「友だち婚約者は可愛くて大忙し！」― お転婆令嬢と振り回されるのが楽しい彼の、ときめきラブコメ ―

結婚後の番外編「夜の書斎にて」

夜。
屋敷の書斎に、カサカサと紙をめくる音が響いていた。

レオンハルトは机に広げた報告書に目を通していたが、ふと扉が開く。
「まだ起きてたの？」
クラリッサが入ってきて、ランプの明かりに照らされる。

「もう遅いわよ。体を壊しちゃう」
「あと少しで終わる」
そう答えながらも、彼の声は少し疲れていた。

クラリッサはため息をつき、彼の後ろに回って肩にそっと手を置いた。
「……ねえ、わたし、婚約者だった頃はただ楽しくて、あなたを振り回してたけど」
「……」
「今はね、夫婦だから、あなたを支えたいの。疲れてるときは頼ってほしい」

言葉に、レオンハルトの手が止まった。
振り返ると、クラリッサの瞳が真剣に自分を見つめている。

「……君にそう言われると、心が軽くなる」
彼はゆっくりと立ち上がり、クラリッサを抱き寄せた。

「ありがとう。僕はまだ不器用で、全部自分で抱え込もうとしてしまう」
「いいの。わたしも不器用だから、一緒にちょっとずつね」

クラリッサは微笑み、彼の背に腕を回す。
その温もりに包まれて、レオンハルトは小さく息をついた。

「……君が隣にいるなら、大丈夫だ」

書斎のランプの灯りが揺れ、二人の影をひとつに重ねていた。