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特別編:ほどほどを越えて(クラリッサ視点)
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午後のサロン。
窓からの陽射しがカーテン越しに柔らかく差し込む中、クラリッサは紅茶を口にしていた。
「クラリッサ」
名前を呼ぶ声がやけに優しい。振り向くと、レオナルド殿下が真剣な顔でこちらを見つめている。
「……どうなさったのです?」
「ただ、言いたくなっただけだ。君が好きだ」
「~~っ! 殿下、急にそういうことを……!」
クラリッサは思わず顔を覆った。
心臓は跳ね、頬は熱い。
「……言われると困るのか?」
「いえ……困るというか……」
「……嫌ではない?」
「っ……」
クラリッサは一瞬黙り込んだ。けれど視線を逸らしながら、小さく呟いた。
「……嫌どころか……嬉しゅうございますわ」
その声はかすかで、本人も聞かれたくなかったのかもしれない。
けれど殿下の耳には、しっかり届いていた。
彼は目を細め、ゆっくりと笑った。
「……なるほど。照れているけれど、本当は喜んでいるのだな」
「っ、そ、そんなこと……!」
クラリッサが慌てて否定しようとすると、殿下はすかさず言葉を重ねた。
「合理的に考えれば、今の反応が何よりの証拠だ」
「もう……合理性など持ち出さなくてもよろしいですわ!」
「では素直に言おう。君が僕の言葉を喜んでくれるとわかった。だからこれからは、もっと言う」
「~~~っ!」
クラリッサは真っ赤になって立ち上がりかけたが、殿下に手を取られて座らされる。
「……ほどほどに、と言うのだろう?」
「も、もちろんです!」
「承知した。ほどほどに、毎日欠かさず」
「それは全然ほどほどではありませんわ!!」
けれど、胸の奥は確かにときめいている。
──殿下に愛されていると気づくたび、どうしようもなく幸せになるのだから。
窓からの陽射しがカーテン越しに柔らかく差し込む中、クラリッサは紅茶を口にしていた。
「クラリッサ」
名前を呼ぶ声がやけに優しい。振り向くと、レオナルド殿下が真剣な顔でこちらを見つめている。
「……どうなさったのです?」
「ただ、言いたくなっただけだ。君が好きだ」
「~~っ! 殿下、急にそういうことを……!」
クラリッサは思わず顔を覆った。
心臓は跳ね、頬は熱い。
「……言われると困るのか?」
「いえ……困るというか……」
「……嫌ではない?」
「っ……」
クラリッサは一瞬黙り込んだ。けれど視線を逸らしながら、小さく呟いた。
「……嫌どころか……嬉しゅうございますわ」
その声はかすかで、本人も聞かれたくなかったのかもしれない。
けれど殿下の耳には、しっかり届いていた。
彼は目を細め、ゆっくりと笑った。
「……なるほど。照れているけれど、本当は喜んでいるのだな」
「っ、そ、そんなこと……!」
クラリッサが慌てて否定しようとすると、殿下はすかさず言葉を重ねた。
「合理的に考えれば、今の反応が何よりの証拠だ」
「もう……合理性など持ち出さなくてもよろしいですわ!」
「では素直に言おう。君が僕の言葉を喜んでくれるとわかった。だからこれからは、もっと言う」
「~~~っ!」
クラリッサは真っ赤になって立ち上がりかけたが、殿下に手を取られて座らされる。
「……ほどほどに、と言うのだろう?」
「も、もちろんです!」
「承知した。ほどほどに、毎日欠かさず」
「それは全然ほどほどではありませんわ!!」
けれど、胸の奥は確かにときめいている。
──殿下に愛されていると気づくたび、どうしようもなく幸せになるのだから。
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