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一方その頃、アテられて
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「おい!誰だこの記事担当したやつ!!」
こじんま~りとしたオフィスに
更年期薄らハゲの声が鳴り響く。
お~ん、良く見えんけど多分アイツやね。
えーっとあぁそう小山君。
「こんなチッせぇミスすんじゃねぇよ!!
何年やってんだバカ野郎!!」
お~お~良くやるわ。
まだ1年目の新人に詰める詰める。
こーんな弱小Z級記事で良くやるわ~。
大した稼ぎもないってのに元気だねぇ。
「…パワハラ厳罰化とか、業務改善とか
退職代行とか、全部眉唾ですよねあんなの。」
「んぁえ!?…ははっ、まぁソッスネ。」
びっっっくりしたぁ!!
突然話しかけてくんじゃないよ、君!!
虚ろな目でキーボードを叩くのは
あ~笹村君か。
役職ない奴って名前で覚えなきゃいけないから
クソ辛だわ、ほんと。
「アイツ、何年持つと思う?」
「3ヶ月…いやぁ来月末と睨んだ。」
背後で会話をするのは、
新井君と小田ちゃん。
ちなみにアタシの読みじゃあ年は持つね。
あの手合は逃げる事を知らない奴だ。
「…ん?」
上着のポケットに入れてたスマホが震えた。
なんじゃ?マナモじゃなかったんかい、ワレ。
飴玉の包み紙を避けて取り出せば、
個人用の秘匿アドレスに件名が1。
(おほ~?こっちね。)
仕事用でも、普段使い用でもない
もっとディープでアングラ専用のアドレス。
まさしく秘匿のはすなんだがにゃ~。
(URL…送り主は、長針氏)
特徴的溶けた時計がアイコンの人物。
この手のコミュニティにしては清廉潔白。
トレードはトントンだし、外れはない。
だからこそ超紳士であり長針氏なのだが、
精密な情報も相まって浮上回数はまぁ少ない。
それに、挨拶もなしに送ってくるなんてのも珍しい。
(へぇ~っと、イヤホン、イヤホンっと。)
よれた上着からワイヤレスイヤホンを取り出して、
こっそりと右耳だけにはめる。
本来ならフルビルドで挑みたいが、
袋とじを前に良い子ちゃんブレるほど
品行方正じゃないのでね。
「おんじゃこりゃ?…ライブ映像?」
にしては奇怪すぎじゃね?
シスターがギター持ってるし…。
こんなアニメみたいな奴ホントにいんだな。
まぁ手の込んだコス…プ
「違うな、本物だこれ。」
艶、質感、うん。本物だ。
本場で見たやつと同じだ。
ってことは、なに!?
本気でシスターがギターやってんの!?
隣のヤツは誰?普通の男に見えっけど
なんつー色物バンドなんだろ、これ。
「ってかアタシ達の曲じゃん、これ。」
勢い良くシスターがかき鳴らしたのは
作詞作曲ぜーんぶアタシ達の曲。
ん?権利は売ったんだっけ?匿名だっけ?
まぁ、どっちでも良いけど…
(はぁ、やっぱり全然違~う。)
とんでもない演奏技術だし、美人だけどさ
なんか、アタシのメッセージを受け取ってないのよ。
それどころが自分で塗り替えてるし。
こんなんアタシの曲じゃないよ~(泣)。
的外れな考察とか、自分語りとか
そーゆーのばっかで嫌気が刺してたけど、
やっぱり直でヤラれるとつれーわぁ。
「ビミョ~。インパクトはあるけど…Cだなこれ。
長針氏にかぎってあり得ない…えぇ?」
おいおいちょっと、
男の人演奏辞めちゃってるけど。
しかもサビ前ってアンタ、
シスターに飲まれちゃってるじゃない。
「あーぁ、みてらんねー。」
もういっか、仕事でもすんべ。
あーぁ悪意は無いんだろうけど、
なーんか昼前から気分悪いわぁ。
(ってあれ?ずいぶん長いなこの動画。)
曲自体は4分弱なのに動画時間は6分もある。
もう一曲にしては短すぎるし、
やっぱりコッチに流れてるには弱いし、
もしかしてワンチャン?
「…は?」
ぬるま湯に浸かった思考が飛び起きる。
嫌、一瞬の静寂の内に叩き起こされる。
止まっていた男が動き出したからか、
そう断を下せたのは、深い衝撃を噛み締めたあと。
(な、なに?なになになになに!!?)
これまでの退屈全てが布石と言わんばかりに
鼓膜をつたって衝撃が爆ぜる。
体中を乱反射する刺激物が絶え間なく脳を焼き、
その予熱が背中一面の汗を沸かせる。
全能気取りで踊ってたシスターに咎が立つ。
殴りつけるような乱雑さと、
研ぎ澄まされた片鱗を感じる鋭利さ。
これだけ危うい一手でありながら
笑みを浮かべる男は確信的に狂っていく。
曲にはない、番外の音。
ゲームを全てひっくり返すような盤外の駒。
吠え立てるような慟哭だけが詰め込まれた
アタシの伝えたかった音!!
「ッはァ~!食っちまったんだ、コイツ!」
「ん?おい、錠家?
テメェ何堂々とサボってんだ!オイ!!」
あぁ!滾る、滾る!
血が湧いて、肉が躍る!!
そうだよ、そう!
お前みたいな奴を待ってたんだ!
「ちょ、ちょっと音音さん!」
会いたいなぁ!会いたい、会いたい!
この才能は何処まで通用するのかなぁ。
ううん、きっと貴方を喰えるはず。
「おい、無視してんじゃねぇぞ!錠家ッ!」
久しぶりに高められるよ『ネオン』!
うんうん!楽しみだねぇ!『ねおんちゃん』!
「テッメェ!!」
「うっさいんだよ、ハゲ。」
「…は?」
襟首を捕まれ、引き上げられた女は
その状況を一切覆す程に強気であった。
「ピーピーピーピー喚いてんじゃねぇよ、あぁ!?
テメェみてなグズはさぁ!
ネオンちゃんには要らなぁい!」
瓶底の丸眼鏡。そのすき間から闇がのぞく。
漆黒に染まる瞳が腹立たしげに歪んで、溶ける。
「辞めるわァ、アーシちゃん。
根暗陰キャ社畜が実はインターネットで最強!?
なーんてシチュに憧れたけどさぁ、
朝起きンのシンドすぎぃ。」
「おまえ、何言って…」
猫背で、陰湿な空気が
狂気にさらされたように染まる。
不健康な白をまとった肌がニッと歪む。
薄紅色の唇によって。
「あーげる♡これっ!」
細身で薄い指が
ぱっと掴んで差し出したのは安っぽいUSB。
「若手政治家の横領にぃ、
某有名アイドルの三股でしょ。
あーあとあと主演俳優のDV。
好きソーなゴシップたっくさぁん!
受け取ればサ、昇格確定。
また戻りたいんじゃないのォ?本部にさぁ。」
ノートパソコンに差し出されたのは
どれも目をむくような写真や動画ばかり。
「おまえ、これ…どうやって?」
「えゃぁ~?どーでもよくなぁい?方法なんて。
なんだっけ、ほら。
記者は成果を上げてなんぼなんでしょ?
泥臭く行くって、張り切ってたらしいじゃん。」
「ッ!?どこまで…!?」
血の気が引いてか、弱まった男の手が緩み
チェアへと乱雑に落とされる。
「そ、そんなわけなので…その、
あ~えっと、お、お世話になりました。
USBは差し上げますので…あとデスクのも…。
い、いらなかったら処分して頂いて
…す、すいません。あはは、…。」
先程のそれとは明らかに違う。
錠家と呼ばれる女はいそいそと上着を羽織り、
使い古した肩掛けのカバンに
ノートパソコンや筆記具などを押し込む。
「ほっ、ほんと、お、お世話になりました。」
その場に残された全員が
呆気に足を取られるなかで。
錠家は底のすり減ったスニーカーで
足早に職場を去っていった。
「…このウェアって地域限定のヤツ?
青…だからやっぱだ、地方はわかるな。」
「ってかこれ平屋の造りじゃないな。
1階…あー地下だね、これ。」
「ん、特徴的なリストバンド。
…あー掠れてて見えないな、残念。」
「あんじゃこいつ?筋骨隆々なんだけど。
…ほーほーほー、いい靴下じゃん。
このロゴは有名なジムのやつだ。」
「地下にライブハウス、地域限定…ジム。
大体分かった。遠いなぁ、まぁいっか。
新幹線の予約って一月くらい前からか。
うーん、始発ででれば昼過ぎには着く!」
「あとは着いてから探せば良いや。
どうせすぐ見つかるだろうし。」
「あーあ、自由席座れると良いなぁ。
ねぇ、ネオンちゃん?」
「そうだねェ、ねおんちゃんッ!」
こじんま~りとしたオフィスに
更年期薄らハゲの声が鳴り響く。
お~ん、良く見えんけど多分アイツやね。
えーっとあぁそう小山君。
「こんなチッせぇミスすんじゃねぇよ!!
