恋とズレの灯る店——恋を知らない彼が出会ったのは、灯りの奥で待つ「帰れる場所」だった。

だって、これも愛なの。

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第五十一話 「理由のないざわめき」

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その夜、店のカウンターはほぼ埋まっていた。
いつもの席に座ると、店主が別の客の話に笑いながら相槌を打っているのが見えた。
常連の誰かだろう。
和やかな空気で、まるで長い付き合いの友人同士のようだ。

(……よく笑うな)
不意に胸の奥がざわめく。
笑っているのは自分に向けられたときと同じ、やわらかい笑顔。
なのに、少しだけ落ち着かない。

「お待たせ」
器を置く店主の声に、反射的に礼を言う。
湯気の向こうで花の小瓶が静かに光っているのが見えた。

スープをひと口飲んでも、ざわめきは完全には消えない。
理由を考えてみても、うまく説明できなかった。
ただ、自分がこの席にいるときは、その笑顔をもっと近くで見ていたい——
そんな気持ちだけがはっきりしていた。

閉店間際、他の客が帰って静かになった店内で、
店主が「今日は顔が硬かったね」と笑った。
「……そうでしたか」
「うん。でも最後は、ちゃんと柔らかくなった」

その言葉に、胸のざわめきが少しだけ温度を変えた。
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