星のテロメア

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第13話:コールドスリープ-4

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「あ、鳴海センパイ、来てくれたんスね! と言う事は、桜ちゃんがボクの秘密をしゃべっちゃったってことっスね」
「今日が送別会だったって聞いたから、今日が神宮前に会えるの最後かと思って…。会えて良かったよ」
「ん? 鳴海センパイ、という事は、わざわざボクに会いにきてくれたんスか?」
「そりゃ、そうだよ。それに神宮前の病気について教えてくれたのは、桜じゃなくて本星崎の方だよ」
「本星崎サンが? へぇ、そうっスか」
「ともあれ、神宮前が元気そうでよかった」
「センパイ、これはカラ元気っス。病気で命がどうなるかわからない不安を抱えながら、きっと鳴海センパイも桜ちゃんもみんな死んじゃってる未来に向かってコールドスリープするんスよ?」
「そ、そうだよね…。ごめん、あまりにもいつもの神宮前だったからさ」
「センパイ、ボクと会えなくなるの、寂しいっスか?」
「そりゃあ…」
「どうなんスか?」
「寂しいに決まってるさ」
「あはは! そうっスよね。やったぞ! ついに鳴海センパイの恋心を掴んだぞ」
「勘違いするなよ。恋心じゃなくって、親心だよ」
「どっちでもいいんスよ。ボクにとって、それが恋心であれば、その想いを抱いて冷凍睡眠しますから。あ、手紙くらい残しておいてくださいね? 未来の目を覚ましたボクに向けて」
「手紙はいいけど、僕は神宮前が何年眠るのか知らない」
「あれ? 言ってませんでしたっけ。ま~とりあえずは200年ってところですかね~」
「200年か…。何もしなけば、確実に死んでるな、僕は…」
「そうっスね、死んでるでしょうね。でも、鳴海センパイはボクの為に200年くらいはテロメア延長してくれますよね?」
「いや、さすがにそれは約束できないし、そもそも法律で決められた上限は100年までだし…そうか。テロメア延長したところで、どの道、もう神宮前には会えないのか…」
「まあ、そうっスよね~。あ、そうだ、鳴海センパイ」
「ん? どうしたの?」
「本星崎サンに仕返し、ってわけじゃないスけどボクも鳴海センパイに、本星崎さんの秘密を一つ教えてあげますよ」
「本星崎の…秘密? なんだろうか」
「ふっふっふ。知りたいスか?」
「自分から切り出しておいて、もったいぶるなよな…」
「はいはい、話してあげますよ。ノリが悪いなあ、鳴海センパイは」
「最後まで僕は神宮前にふりまわされるんだな…」
「それは、諦めてくださいっス」
「で? 何を教えてくれるって?」
「実はボク、本星崎サンが本当に死んじゃってるってこと、知ってるんです」
「…は?」
「だから、本星崎サンはとっくに死んでいて、生きていないんスよ」
「いや、それはおかしい。現に、僕は本星崎と連絡を取り合っているし…」
「あはは。センパイ、本星崎サンとチャットしかしてないでしょ」
「チャットしか…? まあ、そうだけど」
「やっぱりね。直接本人に聞いてみるといいスよ」
「本人に? 一体、神宮前は何を知っているんだ?」
「じゃあね、鳴海センパイ。バイバイ!」
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