2 / 3
2
しおりを挟む「俺? うむ……逆ナンパ以上、知り合い未満てとこかな」
ヒロトは一見、普通ぽいけど、どことなく不良を感じさせる17~8歳です。顔は悪くないけど、イケメンまでいきません。普通の上ぐらいです。着てるモノも安っぽくて、わが家の家風にはちょっとそいかねます。
「ど、どこで知り合ったんですか?」
「そこの公園。ベンチで俺が求人見てたら声かけてきてさ。年上だけど美人だったから話したら、結構可愛いじゃん。俺が独り暮らしって言ったら、飯をごちそうしてくれるって言うからついてきたってわけ」
「フムフム……そうでしたか」
ぼくが次の言葉をもさくしていると、
「ただいま~」
玄関から母さんの声がしました。ぼくが“おかえり”と声をかけようとしたら、
「あ、ヒロトくん、お待たせ」
ぼくの前を素通りして行ったんです。それに、いつもとようすが違ってたんです。なんて言うか……。
「ヒロトくんは、何が食べたい?」
「あ、さっちゃんにおまかせします」
(ゲ。母さんのこと、さっちゃんだって。なれなれしい。それより、母さんはぼくがここにいるの気づいてないのかなぁ……)
「じゃあ、私の得意料理を作るわね」
(いつもは黒っぽいエプロンなのに、きょうはピンクのエプロンなんかしちゃってる。あ、そうか。なんか違うと思ったら、言葉づかいが違うんだ。なんか、ぶりっ子してるみたいだ)
「じゃ、出来るまでテレビでも観てて」
「オッケー」
ヒロトはテレビをつけると、父さんの指定席だったソファーのとこに座って、ドラマの再放送を観ています。
母さんは母さんで、鼻歌まじりで、キャベツなんかきざんでいます。二人とも、ぼくの存在に気づいてないようです。
「ん! ん!」
ぼくがせきばらいをしても、二人がふりむくことはありませんでした。悲しくなったぼくは、しょんぼりしながら自分の部屋に行きました。
夕飯の時間になっても母さんは呼びに来ません。しかたなくリビングに下りると、
「うふふ……」
母さんが少女のような笑いかたをしていました。二人は向かい合って食べながら、なにやら楽しそうです。ぼくはえんりょがちに自分のいすに座ると、
「……お母さん、……ごはん」
小さな声で言いました。
「うふふ……」
ぼくの声が聞こえなかったのか、母さんは少女のように笑ってばかりいました。
「お母さん、ごはん!」
「あら、雄大ちゃん、おかえり」
(ゲ。“雄大ちゃん、おかえり”だって。いつもは、“おう、息子、まだどうていか?”のくせに)
「あ、紹介するわね。江川裕人くん。息子の雄大です」
「ヨッ」
「どうも。……こんばんは」
ぼくはしかたなく、初対面のふりをしました。
「裕人くんはね、大学1年生。バイトしながら大学行ってるんだって。偉いでしょ?」
母さんは、とんかつや野菜サラダをぼくの前に置きながら、ヒロトのすじょうを話していました。
「独り暮らしだから、自分で料理作って食べてんだって。偉いでしょ?」
「……うん。えらい」
「だからね、お母ちゃんがごちそうしてあげてるの。いいでしょう?」
「……いいけどぉ」
「裕人くん、たくさん食べてね」
「はい。このロースかつ、めっちゃうまいです」
「ありがとう。よかったわ、お口に合って。うふふ……」
(また、ぶりっ子笑いしてる。いつもは、ゲヘッとかガッハッハなのに。……けど、なんだか幸せそうです)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる