月の庭で抱きしめて ―― 甘えん坊な幼馴染と、月明かりの恋

だって、これも愛なの。

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番外編⑦ 転んだ夜の記憶

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 それは、まだふたりが幼かった頃のこと。
 月明かりの庭で走り回っていたルカは、石につまずいて転んでしまった。
 膝をすりむき、痛みに大粒の涙をこぼしながら、真っ先にセレナのもとへ駆けていった。

「セレナぁ……いたいよ……」
「もう、走るからよ。……ほら、膝を見せて」

 泣きじゃくる小さな手を取り、セレナはそっと傷口を拭った。
 冷たい布が触れるたび、ルカは「ひっ」と声を上げる。
 けれどそのたびに、セレナはやさしい声で囁いた。

「大丈夫。痛いのはすぐに消えるわ。……泣かなくてもいいの」

 そして最後に、彼をぎゅっと抱きしめた。
「セレナ……」
「ええ、ここにいるから。安心して」

 その言葉に、涙で濡れた顔が少しずつ和らぎ、幼い笑顔が戻っていった。
 ――その夜の抱擁は、ルカの心に深く刻まれた。
 “この腕の中なら、どんな痛みも消えていく”。

 時は流れ、同じ月の庭。
 今度はルカがセレナを抱きしめていた。
 腕の力強さはもう幼子のものではなく、未来を支えると誓う青年のもの。

「セレナ。僕は、あのときからずっと君に守られてきた。
 だから今度は、僕が守る番だ」

 低く響く声に、胸が熱くなる。
 セレナはそっと目を閉じ、あの夜の小さな少年と、今の彼を重ねた。

「……本当に、大きくなったのね」
「セレナがいてくれたからだよ」

 夜風に白い花びらが舞い、月の光がふたりを包み込む。
 幼い日の抱擁と今の誓いが重なり合い、過去と未来をやさしく繋いでいた。

 ――転んだ夜の記憶は、ふたりの始まりであり、これからを照らす灯でもあった。
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