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第二十二話 「言えない質問」
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その夜は、閉店間際に滑り込んだ。
客はもういなくて、カウンターの中には店主だけ。
鍋の中でスープが小さく音を立てている。
「今日は遅かったね」
「……少し、仕事が押しました」
席につくと、店主がゆっくりとスープを注いでくれた。
湯気越しに顔を見ていると、ふと聞きたくなった。
——この人は、どうしてこんな店を始めたんだろう。
どういう毎日を過ごしてきたんだろう。
どんな人たちと、どんな時間を生きてきたんだろう。
「……」
口を開きかけて、やめた。
理由は説明できない。ただ、今ここで聞いてしまうと、
この静かな時間が別の色に変わってしまいそうだった。
代わりに、どうでもいいことを言った。
「……今日のスープ、何が入ってますか」
「内緒。食べて当ててみて」
店主は笑いながら、カウンターに肘をつく。
その笑顔を見て、聞かなくてよかったと思った。
答えはまたいつかでいい。
今は、この湯気と香りと声のある空気の中にいたい。
スープをすくう手が、少しだけゆっくりになった。
理由なんてなくても、この時間は俺にとって十分だった。
客はもういなくて、カウンターの中には店主だけ。
鍋の中でスープが小さく音を立てている。
「今日は遅かったね」
「……少し、仕事が押しました」
席につくと、店主がゆっくりとスープを注いでくれた。
湯気越しに顔を見ていると、ふと聞きたくなった。
——この人は、どうしてこんな店を始めたんだろう。
どういう毎日を過ごしてきたんだろう。
どんな人たちと、どんな時間を生きてきたんだろう。
「……」
口を開きかけて、やめた。
理由は説明できない。ただ、今ここで聞いてしまうと、
この静かな時間が別の色に変わってしまいそうだった。
代わりに、どうでもいいことを言った。
「……今日のスープ、何が入ってますか」
「内緒。食べて当ててみて」
店主は笑いながら、カウンターに肘をつく。
その笑顔を見て、聞かなくてよかったと思った。
答えはまたいつかでいい。
今は、この湯気と香りと声のある空気の中にいたい。
スープをすくう手が、少しだけゆっくりになった。
理由なんてなくても、この時間は俺にとって十分だった。
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