ラブとミシェル

紫 李鳥

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お引っ越し

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 家賃の安い一軒家を見つけたのは、〈MoonValleyムーンバレー〉という小さな村だった。隣家は橋を渡った川辺にある。山と川に囲まれた美しい場所だった。

 築30年の一戸建ては、内装リフォームをしているので、外観から受ける印象よりは綺麗だった。

「ラブ、ここが新しい我が家よ。どう? 気に入った?」

‥もう、最高っすよ! 山あり、川あり、ミシェルありで‥

 冷蔵庫やベッドなどの備品が付いているので、生活には不自由しない。

「明日は食料のまとめ買いをしないとね。小さな畑があるから、野菜の種も買おうか」

 来る途中で買った食材で夕食を作りながら、ラブに話しかけた。

‥いいね。自給自足ってわけだ‥



 翌日、近くの町で食料を買うついでに、求人の張り紙を探したがなかった。帰る途中で小型の銃を買った。用心のためだ。

 帰宅すると早速、シャベルで土を起こすとニンジンの種を蒔き、ジャガイモの種芋を植えた。

「どうか、実りますように」

 ミシェルはそう言いながら、如雨露じょうろで水をやった。

「ラブ、おいで」

 その辺を嗅ぎ回っているラブを呼んだ。

「畑に入っちゃ駄目よ。分かった?」

 ラブの青い首輪をつかんで畑を指した。

‥了解。生活のかてだろ? そのぐらい分かるさ‥

 念のために、集めた小枝で柵を作った。

‥トホホ。俺のこと信じてねぇな‥

「ラブ、川辺を散歩しようか?」

‥待ってた、ホイ‥


 昼食用のサンドイッチをバスケットに入れると、ジャケットのポケットに銃を入れ、水筒を肩にかけた。


 小鳥のさえずりと、川のせせらぎが心地よかった。川辺には草花が咲き乱れ、まさに、自然の宝庫だった。

 崖の近くまで来た時だった。所構わず嗅ぎ回っているラブを呼んだ。

「ラブ、おいで」

‥なんだよ。今、探検中なのに‥

「ここ、崖、危ない。分かった?」

‥何、片言の英語みたいに、ここ、崖、危ないって。崖は危ないから気をつけろって言いたいんだろ? 分かってるよ、ガキじゃあるまいし。人間の歳で言うと、20歳を過ぎた立派な大人だぜ。心配すんなって。ミシェルを泣かせるような真似はしねぇから、安心しな‥

「分かった? ここ、崖、危ない」

‥まだ、言ってるよ‥


 花の咲き乱れる川辺に腰を下ろすと、景色を満喫した。川の流れは、穏やかな音色を奏でていた。

「ラブ、キレイなとこだね」

‥ああ。確かに‥

「ここにずっと住みたいね? そのためにも仕事を探さないと」

‥すまねぇ。……俺のせいで‥

「お昼にしようか?」

‥待ってました‥

「はい」

‥うそ、ちぎってくれんの? ヤリー‥

 ガブッ

‥ついでにミシェルの指も舐めちゃえ‥

 ペロペロ

‥これが、ミシェルちゃんの指の味か……‥

「おいちかったの?」

‥確かにうまかったよ。けど、その赤ちゃん言葉やめてくれねぇかな。俺さ、大人のオス。立派な男。恋もすりゃ、女を好きにもなる。……分かんねぇだろな、この切ない気持ち。あらっ、ミシェル、待ってくれよ‥

「帰るわよ。ラブ、早くっ」

以心伝心いしんでんしんは無理か‥
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