『完全無欠のハッピーエンドを、きみに。』 ─ 理論派男子と巻き込まれ系ヒロインの、恋愛実験ラブコメ!

だって、これも愛なの。

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番外編『エスコートって、数式で解けますか?』

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交際開始から2週間目の金曜日。
放課後、小比類巻 陸は数学のノートを開いていた。

──が、中身は数式ではない。

■「初デート設計草案」
・場所候補:駅前のカフェ(静か/座席の配置◎/光が柔らかい)
・時間帯:14:00が理想(光がきれいな角度)
・支払い方法:スムーズに割り勘→できれば自然に“多めに出す”流れに
・会話テンプレート(天気→最近読んだ本→好きな味噌汁の具)
・緊急時の対応:予備ハンカチ持参/会話に詰まったら“前髪の乱れ”に気づいたふりで話題転換

「……完璧すぎる」

「え、なにそのノート」

ガタン。

後ろの席から、望月 紬が顔を出した。

「うわっ!?ひ、人の計画を覗かないでくれっ」

「“味噌汁の具”って……その話題、出す気満々だったんだね……?」



φ翌日:デート当日

待ち合わせ場所。
陸は、10分前に現地到着していた。

「よし……時間通り……座席の位置も……太陽の角度も……!」

「あ、陸くん」

「うわっ、もう来たの!?いや、違う、来てくれてありがとう……いや、そもそも“来ること”を想定していたのに、嬉しさが予想を超えていて、これはつまり──」

「うん、落ち着いて?とりあえず、深呼吸しよ?」

「……うん」



カフェに入るふたり。
メニューを手に取って──

「えっと、きみは……どれが……」

「あ、これにするよ。チーズケーキと紅茶」

「ち、チーズケーキ……了解。きみがそれを選ぶと予想してなかったため、今、会話ルートが外れた。だが問題ない。これはイレギュラー対応力の試される場面……!」

「なんかバトル系のゲームやってるみたいな口調になってるよ」



そして、注文後。

ふたりの前に運ばれてきたのは──

「す、すみません。アイスティー、ふたつで……」

「あれ?あれっ? 俺、ホット頼んだはずが……!?な、なんでっ!?」

「大丈夫。私、こっちも好きだよ。
陸くんがびっくりしてる顔も、けっこう好き」

「す、好き!?それってその、デート中の言葉でいうと、どの……何段階目の“好感度”なのか……!?」

「ええと……“気づいたらちょっと手、繋ぎたくなってる”くらい?」

「…………し、心拍数が……」



その後、カフェを出ると、
空が少し曇りかけていた。

「……ねぇ、傘は?」

「ある!ある!今日はちゃんと!
……折りたたみサイズだけど、いっしょに入る想定で準備済だ!!」

「ふふ。じゃあ、予定どおりだね」



ふたりは、傘の下に並んだ。

少し前なら「これは仮説通りのロマンス演出だ!」と騒いでいたはずの陸。
でも今は、ただ、静かにとなりを歩く。

「ねぇ陸くん」

「ん?」

「今日のデート、何点だったと思う?」

「んんんんっ!?採点制度!?いやいや、きみが楽しめたならそれが正解で……!」

「私的には──仮説関係なく、“愛しい”の100点だったけどね」

「……え…………っ…………」

「ほら、前にも言ったでしょ?
“うまくいかないところも含めて、あなたが愛しい”って」



※備考:「うまくいかない」=愛しさの係数になる
※小比類巻 陸のノート・追記済み



◾️続く
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