'寄宿学校シリーズ──5つの恋短編集

だって、これも愛なの。

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星の涙に願う夜

第一章 「輪の中へ」

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 寄宿学校の朝は、鐘の音で始まる。
 石造りの窓から差し込む光が教室を満たし、生徒たちが談笑しながら席に着いていく。
 貴族の子弟らしい華やかな会話と笑い声。
 その中で、カイルは一番後ろの席に静かに腰を下ろしていた。

 「おはよう、カイル!」

 快活な声が響く。
 振り向くまでもなく分かる──リリアだ。
 彼女は誰に対しても同じ声量、同じ明るさで挨拶をする。
 けれど、なぜかその笑顔はカイルの方へ強く差し向けられている気がした。

 「……ああ」
 短く返す。それだけで、彼の言葉は終わる。
 だがリリアは気にした様子もなく、隣の席に腰を下ろした。

 「昨日の星、すごく綺麗だったよ。湖に映って、まるで宝石みたいで」
 「……そうか」
 「ほんとに見てないの?」
 「……見てない」
 「そっか。じゃあ今夜、一緒に見よう」

 カイルは思わず息を呑んだ。
 人と距離を置くのが当たり前だった彼に、ここまで自然に近づいてくる人間はいなかった。

 「リリア、こっちで話そう!」
 前の方から友人らが呼ぶ声がかかる。
 リリアは振り返り、にこりと笑った。
 「ごめんね、カイル。またあとで」

 そう言って駆けていく。
 彼女がいなくなっただけで、教室が少し静まり返ったように感じた。

 周囲の生徒たちは彼を恐れて近づかない。
 けれどリリアは平然と笑い、自然に隣に座る。
 その差が、胸の奥をざわつかせた。

 ──どうして、あんなに気安く笑えるんだ。
 分からない。
 けれど、また声をかけてほしいと願っている自分に気づき、カイルは窓の外へ視線を逸らした。
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