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秘密編 ― 秘密の書庫で
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ある雨の日の午後。
外の景色は灰色に沈み、屋敷の中はしんと静まり返っていた。
廊下を歩いていたエリスは、ふと一枚の扉を見つける。
少し開いた隙間の奥には、古びた書棚が並んでいた。
「こんな場所があったなんて……」
足を踏み入れたとき、背後から声がした。
「見つけてしまったな」
振り返ると、そこにはレオンが立っていた。
驚くエリスに、彼は少し照れたように微笑む。
「ここは僕が子どもの頃から使っている書庫だ。
誰にも教えていなかった。……でも、君には見せたいと思っていた」
その言葉に、胸がじんわりと温かくなる。
レオンは棚から一冊の本を取り出し、埃を払いながら差し出した。
「これは、僕が最初に読んだ詩集だ。
不安な夜に、何度も救われた」
エリスは本を大切そうに受け取り、ページを開いた。
そこには淡いインクで綴られた静かな詩の数々。
「……とてもやさしい詩ですね」
自然と声が柔らかくなる。
レオンは頷き、彼女の横顔を見つめる。
「君にも、心の支えになるものを見つけてほしい。
そしてできれば……僕もそのひとつでありたい」
エリスは頬を赤らめ、けれど小さく笑った。
「もう、十分すぎるほど支えられています」
雨音が窓を叩く中、ふたりは静かに視線を交わした。
秘密を共有するように、屋敷の片隅で心が寄り添っていた。
外の景色は灰色に沈み、屋敷の中はしんと静まり返っていた。
廊下を歩いていたエリスは、ふと一枚の扉を見つける。
少し開いた隙間の奥には、古びた書棚が並んでいた。
「こんな場所があったなんて……」
足を踏み入れたとき、背後から声がした。
「見つけてしまったな」
振り返ると、そこにはレオンが立っていた。
驚くエリスに、彼は少し照れたように微笑む。
「ここは僕が子どもの頃から使っている書庫だ。
誰にも教えていなかった。……でも、君には見せたいと思っていた」
その言葉に、胸がじんわりと温かくなる。
レオンは棚から一冊の本を取り出し、埃を払いながら差し出した。
「これは、僕が最初に読んだ詩集だ。
不安な夜に、何度も救われた」
エリスは本を大切そうに受け取り、ページを開いた。
そこには淡いインクで綴られた静かな詩の数々。
「……とてもやさしい詩ですね」
自然と声が柔らかくなる。
レオンは頷き、彼女の横顔を見つめる。
「君にも、心の支えになるものを見つけてほしい。
そしてできれば……僕もそのひとつでありたい」
エリスは頬を赤らめ、けれど小さく笑った。
「もう、十分すぎるほど支えられています」
雨音が窓を叩く中、ふたりは静かに視線を交わした。
秘密を共有するように、屋敷の片隅で心が寄り添っていた。
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