇伝を聴かされながら。そのたびに、
「モテたんだね~」
と、チュン太は言ってあげました。
朝。ケン太は、チュン太の寝起きの顔をなめてあげます。
チュン太はお返しに、ケン太の毛繕いをしてあげます。
そして、空を飛ばせてくれたお礼に、ケン太は背中にチュン太を乗せて、竹やぶの中を散歩します。
しかし、そんな楽しい共同生活は長く続きませんでした。
間もなくして、古民家に野犬が住み着いているという噂が広まったのです。
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