何年やってんだバカ野郎!!」
お~お~良くやるわ。
まだ1年目の新人に詰める詰める。
こーんな弱小Z級記事で良くやるわ~。
大した稼ぎもないってのに元気だねぇ。
「…パワハラ厳罰化とか、業務改善とか
退職代行とか、全部眉唾ですよねあんなの。」
「んぁえ!?…ははっ、まぁソッスネ。」
びっっっくりしたぁ!!
突然話しかけてくんじゃないよ、君!!
虚ろな目でキーボードを叩くのは
あ~笹村君か。
役職ない奴って名前で覚えなきゃいけないから
クソ辛だわ、ほんと。
「アイツ、何年持つと思う?」
「3ヶ月…いやぁ来月末と睨んだ。」
背後で会話をするのは、
新井君と小田ちゃん。
ちなみにアタシの読みじゃあ年は持つね。
あの手合は逃げる事を知らない奴だ。
「…ん?」
上着のポケットに入れてたスマホが震えた。
なんじゃ?マナモじゃなかったんかい、ワレ。
飴玉の包み紙を避けて取り出せば、
個人用の秘匿アドレスに件名が1。
(おほ~?こっちね。)
仕事用でも、普段使い用でもない
もっとディープでアングラ専用のアドレス。
まさしく秘匿のはすなんだがにゃ~。
(URL…送り主は、長針氏)
特徴的溶けた時計がアイコンの人物。
この手のコミュニティにしては清廉潔白。
トレードはトントンだし、外れはない。
だからこそ超紳士であり長針氏なのだが、
精密な情報も相まって浮上回数はまぁ少ない。
それに、挨拶もなしに送ってくるなんてのも珍しい。
(へぇ~っと、イヤホン、イヤホンっと。)
よれた上着からワイヤレスイヤホンを取り出して、
こっそりと右耳だけにはめる。
本来ならフルビルドで挑みたいが、
袋とじを前に良い子ちゃんブレるほど
品行方正じゃないのでね。
「おんじゃこりゃ?…ライブ映像?」
にしては奇怪すぎじゃね?
シスターがギター持ってるし…。
こんなアニメみたいな奴ホントにいんだな。
まぁ手の込んだコス…プ
「違うな、本物だこれ。」
艶、質感、うん。本物だ。
本場で見たやつと同じだ。
ってことは、なに!?
本気でシスターがギターやってんの!?
隣のヤツは誰?普通の男に見えっけど
なんつー色物バンドなんだろ、これ。
「ってかアタシ達の曲じゃん、これ。」
勢い良くシスターがかき鳴らしたのは
作詞作曲ぜーんぶアタシ達の曲。
ん?権利は売ったんだっけ?匿名だっけ?
まぁ、どっちでも良いけど…
(はぁ、やっぱり全然違~う。)
とんでもない演奏技術だし、美人だけどさ
なんか、アタシのメッセージを受け取ってないのよ。
それどころが自分で塗り替えてるし。
こんなんアタシの曲じゃないよ~(泣)。
的外れな考察とか、自分語りとか
そーゆーのばっかで嫌気が刺してたけど、
やっぱり直でヤラれるとつれーわぁ。
「ビミョ~。インパクトはあるけど…Cだなこれ。
長針氏にかぎってあり得ない…えぇ?」
おいおいちょっと、
男の人演奏辞めちゃってるけど。
しかもサビ前ってアンタ、
シスターに飲まれちゃってるじゃない。
「あーぁ、みてらんねー。」
もういっか、仕事でもすんべ。
あーぁ悪意は無いんだろうけど、
なーんか昼前から気分悪いわぁ。
(ってあれ?ずいぶん長いなこの動画。)
曲自体は4分弱なのに動画時間は6分もある。
もう一曲にしては短すぎるし、
やっぱりコッチに流れてるには弱いし、
もしかしてワンチャン?
「…は?」
ぬるま湯に浸かった思考が飛び起きる。
嫌、一瞬の静寂の内に叩き起こされる。
止まっていた男が動き出したからか、
そう断を下せたのは、深い衝撃を噛み締めたあと。
(な、なに?なになになになに!!?)
