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3 まあね、真似のできないうまさよっ!
しおりを挟む今回は、【RINO△】さんからご提供いただいたエピソードをベースに脚色しています。
RINO△さん、ありがとう♪
さて、お浜さんはどんな一刀両断で今回の事件を捌くのか、乞うご期待!
雨ニモマケズ風ニモマケズ雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌお浜さんは今日も140円の旅に出るのであった~!
お浜さんの今日の出で立ちは、ピンクのキャップに、NIKEのスニーカー。
一足お先の春の装いでスプリング~!と言った具合だ。
「あああ……早く春が来ないかなぁ……春よ来い 早く来い 歩き始めたみいちゃんが 赤い鼻緒のじょじょ履いて おんもに出たいと待っている~♪」
リズムに合わせ両足をぶらぶらさせながら、いつものように独り言&アカペラをご披露していると、
「――待っている~♪ふふっ」
優先席からドアを挟んだ斜前に座った高校生らしき少女が二人、お浜さんの歌を真似て笑っていた。
お浜さんがニッとすると、女子高生は顔を合わせて、
「ふふっ」
と笑い合った。
「春の小川はさらさら行くよ 岸のすみれやれんげの花に すがたやさしく色うつくしく 咲けよ咲けよとささやきながら~♪」
「――ながら~♪うふふ」
「菜の花畑に 入日薄れ見わたす山の端 霞ふかし春風そよ吹く 空を見れば夕月かかりて 匂い淡し~♪」
「――あわし~♪ふふ」
「春よ 遠き春よ 瞼閉じれば そこに~♪」
「――そこに~♪ふふっ」
「春なのにお別れですか 春なのに涙がこぼれます 春なのに 春なのに ため息またひとつ~♪」
「――またひとつ~♪うふっ」
「雪が溶けて川になって流れてゆきます つくしの子が恥ずかしげに顔を出します もうすぐ春ですね ちょっと気取ってみませんか~♪」
「――ってみませんか~♪知ってる?」
「知らない……」
女子高生はお浜さんが歌った『春一番』を知らないようだ。
「ククッ」
お浜さんは不気味な笑みと共に続けた。
「春高楼の 花の宴 巡る盃 影さして 千代の松が枝 分け出でし 昔の光 今いずこ~♪」
「――いま伊豆行こう~♪」
女子高生は、“今いずこ”を“今伊豆行こう”と歌って顔を合わせると、無言で首を傾げた。
「クッ。月日は百代の過客にして行かふ年もまた旅人なり 舟の上に生涯をうかべ 馬の口とらえて老いをむかふる物は日々旅にして旅を栖とす 古人も多く旅に死せりあり」
「?」
「……?」
女子高生は真似できず、次の駅で降りた。
「えっ?『奥の細道』知らんの?中学で習わんかった?クッ。さて、ゆっくりとカフェオレを味わいますかね。……ん~、オイチイ。誰にも真似できん旨さじゃわい。ゲヘッ」
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