幻想花火

紫 李鳥

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幻想花火

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 高台にある一軒の家

 眼下には日本海


 遠くには

 点在する人家の明かり



 庭の竹垣には

 蔓を伸ばした朝顔


 チリンチリン……

 軒先に吊るした風鈴の

 涼しげな音色


 犬小屋から顔を出す子犬



 六畳の居間の隅には

 豚の形をした陶器の

 蚊遣りが

 煙をくゆらしている


 テレビの横には

 首を振っている扇風機


 ジョッキ片手に

 テレビのナイター中継を

 観戦する父親



 縁側には

 浜辺から打ち上げられる

 花火を楽しんでいる

 子どもたち


 西瓜を盆で運んでくる母親



 縁側で西瓜を食べながら

 海に火の粉を落とす

 花火を見上げる









     ヒ
     ュ
     |
     |
     |
     |
     !


     パ
     ン
   パ
    ン 
        パ
       パ
      ン
    パ
     ン
     !


     シ
     ュ
     |
     :

     :




     ;





 みんなの顔が赤々と

 花火の光を浴びる



 花火の音と

 子どもたちの笑い声

 テレビの音声



 夜空の花火が

 みんなの笑顔と一緒の

 ……大輪の花を咲かせる




 ――やがて

 花火を背景に

 その家は庭ごと

 家族を乗せて

 ゆっくりと

 天に昇って行く――







  パ
  ン

 ン
    パ
   パ
  ン
  !








  パ
  ン
  !
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