『完全無欠のハッピーエンドを、きみに。』 ─ 理論派男子と巻き込まれ系ヒロインの、恋愛実験ラブコメ!

だって、これも愛なの。

文字の大きさ
1 / 13

第1話『この出会い、運命か否か。』

しおりを挟む
放課後の教室。
机がひとつ、ふたつと片づけられ、光が斜めに差し込む静かな時間。

「よし……完璧だ……!」

黒板の前で、**小比類巻 陸(こひるいまき りく)**は眼鏡を光らせた。
彼の手には、クリアファイルに整理された10枚のスライドがある。タイトルは──

『運命的出会いに関する五つの条件と、完全無欠のハッピーエンド構築仮説(ver.3.7)』

「……あの、これ、何の時間?」

教室の隅、うっかり残っていただけの女子──**望月 紬(もちづき つむぎ)**は、教科書を閉じかけた手を止めて言った。
目の前に立つ彼は、なぜかプレゼンを始めようとしている。

「説明しよう。きみは今、たいへん歴史的な瞬間に立ち会っている。
これは人類恋愛行動史に革命を起こすかもしれない“仮説”の発表だ。」

「ええ……(誰?)」

「俺は小比類巻 陸。恋愛経験ゼロ、でも人生設計には抜かりなし。
この三ヶ月、放課後をすべて使い、“運命の出会い”を科学的に解明しようと研究してきた。」

「……ええと、それを今、私に?」

「そう。きみを見たとき、条件の70%が一致していた。
“接触頻度”以外はすべて満たしていた。
よって俺はここで、この出会いが運命か否かを検証したい!」

「ええと、はい?」

「まず第一に──“偶発性”。
きみがたまたま教室に残っていた、これは偶然だ。偶然は、恋のスタートにおいて極めて重要な要素だ。
第二に──“空間”。放課後の教室、最高の舞台。演出力あり。
第三に──“時間”。17時15分、太陽光が斜めに差し込むロマンティック・タイム。」

「うん、でも……自己紹介は……?」

「自己紹介?ああ、そうか。名前……名前、聞いてなかったな。
でも、これは偶然じゃない。
偶然ってのは、準備ができた人にだけ微笑むって、偉い人も言ってたから!」

「いや、誰も“偶然ください!”ってお願いしてないし……」

「とにかく、これから週に3回、この教室で、“仮想恋愛関係”を検証していこうと思う。
あくまで検証だ。恋愛感情の有無は問わない。だがもし……」

「まって、ちょっと待って、検証?仮想?今から?今ここで?」

「そうだ。これが仮説第一号だ。」

陸は一枚のスライドを掲げた。そこにはこう書いてあった。

【仮説No.001】
ひとは“たまたま”出会った人を、“運命”だと錯覚することで、恋が始まる。

──そして、彼は真剣なまなざしで紬を見つめた。

「俺と、錯覚してくれないか?」

「…………」

沈黙のあと、紬はごく自然に言った。

「それ、むしろ運命の邪魔してない?」



◾️続く…
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。 中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。 しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。 助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。 無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。 だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。 この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。 この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった…… 7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか? NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。 ※この作品だけを読まれても普通に面白いです。 関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】     【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

異世界に勇者として召喚された俺、ラスボスの魔王に敗北したら城に囚われ執着と独占欲まみれの甘い生活が始まりました

水凪しおん
BL
ごく普通の日本人だった俺、ハルキは、事故であっけなく死んだ――と思ったら、剣と魔法の異世界で『勇者』として目覚めた。 世界の命運を背負い、魔王討伐へと向かった俺を待っていたのは、圧倒的な力を持つ美しき魔王ゼノン。 「見つけた、俺の運命」 敗北した俺に彼が告げたのは、死の宣告ではなく、甘い所有宣言だった。 冷徹なはずの魔王は、俺を城に囚え、身も心も蕩けるほどに溺愛し始める。 食事も、着替えも、眠る時でさえ彼の腕の中。 その執着と独占欲に戸惑いながらも、時折見せる彼の孤独な瞳に、俺の心は抗いがたく惹かれていく。 敵同士から始まる、歪で甘い主従関係。 世界を敵に回しても手に入れたい、唯一の愛の物語。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

玄関を開けたら、血まみれの男がいました

無限大
恋愛
ああ、5分でも遅く帰っていたら。 介護施設に勤める浅野神奈。 帰宅したら、誰もいないはずの家の中で誰かと鉢合わせた。 そこにいたのは血まみれのイケメン。 なにごと? どういう状況?? よくわからないまま始まるラブストーリー。 運命を変えた5分。 これが浅野神奈の運命の出会いだ。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

処理中です...