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番外編 舞踏会の翌朝
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「……ああ、頭が痛い」
ラウレンスは机に額を押しつけ、深くため息をついた。
政務の疲労ではない。昨夜の出来事──イザベラの涙と告白が、脳裏で何度も繰り返されて眠れなかったのだ。
「参謀殿」
突然、扉がノックもなく開く。
深紅のドレスではなく、普段の可憐なドレスに身を包んだイザベラが立っていた。
「お、おい。なぜここに……」
「わたくし、参謀殿に確認しなくてはならないことがあるのです」
扇子を構え、彼女は真剣な顔で言う。
「昨日のこと……“一番だ”とおっしゃったのは、舞踏会の勢いで仰ったのではなくて?」
「……っ!」
ラウレンスの耳が真っ赤になる。
「そ、そんな軽口を言える性分に見えるか」
「では本気だったのですね」
「当たり前だ」
イザベラの頬に、ぱっと薔薇色が咲いた。
「……それなら、わたくし、これからも“あなたの一番”でいられるように努力いたしますわ」
「努力……?」
「そうです。もっと美しく、もっと堂々と……!」
「……頼むから、無茶はするな」
思わずラウレンスが額に手を当てると、イザベラはふっと微笑んだ。
「……やはり、参謀殿に振り回されるのは楽しいですわね」
「振り回されているのは、私の方だ」
呟いた言葉は、彼女には届かなかったらしい。
イザベラはすでに、次の舞踏会で着るドレスの構想を語り始めていた。
ラウレンスは小さく笑い、机に肘をついた。
(……これからも賑やかになりそうだ)
ラウレンスは机に額を押しつけ、深くため息をついた。
政務の疲労ではない。昨夜の出来事──イザベラの涙と告白が、脳裏で何度も繰り返されて眠れなかったのだ。
「参謀殿」
突然、扉がノックもなく開く。
深紅のドレスではなく、普段の可憐なドレスに身を包んだイザベラが立っていた。
「お、おい。なぜここに……」
「わたくし、参謀殿に確認しなくてはならないことがあるのです」
扇子を構え、彼女は真剣な顔で言う。
「昨日のこと……“一番だ”とおっしゃったのは、舞踏会の勢いで仰ったのではなくて?」
「……っ!」
ラウレンスの耳が真っ赤になる。
「そ、そんな軽口を言える性分に見えるか」
「では本気だったのですね」
「当たり前だ」
イザベラの頬に、ぱっと薔薇色が咲いた。
「……それなら、わたくし、これからも“あなたの一番”でいられるように努力いたしますわ」
「努力……?」
「そうです。もっと美しく、もっと堂々と……!」
「……頼むから、無茶はするな」
思わずラウレンスが額に手を当てると、イザベラはふっと微笑んだ。
「……やはり、参謀殿に振り回されるのは楽しいですわね」
「振り回されているのは、私の方だ」
呟いた言葉は、彼女には届かなかったらしい。
イザベラはすでに、次の舞踏会で着るドレスの構想を語り始めていた。
ラウレンスは小さく笑い、机に肘をついた。
(……これからも賑やかになりそうだ)
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