『まあ!偶然ですわ!』 ―鈍感殿下と恋する令嬢―

だって、これも愛なの。

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最終部

第2章:クラリッサの無邪気

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午後の図書室。
窓から柔らかな光が差し込み、クラリッサは机に広げた書物をめくっていた。

そこへエドガーが現れると、彼女は嬉しそうに立ち上がる。
「まあ! エドガー様、偶然ですわね!」
「……偶然、か」
「ふふ、本当は会いに来てくださったのでしょう?」
「……どうだろうな」

曖昧に返す殿下の横顔は、いつもより少し硬い。
それでもクラリッサは気づかない。



「婚約発表が近いと聞きましたわ。とても楽しみですの!」
「……楽しみ?」
「ええ。殿下と一緒に皆さまの前に立てるなんて、幸せでたまりません」

にっこりと笑みを浮かべ、両手を胸の前で組むクラリッサ。
その無邪気な表情に、エドガーは胸を突かれる思いがした。

(……彼女は、ただ一緒にいることが幸せだと言ってくれる。
 それだけで十分なのだろうか? 本当に……?)



クラリッサは、机の上の本をそっと閉じた。
「殿下、わたくし……たとえ言葉がなくても、そばにいられるだけで十分ですの」
「……」
「だって、一緒に歩いているだけで、奇跡みたいに心が満ちていきますもの」

言葉は真っ直ぐで、疑いの欠片もなかった。

エドガーは視線を伏せ、強く手を握りしめる。
(……俺は、本当にこれでいいのか?)

彼女の笑顔が温かければ温かいほど、心の奥の迷いは深くなるばかりだった。
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