恋とズレの灯る店——恋を知らない彼が出会ったのは、灯りの奥で待つ「帰れる場所」だった。

だって、これも愛なの。

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第九話 「一緒に買い出し」

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その日は偶然、店に行く前に店主とばったり出くわした。
手には買い物メモと空のリュック。
「これから市場行くんだ。一緒に行く?」
誘われるまま、俺はその後ろを歩いた。

市場は活気に溢れていて、あちこちから威勢のいい声が飛び交っている。
店主は慣れた足取りで野菜や魚を見て回り、迷いなく品物を選んでいく。
——だが、俺には気になることがあった。

「値段、交渉しないんですか」
「しないよ」
即答だった。
「コスト意識は……?」
「全部必要なものだから」

必要かどうかの判断基準を、俺はつい細かく詰めたくなる。
しかし店主は、まるで天気の話でもするような顔で値札を受け入れていた。

「こっちの大根、ちょっと高いです」
「でも、今日のは葉っぱが元気でしょ」
確かに、葉の緑は鮮やかだった。
だが、その分を数値化して評価する術は俺の中にない。

会計を済ませ、荷物を半分持たされる。
「はい、ありがとう」
手渡された袋から、野菜の匂いがふわりと漂った。
数字に換算できない何かが、胸の奥で小さく揺れた気がした。
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