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番外編:ほどほどの幸福(クラリッサ視点)
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床一面に紙。
『右足前』『左足横』『回転30度』──。
信じられないけれど、殿下は本気でこれを「舞踏練習」と呼んでいた。
「さあ、僕のリードに従って」
誇らしげに手を差し伸べられ、私は渋々その手を取った。
最初の数歩はまあ、理屈どおりに進んだ。
けれど、紙はするりと滑り、私の足はもつれて──。
「わっ……!」
「大丈夫だ、僕が支える!」
抱きとめられた瞬間、胸の奥が大きく跳ねた。
……違いますわ!これは練習であって、わざわざ抱きしめていただく場面ではありません!
「殿下。これは支えたいが目的なのでは?」
「な……そ、そんなことは……多少は」
耳まで真っ赤にして逸らされる視線。
合理性の仮面は、あっけなく剥がれ落ちる。
(……本当に、可愛い方ですわ)
次の瞬間、靴裏にぺたりと張りついた紙。
『熱烈に抱きしめる』。
「っ、殿下っ!」
「余白ができたから、つい……」
私は顔を覆った。
もう、理屈でも合理性でもない。これはただの溺愛です。
それでも。
頬が熱くなるのを止められない。
心の奥で、笑いがこぼれてしまう。
──“ほどほどに”と口で制しながら、
私は本当は、もっとを望んでいる。
合理的すぎる求愛の中に、ほんのり混じる“甘さ”。
それが、今の私にとっての幸福だった。
『右足前』『左足横』『回転30度』──。
信じられないけれど、殿下は本気でこれを「舞踏練習」と呼んでいた。
「さあ、僕のリードに従って」
誇らしげに手を差し伸べられ、私は渋々その手を取った。
最初の数歩はまあ、理屈どおりに進んだ。
けれど、紙はするりと滑り、私の足はもつれて──。
「わっ……!」
「大丈夫だ、僕が支える!」
抱きとめられた瞬間、胸の奥が大きく跳ねた。
……違いますわ!これは練習であって、わざわざ抱きしめていただく場面ではありません!
「殿下。これは支えたいが目的なのでは?」
「な……そ、そんなことは……多少は」
耳まで真っ赤にして逸らされる視線。
合理性の仮面は、あっけなく剥がれ落ちる。
(……本当に、可愛い方ですわ)
次の瞬間、靴裏にぺたりと張りついた紙。
『熱烈に抱きしめる』。
「っ、殿下っ!」
「余白ができたから、つい……」
私は顔を覆った。
もう、理屈でも合理性でもない。これはただの溺愛です。
それでも。
頬が熱くなるのを止められない。
心の奥で、笑いがこぼれてしまう。
──“ほどほどに”と口で制しながら、
私は本当は、もっとを望んでいる。
合理的すぎる求愛の中に、ほんのり混じる“甘さ”。
それが、今の私にとっての幸福だった。
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