『星空の余白で、君と』婚約から始まる、不器用で甘い恋と、やさしい問いの物語。

だって、これも愛なの。

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『星空の余白で、君と』

第二部・第3話 小さなすれ違い

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 王宮の朝は、いつも慌ただしい。
 ジュリアンは執務室へと急ぎ、侍従たちに次々と書状や報告を渡されていた。
 国務に追われる彼の背中を、エリスは廊下の隅から静かに見送る。

「今日も、お忙しいのね……」

 王子妃として振る舞う日々。
 けれど、胸の奥には小さな空洞が広がっていた。

 夜になっても、彼は執務を続けていた。
 ようやく部屋に戻ってきたのは、星が空に昇ってからずいぶん経ってからだった。

「遅くなった」
 ジュリアンは短く告げると、机に書類を置く。
 その姿に、エリスは「おかえりなさい」と言葉をかけながらも、ほんの少し寂しさを滲ませてしまった。

「……無理をしているのでは?」
「大丈夫だ。慣れている」

 即答する声。
 でも、その「慣れている」が、彼の孤独を物語っているように思えた。

 エリスは俯き、心の奥の問いを口にする。
「隣に立つって……ただ、物理的に一緒にいることなのでしょうか」

 ジュリアンは動きを止め、彼女を見た。
 その瞳には、答えを持たない迷いが浮かんでいる。

 ふたりは夫婦になった。
 けれど互いに、まだ「どう寄り添えばいいのか」を模索している途中だった。

 窓の外、星空が静かに瞬いている。
 すれ違う心を照らしながら、なおも「隣に立つこと」の意味を問いかけていた。
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