これまでの退屈全てが布石と言わんばかりに
鼓膜をつたって衝撃が爆ぜる。
体中を乱反射する刺激物が絶え間なく脳を焼き、
その予熱が背中一面の汗を沸かせる。
全能気取りで踊ってたシスターに咎が立つ。
殴りつけるような乱雑さと、
研ぎ澄まされた片鱗を感じる鋭利さ。
これだけ危うい一手でありながら
笑みを浮かべる男は確信的に狂っていく。
曲にはない、番外の音。
ゲームを全てひっくり返すような盤外の駒。
吠え立てるような慟哭だけが詰め込まれた
アタシの伝えたかった音!!
「ッはァ~!食っちまったんだ、コイツ!」
「ん?おい、錠家?
テメェ何堂々とサボってんだ!オイ!!」
あぁ!滾る、滾る!
血が湧いて、肉が躍る!!
そうだよ、そう!
お前みたいな奴を待ってたんだ!
「ちょ、ちょっと音音さん!」
会いたいなぁ!会いたい、会いたい!
この才能は何処まで通用するのかなぁ。
ううん、きっと貴方を喰えるはず。
「おい、無視してんじゃねぇぞ!錠家ッ!」
久しぶりに高められるよ『ネオン』!
うんうん!楽しみだねぇ!『ねおんちゃん』!
「テッメェ!!」
「うっさいんだよ、ハゲ。」
「…は?」
襟首を捕まれ、引き上げられた女は
その状況を一切覆す程に強気であった。
「ピーピーピーピー喚いてんじゃねぇよ、あぁ!?
テメェみてなグズはさぁ!
ネオンちゃんには要らなぁい!」
瓶底の丸眼鏡。そのすき間から闇がのぞく。
漆黒に染まる瞳が腹立たしげに歪んで、溶ける。
「辞めるわァ、アーシちゃん。
根暗陰キャ社畜が実はインターネットで最強!?
なーんてシチュに憧れたけどさぁ、
朝起きンのシンドすぎぃ。」
「おまえ、何言って…」
猫背で、陰湿な空気が
狂気にさらされたように染まる。
不健康な白をまとった肌がニッと歪む。
薄紅色の唇によって。
「あーげる♡これっ!」
細身で薄い指が
ぱっと掴んで差し出したのは安っぽいUSB。
「若手政治家の横領にぃ、
某有名アイドルの三股でしょ。
あーあとあと主演俳優のDV。
好きソーなゴシップたっくさぁん!
受け取ればサ、昇格確定。
また戻りたいんじゃないのォ?本部にさぁ。」
ノートパソコンに差し出されたのは
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「おまえ、これ…どうやって?」
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なんだっけ、ほら。
記者は成果を上げてなんぼなんでしょ?
泥臭く行くって、張り切ってたらしいじゃん。」
「ッ!?どこまで…!?」
血の気が引いてか、弱まった男の手が緩み
チェアへと乱雑に落とされる。
「そ、そんなわけなので…その、
あ~えっと、お、お世話になりました。
USBは差し上げますので…あとデスクのも…。
い、いらなかったら処分して頂いて
…す、すいません。あはは、…。」
先程のそれとは明らかに違う。
錠家と呼ばれる女はいそいそと上着を羽織り、
使い古した肩掛けのカバンに
ノートパソコンや筆記具などを押し込む。
「ほっ、ほんと、お、お世話になりました。」
その場に残された全員が
呆気に足を取られるなかで。
錠家は底のすり減ったスニーカーで
足早に職場を去っていった。
「…このウェアって地域限定のヤツ?
青…だからやっぱだ、地方はわかるな。」
「ってかこれ平屋の造りじゃないな。
1階…あー地下だね、これ。」
「ん、特徴的なリストバンド。
…あー掠れてて見えないな、残念。」
「あんじゃこいつ?筋骨隆々なんだけど。
…ほーほーほー、いい靴下じゃん。
このロゴは有名なジムのやつだ。」
「地下にライブハウス、地域限定…ジム。
大体分かった。遠いなぁ、まぁいっか。
新幹線の予約って一月くらい前からか。
うーん、始発ででれば昼過ぎには着く!」
「あとは着いてから探せば良いや。
どうせすぐ見つかるだろうし。」
「あーあ、自由席座れると良いなぁ。
ねぇ、ネオンちゃん?」
「そうだねェ、ねおんちゃんッ!」
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